ホラーハウス 演技
怖い物を怖がる女の子を演じようと思った。
だから私は、退屈で仕方がないホラーハウスに入って、きゃきゃー悲鳴を上げている。
男性って庇護欲が湧く女性を、好きになりやすいらしい。
自分より劣っている女性がいいだなんて、おかしいったらないわ。
でも面倒だけどしょうがない。
がんばって演技をしなくちゃ。
「きゃー。おばけ! 怖いわ! 助けてたっくん!]
「大丈夫だよなっちゃん! 僕が守ってあげるからね!」
勇ましい声で私をかばってくれるたっくん。
とってもかっこいいわよ。
かっこよくて本当に滑稽ね。
子供の頃はわざとらしいぶりっ子が大嫌いだった。
私の知っている女の子達は、そんなぶりっ子が大嫌いで、そういった子をいつも仲間外れにしていたわね。
ぶりっ子なんてしたって何が楽しいのやら。
そんな事をして同性の敵を作って、いったいどんな良い事があるんだろうと思っていた。
でも大人になっていくにつれてだんだんと理解してきたの。
そういった人間はただ、自分に必要なものを取捨選択しただけだった。
同性のお友達より、異性にちやほやされる方が良かったんででしょうね。
今の私と同じだわ。
結婚、結婚、結婚。
本当にうざい。
やかましい両親や親戚の連中を黙らせるのにはこうするしかないもの。
安心してたっくん。
私、結構演技が得意だから、最後まで可愛げのある女を演じてあげるわ。
「きゃー。いやー。助けてたっくん!」
「なっちゃんは俺が守るよ。大丈夫だからね」
あなたにとって都合のいい女でいてあげる。
だから私に都合のいい男でいてね。