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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第六章 生徒編

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第一話 妹よ、俺は今自由課題の賞を選んでいます。


「へっくしょん!」


 おい、おい、新学期早々風邪なんて勘弁してくれよ・・・って、この世界に来てから風邪なんて引いたことないけど。もしかして、風邪をひかないのも創造神様の加護にある状態異常完全無効化のおかげなのかな?


 

「おはようございます」


「「「おはようございます!!!」」」


 おぉ、元気な挨拶だ。


 夏休みが開け、登校初日。真っ黒に日焼けした子供達からは、少しの緊張と大きな期待が感じ取れる。夏休み期間も同じ敷地内で暮らしている子供達とは毎日のように顔を合わせていたが、不思議なものでクラス全員と教室で顔を合わせるのはまったくの別物だ。俺も身が引き締まる。


「はい、はい、トキオ先生。聞いて、聞いて!」


 年中組の元気印、ミーコが早速自己主張。


「はい、ミーコ」


「あのね、ガイアさん凄いんだよ。みんなに将棋を教えてくれて、いっぺんに十人と指すの!」


 ほぉ、前世でプロ棋士がアマチュアのファン相手にやる十面指しか。流石は将棋が得意だと言うだけはある。フランの時もそうだったが、ミーコは新しく出来た友人の良いところを真っ先に俺に伝えようとする。それはとても素敵なことだが本人はまったく気付いていない。今のミーコを見て、ここへ来たばかりの時はラーラさんのうしろに隠れていたなんて誰も信じないだろうな。


「子供達に将棋を教えてくれてありがとう、ガイアソーサ」


「いいえ、僕も楽しいですから」


 現在、ガイアソーサは子供達と一緒に寮で生活している。修行は順調、「魔王」スキルで基本ステータスが高い為、魔法の理解も格段に速い。既に無詠唱魔法も使えるようになっている。その反面、格闘面の基礎は思いの他出来ておらず、圧倒的にステータスで上回っているマーカス相手にも体術で勝負すると勝てないのが現状。こちらは頭で理解するだけでなく、体で覚えなければならない部分も多いため少し時間が掛かりそうだ。


 朝の稽古と午後からの魔法の授業以外は自由に過ごしてもらうつもりだったが、ガイアソーサたっての希望で授業にも参加することになった。既に十分な学力を持っているため学校で学ぶ必要は無いが、俺が学校で何を教え、どの様な授業をおこなっているかを学びたいらしい。魔族国で学校を作る参考にしてもらえるなら俺も嬉しい。と、いうことで、今は前世でいう教育実習のような状態だ。


「ところで、将棋は難しいけれど、みんなルールは覚えたの?」


「すぐに覚えたよ。年少組の子も指せるよ」


 マジか!レベル高いなぁ・・・


「誰が強いの?」


「ミルちゃんとター坊!」


「ミルはわかるけど、ター坊?年少組のタティスのこと?」


「そう!ミルちゃん以外ではター坊だけが駒落ち無しでガイアさんと勝負しているの」


 おいおい、タティスはまだ七歳、前世でいうなら小学二年生だぞ。


「ミル、タティスは君から見ても強いかい?」


「うん、今はまだわたしの方が強いけど、多分もうすぐ勝てなくなる。将棋が楽しくて仕方がないみたいで、図書室で将棋の本を借りてきては読み込んでいる。ター坊は本物」


 ミルにここまで言わすとは・・・これは一度確認しておきたい。


「よし、ガイアソーサ、今晩俺と指そう。ガチで勝負だぞ。子供達に大人の真剣勝負を見せてやろうじゃないか」


「本当ですか、お願いします!」


 ガイアソーサの奴、もの凄く嬉しそう。もしかして、ずっと俺と将棋を指したかったのかなぁ?だったら、言ってくれればいいのに・・・


「これは見逃せない、頂上決戦だ!」


「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」


 ミルの一言に子供達から歓声が沸く。今は将棋ブーム、鉄は熱いうちに打たないとね。





「じゃあみんな、宿題を提出してください。まずは問題集から」


 うん、うん。みんな怠けずちゃんとやってきたな、えらいぞー。


「はい、次は自由課題を机の上に出してください」


 いいね、いいね、色々出てきたぞ。自由研究のノート、絵や工作、これは楽しみだ。


「よし、一人ずつ発表だ。まずはガインから」


「はい」





 面白かった。みんな興味のあることを楽しくできたみたいだ。工夫も凝らしてあって飽きなかった。

 さて、問題はここから。自由課題には各クラス一位から三位、金賞、銀賞、銅賞を決めなくてはならない。本来順位など必要ないが、まあ、これもイベント。各賞の決定は担任に一任されているので責任は重大だ。


