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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第五章 アトルの街編

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第八話 妹よ、俺は今シスターパトリに任せています。

 

 デラクール神父に案内されて来客室へ。テーブルには先に大聖堂を出たシスターニモがお茶を準備してくれていたのだが、カップは二つしかない。


「どうぞ、そちらへおかけください」


「はぁ・・・」


 とりあえず、俺とシスターパトリは言われた通りソファーに腰を下ろす。


「あの・・・」


「はい、何でございましょう」


「どうして、そんなところに?」


 案の定、デラクール神父とシスターニモは、対面のソファーに座らず床に正座した。マザーループとシスターパトリに初めて会った時と同じだ。


「そんなところでは話もしづらいでしょうし、ソファーに座ってください」


「わたくし共はここで構いません。トキオセラ様と同じ高さに座るなど、滅相もない」


 出たよ、面倒くさいやつ。困った人達だ・・・俺はただの人間だと言っても聞きやしない。あれをやるしかないな。


「それでは、俺も床に座らせてもらいます」


 立ち上がり、デラクール神父とシスターニモの前まで移動しようとするのを慌てて二人が止める。


「お、お待ちください!わかりました。わたくし共が移動いたしますので、どうか、そのままで!」


 そうなるのは分かっているんだから・・・さっさと座ってください。


 しぶしぶソファーに移動する二人にシスターパトリが声を掛ける。


「でしたら、紅茶も後二人分用意してください。私達だけが頂く訳にはまいりませんから」


「しかし・・・」


 あくまで、俺と自分達を同等に扱くことを渋るデラクール神父。どうしていいのかわからず、オロオロするシスターニモ。そんな二人にシスターパトリが言う。


「お二方のトキオセラ様を敬うお気持ちは痛いほどわかります。マザーと私も、トキオセラ様と初めてお会いした時は同じ行動を取りましたから。ですが、トキオセラ様、いえ、トキオさんはその様なことを望んではおりません。普通の人間、一青年としての対応を望んでいます。これ以上敬うのは、逆に失礼ではありませんか?」


 よくぞ言ってくれました、流石は経験者。やるじゃないですか、シスターパトリ!


「シスターパトリのおっしゃる通りですね・・・申し訳ありませんでした。愛の女神カミリッカ様の気配を纏われたトキオセラ様があまりにも神々しく、このような行動で不快なお気持ちにさせてしまったこと、謝罪いたします」



 と、いうことで、お茶も人数分用意され、ようやくソファーに座って対面したのだが、デラクール神父とシスターニモの二人は緊張でガチガチだ。普段どおり話してもらうにはどうしたものか・・・


 この状況を打開しようと思案していると、俺より先にシスターパトリが話し始めた。


「お二方共そう緊張なさらず・・・と言っても無理ですよね。私もトキオさんと初めてお会いした時は、隙あらば頭を垂れようとしていましたから」


「は、はい。今も、床に吸い寄せられそうになっている頭を、必死で上げている状態です」


 隣でシスターニモが、うんうんと何度も頷く。こればかりは俺にもどうしようもない。


「わかります、わかります。そこで、マザーと私は考えました。どうすればトキオさんと普通に接することができるかを」


 なんか俺が、超接しづらいやつみたいで悲しい・・・


『コタロー、この気配をどうにかできないか?』


『無理です。そもそも、チセセラ様とカミリッカ様の気配を感じ取れる者は世界で四人だけですので、そちらをどうにかした方が早いですよ。セラ教のマザーとシスターは克服しているのですから、この者達でどうにかするべきです』


 そうは言ってもなぁ・・・


「是非、お教えください。その方法とは?」


「その前に、トキオさん。お二方へはどこまでお話されるおつもりですか?」


「もう、全部話しますよ。カミリッカさんの気配を感じ取られている時点で隠しようがないですから」


「それを聞いて安心しました。それではトキオさんのお話の前に私から一つ、この世界の神にまつわる真実をお話します」


 神にまつわる真実と聞き、デラクール神父とシスターニモは息を呑む。


「この世界を創造された創造神様を除き、全ての神は、元人間です」


「なっ、それは、まことですか!」


 凄く驚いている。隣で顎が外れそうなほど大口を開けて固まっているシスターニモの表情が少し面白い。


「あとでトキオさんより詳しいお話がありますが、前世で慈悲の女神チセセラ様の兄であり、愛の女神カミリッカ様が女神様となる前に修行をつけて頂いたのがトキオさんです・・・って、ストップ、ストップ。平伏しないでください。そのまま、そのまま聞いて下さい!」


