世界一の金持ち男の暇潰し2
羽山一臣 33歳。
石山ゆか 31歳。
その間に生まれた男子。
羽山拓人 はやまたくと。
現在1歳。
拓人は投資家として育て、就職はさせないという夫婦の取り決めにより、芸は身を助けるという信念の元、料理を筆頭に、建築技術、プログラム、ピアノ、バイオリン、宝石鑑定士を幼少期に叩き込んだ。
拓人はそれらを乾いた砂が水を吸収するが如く。
一度教えた事は、レコーダーのように、完璧に覚えていた。
15年後。
2035年。
拓人は16歳。
そうして、タクトは、立派に。
農業銀行を立ち上げたのだった。
拓人は投資家達が投資をしにくい農業という分野に、風穴を開けた。
表だって活動はせず、仲良くなったカフェのマスター65才の引退と同時に話を持ち込み、即ok。
代表者はカフェマスター、千石大輔65才に決まった。
そうして、幼い頃から投資で増やした資金を元手に、大規模な農場を兵庫県、岡山県で購入。
山を手入れをし、猟友会にも高い給付金を出し、山を整備し、調律した。
同時に雪を集められる場所を作り、積雪に備えた。
これらは拓人と一臣が一緒に考えていた計画だった。
しかし、資金に関しては、一臣は最初の一千万円しか貸していない。
後の資金面は全て拓人の資金を使用した。
およそ300億円の計画であった。
拓人はまず、農業専門投資銀行を作り、農場地主を説得して回った。
必ず、雇う。
老後も守る。
お墓も守ると。
これらは正式に契約書が交わされ、莫大な違約金を約束した。
つまり、拓人は農業=国家公務員の地位にしたかったのだ。
無論、本当に公務員になる訳ではない。
だが、一つの大企業があり、その企業で終身雇用として働ける環境。
そうしてこそ、報われる農業界。
開拓する人。
拓人。
一番最初に、枝を刈り、木を倒し、土を起こし、道を作る人。
それが軌道に乗り出した次の瞬間には、既に次の計画が進んでいた。
漁業である。
まだまだITが進んでいない分野。
中古車販売オークション会場の技術を採用。
発泡スチロール箱に入っている魚の写真を次々と撮影し、後で見られるようにビニールOFDバーコードを乗せていく。
次は全てデータ化、魚種類別、大きさ、日付け管理。
寄生虫電気ショック駆除は済ませてある。
それらは一つのスマホアプリで管理される。
小魚はリリースされるか、魚の餌として処分される。
OFDとはなんだろうか?
画期的な発明がアイセレクトコンプションから出た。
生態力場と呼ばれる磁場が生き物にはある。
それは万物異なり、例えクローンですらも異なる。
それは魚でも勿論同様に異なる。
漁師は、魚を網で大量に掬う。
そしてとりあえずは大きさ別に水槽に入れて行く。
捕食し合わない為だ。
種類別にはしない。
そして、もし、その水槽の中に生体力場を観測出来る装置があるなら?
