壊れたオルゴール人形と舌のない風鈴は舞踏会で踊らない
はじめまして。よろしくお願いします。
『いつも口を開けば“勉学を怠るな”か、“婚約した身で他の女性達と交際するな”しか言わない、壊れたオルゴール人形みたいなお前は公爵子息の僕に相応しくない!よって婚約は破棄する!』
『私が壊れたオルゴール人形なら、あなたは舌のない風鈴ですから婚約破棄は当然ですね』
フィランダラーはディミュア伯爵令嬢と婚約破棄した。それが破滅に繋がると思わずに……。
「ディミュア、僕が悪かった! 」
フィランダラーは城門前で待ち伏せし、城の舞踏会に招待されていたディミュアの乗った馬車に駆け寄って土下座した。
「父上に出来損ないの三男であるお前の婿入り先を探すのに苦労したのに勝手に破棄するなんてと叱られ勘当されてしまったんだ!家を追い出されたら女達もいなくなっちゃって散々だよ!もう僕には君しかいない!もう一度婚約してくれ!」
他の招待客達が汚物を見るような目つきで見つめる中、元婚約者に最低な求婚をしたフィランダラーはディミュアが第三王子にエスコートされて馬車から降りるのを見て顔をしかめた。
「跡取り娘を持つ貴族達から是非婿に来て欲しいと絶大な人気を誇る第三王子が何故ディミュアと!?僕というものがありながら浮気だなんて、とんだ壊れたオルゴール人形だな」
「何だと⁉私の大切なディミュアを愚弄するとは許し難い!」
「殿下、落ち着いて下さい。彼が婚約破棄を告げる際、そう私を評したので私は……」
ディミュアが婚約破棄時のやり取りを説明すると第三王子は笑い出した。
「ハハハ。彼は君が謎掛けでやり返したことに気付いていないんだね」
「どういう意味だ?」
「学のない男には簡単な謎掛けだろうと荷が重いだろうね。壊れたオルゴール人形と舌のない風鈴、その心は"両方とも鳴らない”だというのに」
「え?」
「彼女は君を舌のない風鈴……つまり音を鳴らせる中身がない風鈴と例えたのさ。誠実さという中身がない君がいくら舌を尽くそうが、舌のない風鈴は鳴らないのだから婚約も成らないのさ」
「そんな……」
「あなたの言葉に傷ついた私は殿下と愛し愛されることで壊れたオルゴール人形から人間に戻れたの。さようなら。もう二度と会いに来ないで」
そう言ってディミュアは愛する第三王子にエスコートされ、舞踏会へと向かっていった。
鳴らない風鈴はガラクタでしかなく、その後もフィランダラーは舌を得る為の努力をしなかったので、やがて鳴らない風鈴はゴミとして皆に捨てられてしまったという。
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