1章 修行開始
評価、コメントよろしくお願いします。
ここはメルシア小国のジェニ地区にある今はもう以前の面影もない小さな街。
天魔により、住民のほとんどがその姿を消した。
そんな中で、唯一生き残っている少年は悪魔と契約をし、現在に至る。
『よし、そうと決まれば善は急げだ。儂の力を与えよう。手を出せ。』
俺は言われるがままに手を前方に突き出した。
すると、金色、紫色、赤色、青色等が混色した拳大の結晶が手のひらに出現した。
「げっ! なにこれ…、気持ち悪い色だな…」
思わず吐き出しそうになったが、次のバエルの発言で吐くことになる。
『それじゃあ、その結晶を飲み込め』
「オェエエエッ!!!」
盛大に虹をぶちまけ、少し意識が遠のく。
何言ってんだこいつ…。こんなの食える訳ないだろ…!
「ハハッ、バエルさんったら、冗談がお上手で…」
『別に冗談ではないんだが…。口から飲み込むのが嫌なら、手から吸収させることも可能だが? そっちにするか?」
地獄のような状況が一変し、天国に変わった。
「流石バエルさん! それでいきましょう!」
バエルが了承し、結晶が溶け、手のひらに染み込んでいく。数秒で全て体に吸収された。
そして体に変化が訪れる。
「ん? 体から変な湯気?みたいなのが出てるけど大丈夫そう? これ」
『うむ、お前が今見ているその湯気のそうなものこそ、魔力が体外に出て発生する“魔妖気”だ。これが初見で感じ取れるのも、資質がある証拠なのだよ』
やはり、儂の目に狂いはなかった! と、一人で自画自賛している。
魔力って魔族が使うあの魔力のことか? じゃあ、魔法が使えるってことか?!
「バエルさん、いや、師匠! 俺に魔法を教えてください!」
『あぁ、最初からそのつもりじゃ。儂の修行はちと厳しいぞ?」
「はい! 頑張ります!」
こうして、少年の修行が始まったのであった。
〜修行1日目〜
魔法修行のため、近くの山奥にある広場にやってきた。
『そういえば、お前、名はなんと申す?』
「ラファエル。ラファエル=ヘブンです」
『ラファエル、魔法とは“イメージ”だ。炎を出したければ、頭の中で炎をイメージするんだ。
だが、意外とそれが難しい。儂なら無詠唱で出せるが、最初のうちは詠唱があったほうが良いだろう。
まず、魔力で魔法陣を当てたい方向に展開する。そして、火炎系攻撃魔法“炎球”と唱えることで、魔法が発動する。
簡単だろ? 一回やってみろ』
火炎系攻撃魔法って詠唱が、イメージしやすくしてるんだな。
取り敢えずやってみるか。
「えー、魔法陣展開! 火炎系攻撃魔法“炎球”!!」
手頃な大きさの木に向けて手のひらを向け、魔法陣を展開。
魔法文を詠唱し、魔力が手のひらに集中するのを感じる。
まだ魔力操作に慣れていないせいか、少し時間がかかったが、魔力を練り上げ、炎の玉の生成に成功。
炎の玉は勢いよく木に向かって飛んでいき、命中し、大きな爆発音を立て、辺り一帯を火の海にした。
「うぇえっ?! ちょっ、威力強すぎだって! み、水! 水の魔法教えて下さい!」
『お前、時間を掛けて魔力を練り上げ過ぎだ。もっと短くすれば、威力は下がる。
と、水の魔法だったな…。
水氷系攻撃魔法“零度の雨”ぐらいが丁度いいだろ』
「魔法陣展開! 水氷系攻撃魔法“零度の雨”!!」
今度は手短に魔力を練り上げ、放出した。
威力を抑えた零度の雨は見事、火の海となっている部分だけを消火してくれた。
「ふぅ、魔法って難しいな…。
バエルさん、一応聞いとくけど、魔法って天魔に効くの?」
『うむ、効果抜群であった。
だが、固定差があってな。ほんの少しの魔力で死ぬやつもいれば、最大まで魔力を練り上げなければ死なぬやつと、様々で、いちいち見極めて調整するのは神経を削るんだよ。
そのせいで、儂らはコテンパンに殺れられたんだな。
儂がもうちとしっかりしていればな…』
無念そうにそう語るバエルが少し可哀想に思えた。
「なるほどね…。 …俺、決めた。
家族を殺した天魔を、俺は許せない、だから、一匹残らず殲滅する。
バエルさんの仲間の弔い合戦も兼ねてね。
それが終わるまで付き合ってよ、バエルさん」
『ふっ、小僧がいきがるな。
…まぁ、儂もその気持ちには同感だ。
あやつらには、ちとムカついていてな。この鬱憤、晴らしたいところだ。
良かろう、ラファエル。お前の提案に乗ってやる。感謝せよ!』
俺の脳内に悪魔の笑い声が響く。
ちょっと、笑い方怖いなー…。
なんて思ったけど、言わないでおこう。機嫌悪くされても困るからね。
『よし、では次の修行に移るぞ。
次の修行は、外にダダ漏れの“魔妖気”を内にしまう、だ。
1日中“魔妖気”を放出してるとすぐ魔力切れになってしまう。
それを防ぐために、必要ないときは収納する。それが出来るようになったら次の修行に移るぞ』
「押忍!」
外側の魔妖気を内側に収める…。
ズズズ…、と魔妖気が徐々に薄くなる。
お、これ出来てる?