生態力場観測装置 organism force field observation Device
「OFD」
AIとOFDが融合。
水槽の中にどんな魚が居るのかが、一発で解る仕組み。
漁師が魚を持ち帰る前に、既にオークションは始まっている。
このOFD技術は、主に軍事や政治に使われるが、…いや、その話は辞めよう。
とにかくその技術で、流通、朝市場も格段にやりやすくなった。
この技術は産地偽造問題も解決した。
アイセレクトコンプションの株価は既に、一般人には手が届かない高値になっている。
現在、一株3000万円。
日本の代表会社の一つであるが、それにも負けず、追随する拓人の会社達。
拓人は道を切り開いた。
後は、後続者らが、道を整備し、駅を作り、大規模な街へと変貌していくのだ。
拓人は役目をやり遂げた。
2038年、拓人が大学に入学した年であった。
拓人18歳。
幼馴染である女性、無し。
仲良しな女性、無し。
仲良しな男子、無し。
友達、、、、、無し。
ビジネスパートナー、膨大。
拓人は焦っていた。
拓人「、、、、あれ?俺、同年代の知り合い、友達、居なくね?」
一臣「バイトでもすれば?」
拓人「うーん、仕事から離れたいんだけど」
一臣「仕事からねえ、、なら、部活的なやつは?」
拓人「例えば?」
一臣「弓道、とか?女性も多いよ」
拓人「おー?弓道かあ、うん、調べてみるね!」
兵庫県、六甲山、巨大な日本古民家風屋敷。
だが、10mコンクリートで囲まれた土地であり、警備ロボットがウロウロしており、訓練された犬達がウロウロしている。
ゆか「たくちゃん、たまにはゆっくりしなよー」
ゆかは顔パック、マッサージチェア、メイドからお茶を飲ませて貰っている。
拓人「母さんはゆっくりしすぎ、行ってきます」
ゆか、一臣『はーい』
女性メイド「拓人様、お気をつけて」
拓人「カタリナも、あんまり、母さんを甘やかすのは駄目だよ?」
カタリナ「あ、はい、すいません」
拓人「行ってきます」
カタリナ「はい」
拓人には最高のボディガードが付いている。
小さな小さなトカゲ型ドローン。
拓人のペット的な存在だ。
加えて、空にはUAVドローンが常に監視、追跡している。
別室では、拓人監視部隊がある。
当然である。
実質、日本の皇室よりも王子様なのだ。
それに、血だけではなく、実際に優秀な会社の経営者なのだから。
拓人は天神流という弓道場に足を運んだ。
拓人は目立つ顔ではないが、よく見ればイケメンである。
弓道は若い女性が多く、男性は年配の方が多いようだ。
拓人は正座には慣れている。
裏合気と武器術の訓練を受けて来たからである。
道場での作法はお手の物。
拓人の背筋を伸ばし、正座する姿は女性達の視線を独占するのに、時間は掛からない。
見学している拓人の視線に女性らは落ち着かず、的に当たらない。
年配の男性が拓人に話しかけて来た。
爺「やあやあ、羽山、拓人、さん、ね、何歳?」
拓人「18歳です」
爺「若い!いいなあ、モテるでしょ?なんでうちに?」
拓人「いや、全然モテません、私は友達を作りに来ました、それに、弓道は自分と向き合うスポーツだと聞きました」
爺「目的は彼女作りかな?」
拓人「それもあります!、しかし、それが叶わずとも、やりたいんです」
爺「女を取っ替え引っ替えして、道場の治安を悪化させるようなら、即退場願うよ?構わんね?」
拓人「驚きました、禁止とは言わないんですか?」
爺「そんなのいちいち禁止にしてたら、日本の弓道界は廃れてしまう、何でも、ほどほどが良いのよ、ほどほどがね」
拓人「なるほど、分かりました、私は軽い男性ではありません」
爺「そう願うよ、触るかね?」
手に持つ弓を見せる。
拓人「え?あ、はい!でも、良いんですか?」
爺「触るくらい構わんよ、射るのはアカンがね」
弓矢、弓を触る。
拓人「思ったより、軽い」
爺「ふははは、軽いと来たかよ、うっしゃ、貸してみー、こーや、こー、こー、して、こーや、ほ!」
