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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第四章 トロンの街編

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幕間 神々の女子会4

 

「安心して、知ちゃん。トキオ様はこの程度のスタンピードなんかに負けない」


「うん。わかってる」


 この程度のスタンピードに兄が負けないことは、訓練を施した夏ちゃんも力の一部を授けた私もわかっている。心配すらしていない。そう、私達は知っているから。


「どうしたの、知ちゃん?」


「ループの祈りが・・・凄くて」


 兄の強さはループも知っている。でも、それは私達ほど明確ではない。いや、明確にわかっていたとしても、ループは祈ることを止めないだろう。ループはそういう人間だ。だからこそ、私は彼女を選んだのだから。


「ループって、たしか知ちゃんのところの教皇だよね?」


「ううん。ループは、けして自分のことを教皇とは言わない。いつも教会の責任者としか言わないの。私も、それでいいと思っている」


 初対面の相手にはループとだけ名乗る。マザーループとも名乗らない。マザーと呼び始めたのは教会の孤児達。それを聞いた周りの大人達も彼女をマザーループと呼ぶようになった。子供達は純粋にループのことを母と慕って、大人達は教会のトップで在りながら役職名を名乗らないループを便宜上そう呼んだ。


「私はトキオ様の様子を窺うようになってからの彼女しか知らないけれど、実は前から思っていたことがあるの」


「なに?」


「彼女、トキオ様と似た雰囲気を持っているって」


「そこに気づくとは、流石夏ちゃん!」


 ループを見つけた時の第一印象が、まさにそれだ。私は迷わず彼女を選んだ。




 女神が誕生しても、それがすぐ世界中の人々に認識される訳ではない。この世界最初の女神であれば尚更だ。だから、女神は顕現する時間を選ぶことができる。修行を終えた後、神託を授ける人間を選ぶため私は時を遡った。

 誰にでも神託を授けられる訳ではない。神の声を聴くには高い神力が必要になる。神力は基本ステータスに表示されない。神のみぞ知ることのできる力。比較的高い数値を持つのは聖職者や信仰心の厚い者。神に触れる機会の無かった者でも、徳を積み高い神力持つ者は稀だが居る。

 いつの時代にも美しい魂を持った素晴らしい人間は存在した。しかし、決められない。一年、また一年と時を遡り、二十五年目で遂にループと出会う。その美しい魂は、初めて会うのにどこか懐かしい雰囲気があった。一目惚れした。彼女と出会った時点で、彼女以外の選択肢はなくなった。


 二十五年の時を遡らなければループを見つけられなかった。このままでは近い将来、彼女は命を落とす。若いループの肉体に病気は見られない。王都の教会でシスターをしている以上、即死でない限り治療もできる環境なのに。

 できるだけループを王都から遠ざける必要がある。布教活動などどうでもいい。ループの命を守るのが最優先だ。辺境の地でかまわない。創造神様に神の力を使う許可を頂き、ループをトロンまでいざなった。




「トキオ様も彼女はお気に入りみたいだしね」


「そりゃ、私が選んだ人間だもん・・・」


 私は二十五年もの時を遡りループを見つけることができた。しかし、女神となった夏ちゃんは神託を授ける人間を見つけるのに時を遡っていない。それは兄を鍛える為、この世界へ降り立ったから。女神になる前のカミリッカを知っている人間が居るのに、時を遡り神託を授けることはできない。


「夏ちゃん、ごめんね。神託を授ける人間を探すのに時を遡ることをできなくして・・」


「それ以上言ったら、いくら知ちゃんでも怒るよ!」


「でも・・・」


「言っておくけど、私を知っているのはトキオ様だけだから、創造神様からも特別に時を遡ってもいいと許可はもらっていたのよ」


「えっ、じゃあなんで・・・」


「そんなの決まっているじゃない。トキオ様と過ごした一年があったから私は女神になれたの。私はそこから始めたかった。それに、もし時を遡って私と愛の女神カミリッカが別人だとトキオ様に誤解されたら嫌じゃない」


 夏ちゃんは女神となった今でも兄をトキオ様と呼ぶ。前世で命を救われ、この世界で心を救われた夏ちゃんにとって、兄は永遠のヒーローだ。


「それに、時を遡らなくても最高の人材を見つけたから」


「たしかに。あんな人間、二十五年時を遡った私も見たことない。相当レアだね」


「でしょー。美しい魂は勿論だけど、あの能力だけはどうしても欲しかったの」


「フフフッ、魂胆は見え見えだけど」


「ちょっと、創造神様には内緒にしてよ」


「・・・多分、バレていると思うよ」


「嘘・・・」


「当り前じゃん。私でもわかるのに、創造神様が気付かない訳ないでしょ」


「マジか・・・怒られるかなぁ?」


「何も言われていないのなら大丈夫でしょ。ダメならとっくに怒られている筈だから」


「そ、そうよね。あっ、始まりそうよ!」


 上空に真っ黒な雲が集まる。兄が発動した魔法だ。


 戦闘の開始を予見したかのように、ループの祈りが強く私の脳裏にこだまする。


 安心してループ。あなたの祈りはちゃんと届いているから。優しい創造神様の加護と過保護な鬼教官の訓練で、兄はゴリゴリに強化されているから大丈夫。勿論、私の加護も上乗せしてある。こんなスタンピードなんて敵じゃないわ。


「行けー、トキオ様!」


「やっちゃえ、お兄ちゃん!」


 無数の雷が大地を揺らし、大規模な戦いが始まった。




 神々の女子会は続く・・・


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