そして、すべての魔妖気の収納に成功した。
だが、次の修行が地獄だった。
『お、中々速いじゃないか。
よし、次の修行は、そのまま1時間耐えろ。それもできたら、そのまま耐えれるとこまで耐えろ。
以上だ、頑張れよ。これができなきゃ、天魔殲滅は諦めな。』
「大丈夫。任しといて」
そうは言ったものの、これがまたきつい。
溢れそうな魔妖気を強制的に押さえつける。
これが精神を削りに削り、30分で疲労困憊。
一旦魔妖気の収束を解いた。
「やべ…、死にそう…。気力が持たない…」
『ふむ、今日はこの辺にしておくか?』
「いや、まだ日が沈むまで時間あるから、やるよ」
〜数時間経過〜
何度か繰り返す内に、俺の体が徐々に苦しみに慣れてきたようで、1時間は耐えられるようになった。
あたりを見ると、もう日が暮れ、フクロウが鳴いていた。
『流石。としか言いようがないな。たった1日でここまで出来るとは、見事である…。
よし、今日はここまでだ。主権を交代しろ。飯をつくってやる』
「えっ?! バエルさん料理できるの? 王様なのに?」
『馬鹿を申すな。儂にだって料理ぐらい出来るわ!
いいからお前は休んでおけ』
そうバエルに言われた瞬間、意識が飛んだ。
そして目を覚まし、気付いたら目の前にご馳走が並んでいた。
ご馳走と言っても、肉や魚を焼いたりしただけなんだけどね。
「おぉ! ほんとに料理できたんですね! それじゃ、いただきまーす」
『ふふん、できて当然だ。それより味はどうだ? 調味料が胡椒と塩しか手に入らなくてな』
これが胡椒と塩だけだって? そんな馬鹿な! と、言いたくなるほどの美味しさであった。
皿もどこから手に入れたかわからないが、高級そうだった。
それに、いつの間にかベッドまで置いてある。
「とても美味しいです! …あの、あそこに置いてあるベッドはどこから持ってきたんですか?」
『あぁ、あれは“魔法”で出したんだ。“錬金魔法”と言ってな。これが何かと便利だから後で教えてやろう。
…ちと、魔法について話すか。
魔法には大きく分けて8つ種類がある。
攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法、強化魔法、弱化魔法、錬金魔法、創造魔法、召喚魔法。
そして、系統は更に多く存在する。
例えば、火炎系や水氷系、雷電系、岩石系、守護系、付与系…とかだな。
熟練の魔族は無詠唱で魔法が出せるようになるが、そのためには血の滲む努力が必要だな』
「ふーん。魔法は奥が深いんですね」
食べ終わった皿を片付けながら、話を聞いていたため、返事が少し適当になってしまったが、バエルは気にしていなかったようで、まだ話続けている。
うーん…。今日はもう疲れたから早く寝たいんだけどなぁ…。
そんな俺の思いを感じ取ったのか、バエルが話はまた明日にするか、と言い残し、何も喋らなくなった。
「はい、おやすみです…」
俺は大きなあくびをし、ベッドに潜り込む。
魔法でつくったとは思えないほどの気持ちよさだった。
いや、魔法だからこの気持ちよさが出せるのかもしれないな。
そんな事を考えながら、俺は深い眠りに落ちていった…。
よろしくお願いします。