〈パシ!〉 ど真ん中。
拓人「うお!すご!」
爺「やってみー」
拓人「え?撃って良いんですか?」
爺「あー良いよ」
拓人「じゃあ、遠慮なく」
見よう見真似で動作をする。
得意の観察眼。
爺「ほー」
〈シーン〉 誰しもが、拓人の姿勢の良さに驚き、動きを止めた。
拓人「すー、はーー〈パシ!〉」
放たれた矢は、的板の下のマット部分に当たった。
拓人「あれ?」
爺「ほー!ほっほ!驚いた!本当に初めてか?」
拓人「え?あ、はい、初めてです」
爺「ふーむ、次は当たるぞ、次は少し上を狙ってみー」
拓人「はい!やってみます」
再び矢を引く。
放つ。
〈トン〉 ど真ん中。
拓人「やった!当たりました!しかも真ん中!」
爺も、周りも驚愕。
爺「ほっほ、次は初心者コースではなく、あちらの、中級コースに移動してみよーか」
拓人「へ?しょ、初心者コース?」
爺「そうじゃ、ほれ、移動せー」
拓人「あ、はい」
拓人は中級コースに移動し、矢を放つが、今度は全く届かなくなってしまった。
拓人「あれえ?うーん」
放つ、が、やはり、届かない。
爺「甘くなかろう?ほっほ」
拓人「はい!奥が深いですね!」
爺「はははは、そうかそうか!気に入ったなら、入会費12万円じゃ、月額4万円と合わせ、16万円じゃ」
拓人「カード払いですか?」
爺「今は現金の方が珍しかろー、支払うのかな?」
拓人「はい!お願いします!」
爺「ではこちらへ」
拓人「はい!」
カードは、学生、一般人がよく使うグリーンカードである。
カードの色で資産ランクが判明しては元も子もない。
因みに。
資産ランク別カード色は次の通り。
低い順から。
緑。
青。
赤。
黄色。
銀色。
金色。
プラチナ色。
黒色。
透明。
透明なカードは、素材はダイヤモンドである。
キラキラ光るカードであり、何も印字が入っていない。
チップも見えない。
ダイヤモンドカード自体に、記録させてある為だ。
スマホのカメラを通して見る事で、誰のカードかだけ分かるようになっている。
QRコードをダイヤモンドのキラキラで再現しているのだ。
しかし、人間の視覚では、認知出来ない。
拓人も透明カードは持っているが、殆ど使わずに、緑カードだけを頻繁に使っている。
ただ、一年間に一億円は必ず使う必要がある為、投資活動資金として使っているのが現状である。
拓人は道着のサイズを採寸し、腕の長さ、足の長さを採寸して、道場を後にした。
爺の孫が車の後部座席から景色を観る。
駐車場に入場して来た。
歩きの拓人を見る。
すれ違う、二人。
車内は、黒シートを貼ってある為、車外からは見えない。
拓人は何気なく車自体を見ていただけだ。
しかし、車内からは、拓人をまじまじと、高校一年の女子が見ていた。
爺「おー!九十九!(つくも) 今日も来たか!」
九十九「うん、さっきの人は、誰?」
爺「お?あー、あー、早速見たか?浮き世離れした御仁じゃろ?ほっほ」
九十九「あんなに静と動の空気が混ざった人は初めて見た」
爺「ほっほ、羽山拓人さんじゃ、毎週二度通うそうじゃよ」
九十九「何曜日?」
爺「あー?なんじゃ?もうあの御仁が気に入ったのか?ちと早くないか?」
九十九「うーん、違う、なんていうか、好奇心」
爺「火曜日と金曜日じゃと」
九十九「おー!はい」
爺「さ、大会も近い、早速やるか?」
九十九「はい!」
御影九十九。
御影家の一人娘。
火曜日。
九十九「いざ!尋常に勝負よ!私が勝ったら私とデデデデートしなさい!」
拓人「どうしてこうなった?」
そして、九十九の勝利。
土曜日、デートの日。
二人は何だかんだ楽しんだ。
九十九の実家前。
九十九は勇気を出して、頬にキスをした。
拓人は帰り道、ニヤニヤが止まらない。
そして、拓人は急にモテ始めた。
大学で逆ナンは当たり前。
女は、女のフェロモンを嫌うのではない。
女は、女のフェロモンに嫉妬するのだ。
女の匂いがする男性を無意識に嗅ぎ分ける鼻細胞。
女の匂いがする拓人。