 フフフッ、あかん、なんか笑えてきた・・・トロンの教会に初めって行った時の俺の役をシスターパトリがやっているのが滑稽で面白い。


「それを聞いた後、マザーと私はこう思うようにしました。トキオさんは限りなく神様に近いただの若者なのだと。来世で神になる御方だとしても、今は私共と同じように、充実した人生を送ろうとしている一人の人間であると」


 おいおい、何の話をしているんだシスターパトリは・・・俺は、神様になんてなれませんよ。


『うむ。このシスター、なかなかわかっていますね』


『いや、全然わかってねーから!』


 あーあ・・・デラクール神父とシスターニモが完全に聞き入っちゃっているよ・・・任せるんじゃなかったかなぁ・・・


「それで、私達は何をすべきでしょう。嫌がっているトキオさんに、それでも敬い続けるべきでしょうか。違います。もう一度思い出してください、デラクール神父。あなたは、愛の女神カミリッカ様からのどのような神託を賜りましたか」


 なんか前世の、怪しい新興宗教みたくなってない?本当に任せて大丈夫ですか?


「はい。「トキオセラ様に助力せよ」と賜りました」


「セラ教会のトップであるマザーループも、同じ神託を慈悲の女神チセセラ様より賜りました。私達がすべきことは、トキオさんを敬う気持ちを胸の奥にしまい、トキオさんが描く世界を現実とするため、共に手を取り合って努力していくことではありませんか?」


 俺は本当にただの人間なんです。胸の奥にしまう以前に、敬わなくていいですから!


「今、セラ教会の敷地内にはトキオさんに建てて頂いた学校があります。私達の力不足で満足に教育を受けさせてあげられなかった孤児達が、すべてが無償で教育を受けられています。創設者であるトキオさんの「この世界を、全ての子供達が身分や生まれに関係なく自由に学べる世界にしたい」という崇高な理念のもと、我らが模範となり、少しずつでもこの世界を変えていけるよう活動しています」


「セラ学園のことは私も聞きました。素晴らしいです。いつの日かトロンの街に行けることが叶いましたら、是非見学させてください!」


 今迄一言も言葉を発しなかったシスターニモが、滅茶興奮している。やさしい子なんだね。


「はい、その時は是非当教会にお越しください。話しを戻しますが、私は今すぐリッカ教にも無償の学校を作れと言っているのではありません。何をするにも資金と準備は必要です。愛の女神カミリッカ様から「トキオセラ様に助力せよ」との神託をデラクール神父が賜ったのは、リッカ教会もトキオさんの成すべきことに助力できるからです。その大義の為に、今はトキオさんへの敬意を胸の奥にしまい、一青年として普通に接することはできませんか?」


 なに、その「決まった!」ってドヤ顔・・・


 マザーループとシスターパトリも俺への敬意を胸の奥にしまっているってこと。別に敬意なんて持ってもらわなくてもいいんですけど・・・

 それとシスターパトリ、既にあなたはアトルまでの道中の態度を見ても、俺に慣れましたよね。敬意とやらは胸の奥すぎて、どこかに失くしてしまったのではありませんか?別にいいですけど・・・


「ありがとうございます、シスターパトリ。あなたのおっしゃる通りです。愛の女神カミリッカ様の期待に応えられるよう、トキオセラ様への敬意を胸の奥にしまい、一青年として接することができるよう努力いたします」


 隣でシスターニモも、うんうんと頷いている。まあ、普通に接してくれるのは嬉しいのだけれども、努力のベクトル間違ってない?


「と、いうことで、トキオさん、どうぞ!」


 なんちゅうフリすんねん!


 俺が話をする前に散々ハードル上げてくれて・・・この人、わざとやってない?


 見てみなさいよ、あの期待する眼差しを・・・滅茶苦茶話しづらいんですけど・・・





 結局、セラ教会で話したのと同じく、俺がこの世界に来た理由やカミリッカさんと魔獣の大森林最奥地で訓練した経緯を話した。途中で何度も床に膝をつこうとするのを止め、話は何度も中断したが、ようやくすべてを話し終わる。

 話し終えて一つ、声を大にして言いたいことがある。シスターパトリ、なんで一緒に跪こうとする。あんた、二度目だろ!


