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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第四章 トロンの街編

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第三話 妹よ、俺は今動物と会話しています。

 

 遂にこの日が来た。


「鶏はこちらの小屋へ、山羊はあっちです。馬は馬房へお願いします」


 オスカーが手配してくれた動物の搬入だ。俺のうしろでは飼育を希望した子供達が沢山の動物に目を輝かせている。


「早速今日から面倒をみてもらうよ」


 飼育部の部長は年長組で料理人を目指すクーニャ。彼女の場合は動物の世話よりも鶏の卵や山羊のミルクなど食材に興味があるようだ。


「ストレスが掛かる環境だと卵やミルクの出にも影響が出る。ただ可愛がるだけじゃなく清潔な環境や適量な餌に適度な運動、日々それらを意識して飼育するように」


「はい」


 小さな子供達が動物に興奮する中、部長のクーニャには命を預かる者としての自覚を持ってもらうためにも厳しく接する。


「とりあえず今日は俺が掃除や餌のあげ方を実演するから見て学んでくれ。わからない事や質問があれば随時受け付ける」


 餌を持って鶏小屋に一人で入る。騒いでいた子供達もクーニャに注意され、皆で餌の与え方を見学する。


 コッケ、コケコ、コケ、コケ、コケッコ、コケ、コケコッコー、コケ・・


 鳴いておる、鳴いておる。元気があってよろしい!

 さて、試すか。まずはどんな罵詈雑言にも耐えられるよう「不動心」を強く意識。よし、準備完了。


「自動動物語翻訳」


『『『めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ、めしくれ‥』』』


 うーん・・・鶏と意思疎通は難しそうだな。


「ピ、ピィー(黙らんか!トキオ様の御前だぞ)」


『・・・・・・・・・』


『ちょ、コタロー、何やってんだよ!鶏が一斉に沈黙しちゃったじゃないか。子供達に怪しまれるだろうが』


『馬鹿どもが余りにも失礼な態度だったので・・・』


『鶏に何を求めているんだよ。普通に鳴いていいって伝えてくれよ』


『わかりました』


 まったく、うちの聖獣様は・・・ストレスで卵を産まなくなったらどうするつもりだ。


「ピィ、ピィピ、ピィー(鳴いてよし!)」


 コケ・・コケッコ・・・コケ・・・


 もの凄く遠慮しながら鳴いている・・・とっとと餌をあげて小屋を出よ。多分、コタローが視界から消えない限り元に戻りそうもない。



 気を取り直して、お次は山羊小屋。こちらは小屋だけでなく、柵でとり囲まれた放牧ゾーンもある。山羊は植物なら大概のものは食料になるが、健康面も考えて穀物や野菜を混ぜた餌も与える。餌が十分に行き渡っていないと毒草まで食べてしまうので要注意だ。あと、山羊は飽きっぽい性格らしく、同じ物ばかり食べさせられるのを嫌うらしい。


「飲み水は餌の時一緒に変えてあげてね。あと、餌当番の人はちゃんと五頭居るか毎日チェックするように」


「「「はーい」」」


 メェェ、メェー、メエェェェ、メェー、メェェェ・・


 こちらも元気に鳴いておるわ。鶏に比べれば知能も高い筈。


「自動動物語翻訳」


『ごはんちょううだーい、ごはんおくれー、ごはんおくれよー、あそぼー、ごはんちょうだーい‥』


 まあ、こんなものか。初対面だし・・・


『・・・・・・・・・』


 あれ?急に黙った・・・って


『おい、コタロー!お前威圧したな』


『動物とはいえ、トキオ様に対して最低限の接し方というものが・・』


『そういうのいいから!』


『しかし・・・』


『しかしじゃない!そもそも、ここに居る動物たちは俺の為じゃなくて子供達の為に居るの。わかった?』


『・・・はい』


『まったく。これじゃあ子供達に色々説明できないから、お前ちょっと散歩にでも行っていろ』


『・・・わかりました』


 しぶしぶ俺の肩から飛び立つコタロー。ありゃ、病気だな・・・頭では理解していても体が反応しちゃうのだろう。



 その後は注意事項、卵やミルクの扱い等を説明。しばらくは俺が中心になるだろうが、いずれは子供達だけで飼育できるようになってももらう。教師に頼るのは何かトラブルが起きた時だけが理想だ。


「頼んだぞ、クーニャ」


「はい。出来るだけ早くトキオ先生の力を借りなくても飼育できるよう、みんなで頑張ります」


「みんなもクーニャの言うことをよく聞いて、動物のお世話をしてあげてね」


「「「はーい!」」」


 言葉と表情にやる気が溢れている。子供達のこういった姿を見られるのは、教師として素直に嬉しい。




 飼育部はここまで。馬に関しては冒険者志望三人の管轄。冒険者になると馬に乗ることもあるだろうから、乗馬の練習も兼ねて世話をさせる。

 飼育部の子供達と違い、三人は特別に動物が好きという訳ではない。さらに、鶏や山羊と違い、体も大きな馬。キャロが若干引いている。


「初めに注意しておく、馬のうしろには絶対に立つな。必ず正面か横から近寄れ。理由はわかるな?」


「蹴られるからです」


 代表してノーランが答え、キャロがうんうんと首を上下させる。


「そうだ。馬の脚力は人間の比じゃないから、蹴られたらただでは済まない。十分に注意するように」


 馬の性格も知っておきたいので、三人は一旦馬房の外に待機させ俺だけ入る。さてと、馬とは会話が成立するかな?


「自動動物語翻訳」


『よう、調子はどうだ?』


『絶好調だぜ。あんたが新しい飼い主か?』


 おおー、会話成立。妹よ、見ているか、俺は今動物と喋っているぞ!