今まで眼中になかった筈の拓人という男子に、惹かれる女子達。
だが、拓人は九十九一筋だった。
両親から女性で遊ぶなと厳しく育てられ、弓道師範からは、九十九を泣かせたら殺すと言われている。
九十九は拓人をモテ始めてから、好きになってない。
その確信が、より拓人の気持ちを強固にしていた。
イスラム教、モスクが、兵庫県北東に建設される予定だと情報が一臣へ舞い込んだ。
寄せ集めの元ホームレスらの部下達を、まずは使いに走らせ、調べさせていた。
このホームレス達を拷問しても一臣の真の部下までは絶対に辿り着かない。
そして、翌日、顔を潰された死体が、川から上がった。
そのニュースを知った一臣。
一臣の裏の顔、発動。
イスラエル軍、米軍との蜜月の関係にある一臣、拓人の会社。
プロダクトコード、RED SAMURAI
翌日。
イスラム教徒の兵庫県支部、岡山県支部が、一斉に死体の山と化した。
現場には豚の肉、血液が大量に散乱していた。
これは政府は隠した。
が。
イスラム教徒が堪えきれずに、暴徒化。
自爆テロを市役所で起こした。
これにより、大義名分を得た日本政府は、正式に米軍に駆除要請。
即刻国外退去命令が下され、従わない場合、即射殺許可が降りた。
これにより、内戦状態に一時期なり、日本は大混乱と化した。
ヤクザ、暴走族を筆頭に、イスラム教徒をリンチ。
最早、イスラム教徒を見かけたら即死ぬまで殴るのが当たり前と化した。
これにより、イスラム教徒は逃げなかった。
船、密入国。
飛行機、ハイジャック、東京都心に飛行機墜落させようとー。
するが、米軍により、乗客諸共に撃墜された。
逆に国外からわざわざ日本国内にイスラム教徒を助けに来たと堂々と宣言。
これにより、日本、アメリカ、イスラエルはイスラム教徒全面拒絶。
この波に乗ったのが、欧州全て。
イスラム教徒は徹底抗戦した為に、逆効果を生み、死体の山が築かれて行く。
死体は大量に公園で巨大な穴を掘り、放り込まれ、燃やされた。
イスラム教徒は大量虐殺された。
イスラムジェノサイドである。
世界は、イスラム教=テロ宗教だと認定。
徹底的に迫害された。
結果。
世界は一気に平和の色が濃くなった。
パキスタンが、イスラエルに向けて核ミサイルを発射準備。
日本の電磁マイクロ波、照射。
大気圏に反射させ、現地に到達。
核ミサイル発射基地を無力化。
パキスタンにイスラエル、米軍空爆開始。
イラン、サウジアラビア、怒りを発表するだけで、実質何も出来ず。
パキスタンは事実上降伏。
イスラム教はパキスタンでは禁止になった。
イスラム教はイラン、サウジアラビアだけが主に司る事になった。
日本も爆弾や、ガソリン、毒ガス散布を含めると自爆テロが数千件起きた結果、多大な日本人の犠牲の元、新たな憲法改正へと踏み切った。
宗教法人、撃滅。
神道、仏教のみ許される形となり、それらは国の管理下に置かれる事になった。
神道、仏教以外の様々な宗教を日本国内で掲げた場合、国家転覆罪が即適用される。
無期懲役か、死刑である。
税金未納をした場合、強制徴収、国が新たな神主を選別する。
日本国内では、AIロボットにより、警備されている。
虫型ドローンを含めると、ドローン数は観測不可能。
また日本人にはナノマイクロドローンが血液中に散布されており、これは義務化されている。
これは、日本人の安全を考慮した結果である。
このナノマイクロドローンは、健康を維持し、素早く癌細胞を除去をし、体調、居場所、を常に政府がモニターする事が出来る。
これにより、外国人による日本人への危害犯罪を取り締まる効率が圧倒的に伸びた。
問題は。
日本人が日本人を獲物にする場合である。
これには普通の犯罪基準となる為に、まだまだ法律は甘いのだった。
例えば、いじめがそれに当たる。
日本国内で外国人を見るのは珍しくは無い時代。
実に10人中3人は外国人であり、規律正しい外国人だけが、日本国内で生き残る。
しかし、日本人は外国人に対し、悪いイメージが強く残っていた。