「じゃあ、各賞を発表するよ。銅賞は・・・ガイン!」


「はい、やったー!」


 珍しいな、ガインがこんなに喜びを表情に出すなんて。普段は学級委員として我慢させちゃっているのかも。


「ガインは建物に興味があるのか?」


「はい。初めて学校を見た時の感動が今も忘れられません。自分もいつかこんな建物を造る仕事につければと思っています」


 ガインが作ってきたのは学校のミニチュア。大柄のガインからは想像もつかない細かな作業がしてある。屋根を取ると室内も再現されている力作だ。


「そうか。この学校を建てたのは俺だから、設計にも興味があるのなら何でも聞きにこいよ。街で見学したい建物があるなら俺が交渉してやるからな」


「はい、お願いします!」


 いい笑顔だ。将来の目標もできたのなら、俺はいくらでもバックアップするぞ。




「銀賞は・・・シオン!」


「嘘・・・」


「嘘なものか。シオンの自由研究は良く書けていた。今後の飼育係の為にもなる素晴らしい出来だったよ」


 未だ信じられないといった表情のシオン。


「やったー!銀賞だよ、シオン!凄い、凄いよ!」


「う、うん!」


 シオンより先に仲良しのミーコが喜びを爆発させ、ようやくシオンも我に返ったのか、はにかみながらも嬉しそうだ。


 シオンの自由研究は学校で飼育している動物の生態や育て方。図書室の本で一生懸命調べたのだろう、鶏や山羊を飼育する上での注意事項から、実際に飼育して起こった出来事や対処した方法、餌をあまり食べなくなってしまった時にどうしたら食べるようになったかや、気性の荒い動物にどう触れ合えばいいかなどの経験談も踏まえ書かれている。


「動物への愛情が詰まっていて、内容もわかりやすく書かれた素晴らしい自由研究だ。おめでとう、シオン」


「うん。わたし、動物好きだから・・・」


 好きこそ物の上手なれ。シオンが将来どんな職業を目指すかはまだわからないが、飼育の経験はきっと役に立つと思う。




「さて、いよいよ金賞だ」


 子供達が息を呑む。


「金賞は・・・ミーコ!」


「えぇぇぇぇぇ、なんで、なんでわたしなの?ミルちゃんは凄く難しいろんぶんをかいたんだよ。カルナちゃんは自分で物語を書いちゃったし、フーちゃんは領主様の仕事をわたし達にもわかるようにまとめてくれた。テオの絵も凄く上手に描けているし、チャップの工作も凄いよ。クワンの作った服は凄く可愛いし・・」


 フフフッ、友達のことは凄い、凄い、といつも言っているのに、自分が褒められると照れちゃうのかな。


「わたしも、ミーコのやつが一番いいと思う」


「ミルちゃん・・・」


 ミーコの作品は学校に通う全員の似顔絵。似顔絵といっても顔だけじゃなく、背の順に並んでいて、一人一人の身長といいところが書かれている。最初の予定より作品が大きくなってしまったのか、紙が継ぎ足し、継ぎ足しで横に長くなり巻物のようになってしまっているが、そこも手作り感が出ていていい。


 ミルの寸評も聞いてみよう。


「似顔絵だけなら金賞は無かったかもしれないけれど、背の順に並べてあるのが秀逸。きっと来年にはこの順番は変わっている。去年はこんなに小さかったのかって分かるところがいい。今の一瞬が切り抜かれていて、セラ学園の初年度金賞にふさわしい作品。似顔絵も・・・まあまあ似ている」


 そう、流石はミル。この作品の肝は背の順に並んでいるところ。絵はそれほど上手じゃないけれど、友達が大好きなのが伝わってくる。決定権は俺に有る。俺はこの愛に溢れた作品をどうしても金賞にしたかった。


「私もミーコの作品が一番好きです。ちゃんとガイアさんが入っているところも加点ポイントだと思います」


「フーちゃん・・・」


 フランが言うように、夏休みの途中から学校に来たガイアソーサも描かれていた。一番背の高いアルバよりもガイアソーサは背が高い為、一番左に一人分紙が継ぎ足されているのがなんとも微笑ましい。


「おめでとう、ミーコ!金賞だよ!」


 今度はミーコより先にシオンが感情を爆発させ、ミーコに抱き付いて喜ぶ。すると、お調子者のテオが手を叩きながらミーココールを始めた。


「ミーコ!ミーコ!ミーコ!・・」


 みんなも一緒になってミーココールが教室中に広がる。


「「「ミーコ!ミーコ!ミーコ!・・」」」


 ガインがミーコを抱え上げる。パンツ丸見えだが誰もそんなことは気にしない。


「「「ミーコ!ミーコ!ミーコ!・・」」」


 クラスメイトのミーココールにガッツポーズで応えるミーコ。本当は教室で騒いでいるところを注意しないといけないのだろうけれど、これを止めるほど俺は空気の読めない教師じゃない。


「みんな、ありがとー!みんな、大好き―!学校も大好き―!」


「「「ミーコ!ミーコ!ミーコ!・・」」」


 さて、この後講堂で全校集会もあるし、そろそろ止めるか・・・


「「「ミーコ!ミーコ!ミーコ!・・」」」


 なんか、止めづらいなぁ・・・



 妹よ、手前味噌かもしれませんが、俺が担任するセラ学園年中組は良いクラスです。


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