第七章 秋の訪れ
九月に入り、庭には秋の気配が漂い始めていた。コスモスがピンクや白の可憐な花を咲かせ、キンモクセイが甘い香りを漂わせる。野菜畑では、サツマイモの蔓が地を這い、カボチャが大きく育っていた。
エリシェバは、秋の気配に心を癒されながら、いつものように庭の手入れに励んでいた。
「エリシェバさん、私たち、きれいに咲けていますか?」
コスモスたちが、風に揺られながら尋ねてきた。
「ええ、とてもきれいよ。秋の庭を、あなたたちが一番美しく彩ってくれているわ」
エリシェバが答えると、コスモスたちは嬉しそうに揺れた。
その時、新しい声が聞こえてきた。
「エリシェバさん、こんにちは」
振り向くと、そこには今まで見たことのない天使が立っていた。金色の髪を秋風になびかせ、深い紫の瞳をしている。
「私はミカエル。秋の季節を司る天使です」
エリシェバは、穏やかに微笑んで応えた。
「まあ、ようこそ。秋の天使さまがいらっしゃるなんて」
「ええ、季節の変わり目には、私たちも担当が代わるんです。これからしばらく、エリシェバさんの庭を見守らせていただきます」
ミカエルの存在は、ガブリエルとはまた違った落ち着きと深みを持っていた。その日から、庭には秋の天使たちが訪れるようになった。
秋の天使たちは、夕暮れ時になると特に美しい光を放った。その光は、コスモスやリンドウの花々を黄金色に染め上げ、庭全体を幻想的な雰囲気で包み込む。
「エリシェバおばあちゃん、私たちも衣替えの時期なの」
リリアが、茶色がかった新しい羽を見せてくれた。他の妖精たちも、秋の装いに着替えていった。
「まあ、とても素敵ね。秋の妖精さんたちも、やっぱり美しいわ」
エリシェバは庭の変化を、静かな喜びを持って見守っていた。しかし、体の衰えは少しずつ確実に進んでいることを、自覚していた。
「エリシェバさん、少し休みませんか?」
ヒガンバナが、優しく声をかけてきた。
「ええ、そうね。少し休ませてもらおうかしら」
エリシェバは庭の木製のベンチに腰を下ろした。秋の陽射しが、優しく彼女を包み込む。
「エリシェバさん」
ミカエルが、静かに近づいてきた。
「ヨハネスさんからのメッセージをお預かりしています」
エリシェバの心が、小さく震えた。
「彼は言っています。『愛しい人よ、焦らなくていい。私たちはいつか、必ずまた会える』と」
エリシェバの頬を、温かな涙が伝った。