数々の宗教弾圧に反発し、暴力的な印象しか無いのだ。
夏。
夏期講習。
イケメン物理学教授が授業を行なっている。
大学敷地内庭、隅。
九十九「止めなよ!その人達がテロを起こした訳じゃないでしょ?」
大学4年生になった九十九が3人の大人しい黒人の外国人男性らを庇う。
日本男子は4人。
男子1「九十九!ミスコン優勝したからって調子に乗るなよ!コイツらが未来で無差別テロ起こさないように教育してんだよ!邪魔すんな!」
男子2「そうだよ!だいたいコイツらが挨拶無視するから、こんな事になってんだ!」
九十九「普段からそんな扱いする癖に、挨拶するわけないじゃん!?馬鹿じゃないの?」
男子達『う!うるせーなあ!もう!早くあっち行けよ!』
九十九「嫌ですうー、行きませんー」
九十九は薄いストレッチ長ズボンと長袖だ。
九十九の後ろに隠れながら、じっとりと九十九の体を舐め回す視線。
それを見た日本男子達。
男子1「あ?」
男子2「お?」
男子3「あ、こいつ九十九の尻見てた!」
九十九「うえ!?」
男子4「やっちまえ!」
日本男子らは一斉に飛びかかり、殴る蹴るの暴行を加えていく。
日本男子らは3日間の停学。
留学生達は何事も無く、登校している。
留学生らは九十九と仲良しになり始めた。
九十九は本当の意味では、彼らと仲良しになる事には興味がなかった。
ある日。
九十九は彼らから食事の誘いを断った。
その日の夜道。
九十九は覆面の8人に拉致され、車に乗せられた。
二車は満員、一車は少数。
九十九を乗せるスペースを確保していた。
3台の車
着いたのは、アパートの一室。
九十九は頭に土嚢袋を被されている。
九十九の周りの男性らは知らない言語で話している。
笑い合い、陽気だ。
冗談を言い合っているのが、分かる。
彼らが笑いながらドアを開ける。
アパートの一室に沢山の死体の山。
白い粉が入った珈琲ケースが散乱。
女性の髪の毛の束がコレクションとして壁に飾ってある。
血だらけ、血の海だ。
ナイジェリア人を操るパキスタン人達の死体の山。
イスラム教の祈りのシートが床一面に敷いてあり、血溜まりを吸っている。
ナイジェリア人らは驚愕し、アパートから逃げようとー。
〈パシュ、パシュ〉
サイレンサー銃の音が響く。
次々と倒れていくお仲間達。
我先にと逃走するが、どうやら狙撃手は一人ではないらしい。
5秒で全滅した。
九十九は何も見えない。
九十九は大柄の男性の肩に担がれた。
九十九「んーんー」
九十九は口にガムテープ。
車に乗せられ、ある場所に着いたようだ。
賑やかな通りのようだ。
車内。
機械音声「お疲れ様でした、下を向いて、手を解放します、抵抗したら殺します」
九十九は頷いた。
九十九は手を自由にされ、繁華街、駅前、交番前に放り出された。
黒いハイエースは荒川で爆破された。
目撃者は2人の女性が走って去ったと証言。
警察は威信をかけて捜査しているが、発見は不可能だと誰しもが思っている。
九十九の大学にも捜査は及び、数多くの証言を元に、九十九の誘拐犯人の一味が、あの三人組と判明。
日本男子達は英雄扱いされたが、本人達は、もっと徹底的にやるべきだったと言い、反省しているようだった。
九十九は酷く落ち込んだ。
拓人が今まで以上に九十九と仲良くなりだしたのは、この事件がきっかけだった。
今まで以上に元気づけようと、デートを沢山九十九とするようになった。
時間を巻き戻す。
夜、東京上空。
UAVドローン。
九十九の波形が激しく変化。
パンデミックによる、ワクチンと称したナノマイクロドローンによる、血圧、脈拍、激しい同期確認。
九十九監視班長「緊急緊急、出撃出撃ー、繰り返す、出撃ー、九十九様をお守りしろー」
事後。
後部座席に乗り込む1人の女性らしき姿。
車内覆面を脱ぐ男性。
女装を解く。
イケメン大学物理学教授「状況終了」
もう一人は都会の闇に消えた。
御影家は巨大な不動産財閥であり、巨大な集合住宅丸ごとを兵庫県と岡山県で88か所経営している。
