表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【幻想短編小説】エリシェバの庭 ~白薔薇の約束~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

第三章 春の約束

 五月に入り、庭には様々な花が咲き誇るようになった。アイリスやシャクヤクが鮮やかな色彩を競い、野菜畑では若葉が勢いよく伸びている。エリシェバは、この生命力溢れる光景に心を癒されていた。


 しかし、ある朝のこと。


「エリシェバさん、具合はいかがですか?」


 アイリスが心配そうな声で尋ねてきた。確かに今朝は、いつもより体が重く感じられた。


「ええ、ちょっと疲れているだけよ。心配しないで」


 だが、花々の心配は的中していた。その日の午後、エリシェバは庭の手入れ中にめまいを感じ、その場に座り込んでしまった。


「エリシェバおばあちゃん!」


 リリアが慌てて飛んできた。


「大丈夫よ、ただ少し休めば……」


「無理しちゃダメ。今日は家で休んでいて」


 妖精の声には、普段には無い厳しさが混じっていた。エリシェバは素直に従い、その日は早めに休むことにした。


 夜、ベッドに横たわっていると、窓の外から不思議な歌声が聞こえてきた。寝巻き姿のまま窓辺に立つと、庭には幻想的な光景が広がっていた。


 花々が柔らかな光を放ち、その周りを幾人もの天使が舞っている。天使たちは美しい声で讃美歌を歌い、その歌声は夜の庭全体に響き渡っていた。


「これは……」


「エリシェバさんのための祈りの歌です」


 窓辺に現れた一人の天使が、優しく微笑みかけた。


「私はガブリエル。花たちが心配して、私たちを呼んでくれたのです」


 エリシェバは、その光景に言葉を失った。天使たちの歌声は、彼女の心身を癒していくようだった。


 それ以来、エリシェバの庭には時折、天使たちが訪れるようになった。彼らは花々の世話を手伝い、時には天国の様子を語ってくれた。そして何より、ヨハネスからのメッセージを伝えてくれた。


「ヨハネスさんは、エリシェバさんのことをいつも見守っていますよ」


 ガブリエルの言葉に、エリシェバの目に涙が浮かんだ。


「本当に? あの人は……今、幸せ?」


「ええ、とても。そして、エリシェバさんが花たちと過ごす日々を、喜んで見ているそうです」


 春の終わりが近づくにつれ、エリシェバの体調は少しずつ回復していった。花々や妖精たち、そして天使たちの存在が、彼女に新しい力を与えてくれたのだ。


 ある夕暮れ時、十字架の前で祈りを捧げていると、不思議な感覚に包まれた。まるで、ヨハネスの温かな手が自分の肩に触れているような……。


「ヨハネス……私ね、幸せよ」


 夕暮れの風が、優しく彼女の頬を撫でていった。花々は静かに見守り、夕陽に照らされて輝いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