第四章 夏の訪れ
六月に入り、庭には夏の気配が漂い始めた。朝顔のつるが支柱を這い上がり、ガーベラが鮮やかな花を咲かせている。野菜畑では、トマトやナスの若い実がたわわに実っていた。
エリシェバは朝露の残る早朝から、庭仕事に精を出していた。
「エリシェバさん、今日は暑くなりそうです。無理なさらないでくださいね」
ガーベラたちが心配そうに声をかけてきた。
「ありがとう。でも大丈夫よ。夏の間、あなたたちの世話を怠るわけにはいかないもの」
エリシェバは帽子の縁を少し下げ、丁寧に花々の手入れを続けた。
真夏の日差しが強くなるにつれ、庭の様子も変化していく。朝顔が次々と蕾をほどき、ハイビスカスが情熱的な赤い花を咲かせた。野菜畑では、キュウリやナスが日に日に大きくなっていった。
「エリシェバおばあちゃん、今日はとびっきりの贈り物があるの!」
リリアが興奮した様子で飛んできた。その後ろには、たくさんの妖精たちが続いていた。
「まあ、こんなにたくさん……」
妖精たちは手に手に、キラキラと光る粉を持っていた。
「これは夏の妖精の花粉よ。これでお花たちが、もっと元気に育つの」
妖精たちは歌いながら、その粉を庭中にまいていく。するとたちまち、花々はより一層鮮やかな色彩を帯び、野菜たちもいきいきと茂っていった。
「こんな素晴らしい贈り物、ありがとう」
エリシェバは心から感謝した。夏の庭は、まさに生命の躍動そのものだった。
ある日の午後、突然の夕立に見舞われた。エリシェバはベランダから、雨に打たれる庭を見守っていた。
「エリシェバさん、この雨、気持ちいいです」
バジルが清々しい声で語りかけてきた。ハーブたちは雨に打たれ、より一層香り高くなっていく。
「ええ、本当ね。雨はあなたたちにとって、天からの恵みなのね」
夕立が去った後、庭には二重の虹がかかった。その瞬間、天使たちが虹の橋を渡るように現れた。
「エリシェバさん、素晴らしい庭ですね」
ガブリエルが、にっこりと微笑んだ。
「夏の生命力は、神の愛そのもの。ヨハネスさんも、きっと喜んでいますよ」
エリシェバは、虹と天使たちの光景に見とれていた。その時、花々が一斉に歌い出した。それは、夏の喜びを讃える、生命の讃歌だった。
妖精たちも加わり、庭全体が音楽に包まれていく。エリシェバは、自然と手を合わせていた。この歌声は、きっと天国のヨハネスにも届いているに違いない。