いずれも田舎ではなく、主要駅前である。
九十九は一族の直系であり、たった一人の末裔である。
そのような一人娘を救い出した組織。
恩を感じる御影一族の思いは想像に難くない。
御影家にも生徒と講師側に九十九のボディガードが付いていた。
にも関わらずと思うだろうが、車3台同時奇襲は流石に数人のボディガードらにとっても、どうする事も出来なかったのだ。
九十九の携帯は直ぐに壊された為、追跡も不可能だった。
御影一族は絶望した。
と思ったら1時間もせずに、警察から九十九保護の知らせが入る。
御影一族は、感動し、神は居ると思った。
御影長老、天神流、弓道場、師範。
爺こと、御影義政「必ず恩に報いろ!恩組織には心当たりがある、必ず恩に報いるのだ!」
御影グループ幹部総会『は!』
その夜。
広いAIロボット調理場。
果物や、野菜が見事に切り揃えられ、動物の形や、花の形になっていく。
生魚はチルド冷凍されていて、何とも心地よい氷魚を切断する音。
羽山家に一本の電話が入った。
執事長、眼鏡型スマホ、耳骨スピーカーで応答。
執事長「はい、こちら羽山家執事室、どちら様でしょうか?」
翌日、午後12時。
大学では昼休み中。
皆食べている時間。
御影総帥、御影義政1人で羽山家に訪ねて来た。
重厚で巨大なコンクリート門の横に、頑丈そうなタングステン材で出来た人1人通れる扉がある。
監視カメラが作動している。
〈チキチキチキチキ、ガチャン、ガチャ、ガチャコン、ウイイイン〉
小さな扉の方が開いた。
義政はお辞儀をして、通り抜ける。
素早く自動で扉が閉まった。
義政「・・」
簡単な植物アーチゲートを通り抜け、広い山の敷地内へと足を踏み入れる。
整備された背が高い竹林が美しい音色を奏でている。
義政「なんと見事な」
暫く石階段を登る。
鳥居?が見えた。
しかし、色が赤ではなく、白と金箔である。
羽山一臣がそこで座って待っていた。
羽山一臣が見下ろし、義政が見下されている。
普段の義政ならば、激怒するところー。
義政は石階段途中にも関わらず、土下座をし、頭を石に付けた。
義政「この度は!この度わあ!誠に!誠に!ありがとううございましたあはああ〜〜」
〈サアアアアアアア〉 竹林の音がせせらぐ。
一臣「九十九ちゃんは、この家に嫁ぐ、宜しいですね?」
義政「はうぐ!!?」
一臣を見た。
余裕の涼しい顔。
義政「あ、えー、あー、あ、あ、あのですね」
ド直球。
ド核心。
話が早すぎる。
義政「・・分かりました、それで構いません、孫を宜しくお願いします」
一臣「意味がお分かりなのですか?あなたの御影グループを丸ごとくださいと言っているのですよ?貴方方のグループはある神に守られている、しかし、その神は血で守るべきかを判断する、あなたの直系子孫は九十九ちゃんのみ、九十九ちゃんに継がせるしかない、その九十九ちゃんが、羽山家に嫁ぐ意味とは、御影家の終わりを意味します」
義政「はい、しかし、どちらにせよ、あの子が死んでいれば、あの子が自殺をすれば、御影家は終わりだったのです、ならば、あなたに託したく」
一臣「・・」
義政「・・」
一臣「あなたは素晴らしい、尊敬します、さ、是非昼飯を食べて行ってください、あなたを試してすいませんでした」
一臣が下に歩いて行き、同列に並ぶ。
義政「え?」
一臣「あなたがプライドを取る人間ならば、本当に話を終わらせたでしょう、しかし、あなたは義を取りました、あなたは素晴らしい」
正義「え?え?」
一臣「ささ、牛肉はお好きですか?良い肉が手に入りまして」
最高級ではく、最高なカローラがお出迎え。
ドアがスライドに開いていく。
運転手は居ない。
完全にAI車である。
二人は乗り込む。
庭という山。
庭を車移動する。
車内は音楽は無い。
整備された美しい竹網の道が続く。
一臣「子供が2人以上生まれたら、そちらの神が気に入った方を、新入社員として、そちらに通わせます、後は運命に任せます、如何ですか?」