「トキオセラ様、お教えください。恥ずかしながら、私にはわからないのです。愛の女神カミリッカ様に、なぜ私共が選ばれたのか、私共に何ができるのかが・・・」


 カミリッカさんも、その辺は話しておいてくださいよ。妹の時もそうだったけど、女神様って言葉足らずなんだよなぁ・・・


「その前に、俺のことはトキオでいいですよ」


「畏まりました。では、トキオ様とお呼びさせていただきます」


「いや、トキオでいいですって。敬語も必要ありません」


「そうはまいりません。お言葉ですが、トキオ様がこれまでに成してきた功績は、一人の人間として尊敬に値します。慈悲の女神チセセラ様、愛の女神カミリッカ様との関係がなくとも、失礼な態度で話すことなどできません」


 そう言われちゃうとなぁ・・・様付で呼ばれるのは好きじゃないが、アトルの街にいる間だけだから我慢するか。


「・・・わかりました。それでは、一つ気になっていたことがあるのでお聞きします」


「はい、何なりと」


「デラクール神父は元料理人だったと言っていましたが、「料理」のスキルはお持ちですか?」


「はい。私も隣に座るニモも「料理」のスキルは持っております。私がレベル9、ニモがレベル6です」


 マジか!レベル9は凄い。それに、シスターニモまでレベル6とは・・・これは間違いなくカミリッカさんの意図が介入している。あれを出してみるか。


「これを見てください」


 マジックボックスから、俺がカミリッカさんから貰った誕生日プレゼント「カミリッカのレシピ」を取り出す。


「申し訳ありません。無知な私には表紙に書かれた文字が読めません。ですが、その本が途轍もなく神聖な宝書であることはわかります」


 そうか・・・これは日本語で書かれているから、この世界の人には読めないよな。っていうか、宝書って何だよ!この世界の人は宝書って言葉が好きだなぁ・・・


 マジックボックスから紙とインク、上製本用の糸と表紙の素材に使われている革を取り出す。


「創造」


「「「なっ!」」」


 目の前でスキルを使ってもう一冊、今度はこの世界の文字で翻訳された「カミリッカのレシピ」を作った。デラクール神父とシスターニモが驚くのはわかるが、どうして何度も見ているシスターパトリまで驚くよ・・・


「い、今のは?」


「俺が持つ「創造」のスキルで翻訳したコピーを作りました」


「「創造」スキルとは・・・まさに、神の如きスキル・・・」


 いや、驚くところそこじゃないから。ちゃんと表紙見てよ。


「表紙を読んでください」


「なっ、な、な、な、なんと、これは!」


 いいリアクションありがとうございます。隣のシスターニモが大きく口を開けたまま小刻みに震えていますが、大丈夫ですか?


「これは、俺がカミリッカさんに頂いたレピシ本です。カミリッカさんは料理が得意な方でした」


 原本をマジックボックスにしまい、代わりに四つ箱を取り出す。旅の途中で何度も見ているシスターパトリが嬉しそうに声をあげた。


「あっ、お弁当ですか。もうお昼ですしね。お二方共、頂きましょう。トキオさんが持っているこのお弁当は物凄く美味しいんですよ」


 相変わらず、ノー天気なシスターパトリは放っておいて対坐する二人に目をやると、この弁当の正体がわかったようで、二人共ソファーの背もたれまでのけ反っていた。


「こ、ここ、こ、これは、愛の女神カミリッカ様が・・」


 こ、ここ、こ、って、鶏みたいになっていますよ。まあ、カミリッカさんに選ばれた二人からすれば、この反応も当然か。


「はい。これは俺が修行を終え、魔獣の大森林最奥地を出る時にカミリッカさんが持たせてくれたお弁当です。まだ沢山ありますので、一緒に食べましょう」


「め、滅相もございません!愛の女神カミリッカ様が弟子であるトキオ様に持たせたお弁当を私共が頂くなど、罰当たりも甚だしい。許されることではありません!」


 それを言ったら、俺の隣で既に箸をつけている暴食シスターはどうなるのですか・・・


「一カ月以上かかる予定だった魔獣の大森林を結果的に数日で抜けることができたので、沢山余っています。どうぞ、遠慮なさらず。それに、お二方にはカミリッカさんの味を知る義務があります」


「「・・・・・・・・・」」


 無言で恐る恐る箸を手に取る二人。セラ教会に始めて行った時もそうだったが、いちいち恐縮されては話が進まない。


「あっ、デラクール神父、それは当たりの焼き肉弁当ですよ。まあ、私の幕の内弁当は大当たりですけど」


 少しは空気を読みなさい。さっさと食べてもらわないと話が進まないでしょうが!


 恐縮しながらも、ようやくお弁当の蓋を開けた二人から、恐ろしい物を見るような眼差しを向けられるシスターパトリだが、そんなことは意に介さず、パクパクとおかずを口に運ぶ。二人からすれば、愛の女神カミリッカ様が作ったお弁当に当たりもハズレもない。すべてが尊きもので、大当たりなのだ。


 語らずともデラクール神父とシスターニモの目が言っている。


 シスターパトリ・・・あなたそのうち、罰が当たりますよ・・・と。


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