第九章 秋の黄昏
十一月に入り、庭は深まる秋の気配に包まれていた。菊が色とりどりの花を咲かせ、紅葉は最も美しい時を迎えていた。野菜畑では、最後の収穫を終え、冬支度が始まっていた。
エリシェバの体調は、日に日に弱っていくのを感じていた。それでも、できる限り庭の手入れを続けた。
「エリシェバさん、無理なさらないで」
菊たちが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫よ。これが私の喜びなの」
エリシェバは、優しく微笑んで答えた。
その日の夕暮れ時、突然の寒気に襲われた。視界が少しぼやけ始める。
「エリシェバおばあちゃん!」
リリアが真っ先に駆けつけた。天使のミカエルも、すぐに現れた。
「エリシェバさん、今日はもう休みましょう」
二人に支えられ、エリシェバは家の中へと戻った。窓の外では、花々が心配そうに揺れていた。
夜になると、庭から不思議な光が漏れ始めた。ベッドに横たわりながら、エリシェバはその光景を見つめていた。
花々が、これまでで最も美しい光を放っている。妖精たちや天使たち、そして大地の精霊たちまでもが集まり、祈りの輪を作っていた。
「エリシェバさん」
ミカエルが、静かに寝室に入ってきた。
「もうすぐ、冬がやってきます。でも、心配することはありません。私たちが、ずっとそばにいますから」
エリシェバは、穏やかに頷いた。確かに体は弱っているが、心は不思議なほど平安に満ちていた。
窓の外では、最後の紅葉が月明かりに照らされて輝いていた。それは、まるで秋からの別れの挨拶のようだった。