義政「!・・かたじけない、ありがとうござい、ます・・」
一臣「安心したら、お腹が空いたでしょう、最高の柔らかなステーキが待ってますよ」
義政「はい!」
こうして、御影家は羽山家に取り込まれたが、むしろそのお陰で、生き永らえる事が出来たのだった。
2042年。
大学卒業と同時に、拓人と九十九は結婚した。
2043年。
二人の間に赤ちゃんが生まれた。
女の子。
御影家の神は狐神 (こじん)。
狐の神は面食いだ。
どうやら男子でなくては駄目なようだ。
2045年、2人目の子供は男子。
体が生まれつき丈夫で、格闘技に興味を最初は抱いたが、軍隊に興味を抱き、次に民間軍経営に興味を抱いた。
しかし、イケメンではあったが、狐神はお気に召さなかったようだ。
2049年。
3人目の男子が生まれた。
絶世の美男子。
男か女か見分けがつかないように成長した男の子は、狐神に大層気に入られたと占い結果が出た。
最初の女の子は、IQが300超えの超天才児であり、どんな事にも興味を抱いたが、最終的には、数学、古代言語への世界へと足を踏み入れた。
2051年。
四人目が生まれ、男の子。
この子は商売に非常に興味を抱き、お金が大好き。
本業、副業、共に投資家への道を歩み始めた。
拓人は、一臣の死後、羽山家の全てを受け継いだ。
拓人は予め名言してある。
羽山家の正式な後継者は、4人目の男子。
後は好きに生きろと。
3人は大層喜び、4人目を溺愛した。
問題は3人目の超絶イケメンな男子である。
狐神に愛され過ぎ、富、愛が向こうからやってくる人生。
数多くの芸能プロダクションからオファーがあるが、自身のsnsチャンネルだけでも推定年収800億円。
芸能人よりも芸能人になり、あらゆる大企業広告に採用されている。
出演時間2秒のCMに、30億円が支払われた逸話は伝説となった。
彼の名前は、羽山玉貴 (たまき)。
気品に満ち満ちた、仕草、動作、完璧な肢体割合。
羽山家の宝石。
なんでも鑑定士の物語。
その実写映画出演が決定した。
出演料は500億円。
大企業、質屋大黒が出資。
質屋大黒の看板広告塔専属契約10年が条件である。
玉貴は素晴らしい演技力を見せ、映画は大成功。
派手なアクションも無い。
ただただ、気品に溢れた映画に、ハリウッドもこんな映画の形があるのかとコメント。
映画界に新しい風穴を開けたのだった。
2人目の男子。
名前は羽山遊閻 (ゆえん)。
小さな頃から喧嘩無敗。
どんなに大多数が相手だろうが、卑怯な手も使い、必ず勝って来た。
相手が権力を使ったなら、遠慮なく遊閻も羽山家の知り合いの権力を使った。
あらゆる武術を映画、YouTubeで観漁り、1回で覚え、コピー。
兵庫地元では飽き足らずに、東京、地下格闘技まで出向いて、一億入った鞄を知り合い銀行に預け、そのままホテルで寝るという生活。
拳銃、ナイフで襲って来た奴らは必ず皆殺し。
遊閻はスイッチがあり、それを入れるとどこまでも暗闇に落ちる事が出来るサイコパスという才能があった。
まるで二重人格。
この人格の切り替わりは優先権を譲り合っているだけであり、記憶も同時に処理されている。
つまり、多角的並列処理能力がある。
ただでさえ、格闘IQが高いこの男に、並列処理が加わっているのだ。
格闘中、常人の200倍の演算が可能である。
この化け物の殺し合いを見たNASAは、彼をアメリカ特殊部隊の中でも極めて数人しかなれない部隊にスカウトを決定した。
彼はそれを断り、逆に指導したいと言い出した。
NASAはこれを受諾。
彼は最初に指導していたが、同時に人脈作りをしていた。
日本が正式に核を持ったのは2036年。
アメリカは日本に、民間軍事会社を置き、守らせ、巨大な資本を奪い続けていた。
が。
2067年、遊閻が軍事会社を立ち上げた事で、話は変わった。
遊閻22歳。
日本は日本人だけで民間軍事会社を初めて設立したのだ。
組織の名前は「TORII」
鳥居の形がシンボルである。
アメリカ軍が提供する武器、弾薬、戦闘機、これらを魔改造。
日本独自の武器技術へと昇華させ、実戦配備をしている。
何度も遊閻は命を狙われるが、何故か死なず、敵を粉砕し続けている。
知り合いの戦友達の協力も確かにあるが、持ち前の運が強力なのだ。
1人目の女の子による、副業片手間自作の武器開発のお陰がある事も、筆舌に尽くしがたい。
名前は羽山素子 (もとこ)。
完全にオタク女子。
毎年の数学チャンプ、チェスチャンプ。
無敗中。
よく分からん適当に描いた絵が、落札価格50億ドル。
オタク、色気無しと馬鹿にされたのをきっかけにムカついたので、アメリカのミスユニバースに参加。
Dカップなのに、優勝。
胸は大きさではなく、形だという伝説を作った。
毎日朝夜30秒ずつの挨拶動画。
合計一分の話をするだけのsnsの年収だけで3000万ドル。
日本円にして45億円。
しかし、本人は恋愛、贅沢には全く興味なしと公言している。
レズビアンでもない、ノーマルでも無いという。
宗教家でもない。
研究資金を自分で用意出来れば、後はなんにも興味がないという。
変人でもチャンプ。
それが、羽山素子である。
投資家。
絶世美男子。
暴力の権化。
エンジニア。
日本の宝達。
羽山家を守らないといけないとと、日本全国有名人になってしまった4兄弟姉妹。
地元兵庫県、研究室、工場が多い、岡山地下、神戸、大阪。
羽山家の家紋。
竹林の中にある神社の紋章。
勿論鳥居も描かれている。
羽山玉貴が高校卒業後。
御影不動産グループに、「お飾り」新入社員として入社した羽山玉貴はどうなったのか?
遥かに高みに居る筈の役員達から大歓迎され、何もかも特別待遇。
社員食堂無料。
自販機は使わず、好み全種類網羅してある専用冷蔵庫が玉貴専用最上階に3つある。
まるで超高級マンションの造りで玉貴を出迎えた。
このような明らかな別格待遇は事情を知らない他の新入社員達から妬まれて当然である。
玉貴は全て事情を幼い頃から聞かされて来た為、理解していた。
役員、社長、取引先、長年在籍しているエース達。
皆『君は会社で快適に過ごすだけで良いから!必ず一日一回出社してくれるだけで良いから!仕事?とんでもない!何もしなくて良いから!ただ、大事な取引先から会いたいとか要望があれば、下に降りて来て欲しんだ、お願いします!』
玉貴は時々、デレた会長やら、役員やらに握手を求められ、それに応えるだけだ。
ただし。
これには理由がある。
玉貴が握手をした→狐神が認める→ご利益がある。
どの程度のご利益かは時の運だが、傾いた会社は必ず復活するという。
伝説の握手会なのだ。
最初は半信半疑だった若い新入社員達も、次第に、伝説が現実に起きている事実を目の当たりにし続けた。
高級階を建設する工事も、最初は役員以外は皆大反対だった。
そのような予算は絶対に取り戻せないと。
資材費、建設費、工事関係者人件費、2年の工事期間。
なんだかんだ合計6億円。
皆引きつった顔をしていた。
だが、玉貴が来社し、会社の最上階という巣に「帰還」した途端。
各社ニュースが羽山家の宝、羽山玉貴さんが一般入社されました!と報道開始。
固定電話、携帯電話、社員達のLINEやsnsに、御社と是非取り引きしたいと、殺到。
社長室のドアが開く。
専務「しゃ、社長!大変な事になりました!お、大型マンション発注の電話が止まりません!あ、アメリカからも、カナダからも!ド、ドバイまで!」
社長「この時の為に翻訳AIも準備して来たじゃないか、慌てるな」
専務「九十九さんの時はこうはなりませんでした、何故」
社長「新たな宿主が本当にお気に召したのだろう、本来、あの方は、男子を好まれる」
専務「・・」
社長「暇か?」
専務「あ、ああ、いえ、寝る時間も御座いません!失礼しました!」
ドアが閉まった。
社長は鍵をかけ、高級シャンパンを昼間から開けた。
社長「言っただろう、直ぐに回収出来るとな、羽山家に」
グラスを掲げ、一気に飲み干した。