『ああ、世話は外に居るあいつらにさせる。仲良くしてやってくれ』


『任せろ。食事は良質なものを頼むぜ』


『了解だ』


 いい!凄くいい!「自動動物語翻訳」最高じゃないか。この調子で二頭目行ってみよー!



『よう、調子はどうだ?』


『上々です。この家も悪くありません。気に入りました』


『それはなによりだ。あとで外の奴らに食事を運ばせる。よろしくしてやってくれ』


『わかりました。こちらこそ、よろしく』


 面白い!一頭目と全然性格が違う。動物と話すのはこんなにも楽しいのか。三頭目はどんな奴だ。わくわくする!



『よう、調子はどうだ?』


『快調です。貴方様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?』


『お、おう。俺はトキオだ』


『トキオ様ですね。何卒宜しくお願い致します。私のことはいかようにでもお使いください』


 なんだこいつ。他の二頭に比べてえらくへりくだっていないか?


『ほお、ようやくトキオ様の偉大さがわかる者が現れたか』


『こ、これは聖獣様!お初にお目にかかります』


 コタローの奴、何食わぬ顔をして俺の肩にとまりやがって。散歩に行く振りをして「隠密」まで使って馬房に先回りしていやがったな。

 これって、命令無視じゃない?俺、なめられている?ま、いっか。聖獣様だし。


『ところでおぬし、純粋な馬ではないな。少しだが魔獣の血が混ざっておる』


『やはり、そうでしたか。何代か前にそういった交わりがあったのかもしれません。他の馬に比べ体力や走る速度に違いがある理由がようやくわかりました。教えていただき、ありがとうございます』


 身体能力だけでなく、知能も高いのだろう。他の二頭に比べて会話がスムーズで言葉数も多い。


『お前達をここへ呼んだのは、馬房の外からこちらを見ている子供達に乗馬を教える為だ。身の回りの世話もあの三人にさせる。問題ないか?』


『はい、かしこまりました。他の馬にも私の方から言って聞かせます』


『頼むぞ。生活面で要望があれば何でも言ってくれ。出来る限りのことはする』


『ありがとうございます。では、早速ですが一つだけお願いしたき儀がございます』


 お願いしたき儀?この言い回しは良くない予感がするぞ・・・


『聞こう』


『私に名を下さい。主様に私のすべてを捧げます』


 重い、重い。すべてを捧げるってなんだよ!


『お前が欲している名とは、愛玩動物としての名か、魔力を通じ合わせた従魔としての名か、どちらだ』


 飼われている動物として名が欲しいのならいくらでも付けてやる。子供達に付けさせてもいい。だが、従魔契約を伴う名付けなら話は別だ。


『勿論、後者です』


 ですよねー。お願いしたき儀だもんねー。参ったなぁ・・・


 俺が返答に困っていると、馬がスッと首を突き出す。


『私ごときが失礼致しました。どうぞ、首をお刎ねください』


 なんでそうなるよ、まだ何も言ってないでしょうが!


『トキオ様、その者の処分、しばしお待ちください』


 いや、処分しませんから!

 しかし、コタローにしては珍しい反応だな。いつもは無茶苦茶な理由で残虐なことを平気で言うくせに。


『おぬし、何故トキオ様の僕になりたいのだ?』


『主様がこちらへ近づいてこられたとき、今迄に経験したことのない聖なるオーラを感じました。目の前でその尊き御姿を拝見した瞬間、私はこの御方の役に立つために生を受けたのだと確信に至りました。僕として主様のお役に立てないのであれば、せめてこの身を食材として捧げたく存じます』


 食べねーよ!前世では馬肉を食う文化はあったけれど、俺は食べたことねぇし。貧乏でしたからね!


『トキオ様。この者は我々とは少し違った索敵能力を持っているようです。風属性も持っておりますので何かと役に立つかと。トキオ様に比べれば移動速度は遅いですが、見た目は普通の馬と変わりませんのでトキオ様の能力をカモフラージュするのにも使えます』


 なんだよ、コタローの奴。今日はえらく饒舌だな・・・


『勿論、この者が僕となったとしても、私がトキオ様にとって一番の僕であることに変りありませんが、僕の末席に加えてやっても良いかと』


「・・・・・・・・・」


『・・・トキオ様?』


『なあ、コタロー』


『はい』


『・・・後輩、欲しいの?』


『な、なな、何をおっしゃいますか!私にそのような邪な考えはございません。この者であれば、私には遠く及ばないまでも多少はトキオ様のお役に立てるのではないかと思い進言させていただいたまでです。べ、別に、最近、サンセラ殿に後輩が出来てなにやら楽しそうにやっているなどとは思ってもおりませんし、聖獣である私が他者を羨むようなこともございません。あくまでもトキオ様の利益に繋がればと・・』


 自分のキャラも忘れて必死にまくし立てるコタローの前にそっと手のひらを見せ黙らせる。


『もういいから。わかったよ、寂しかったんだな』


『違います!』


『わかったから』


『わかっておりません!私はあくまで今後のトキオ様の行動に役立つと・・』


 もう一度コタローの前に手のひらを見せ黙らせる。


『はい、はい。そういうことにしておくよ』


『ぐぬぬ・・・』


 今日のコタロー可愛いな。「ぐぬぬ」とか言っちゃって。


 少し脱線したが、改めて従魔契約希望の馬に向き直る。


『と、いう訳で、今だともれなくこの面倒くさい先輩も付いてくるけれど、俺と従魔契約する?』


『な、私は面倒くさい先輩などでは・・』


 はい、三度目の手のひらストップ。今交渉中だから黙っていてね、コタローちゃん。


『よろしくお願い致します。僕の末席に加えていただけるだけでなく、聖獣様の後輩としていただけるのであれば、これに勝る喜びはございません』


『だってさ、コタロー』


『フン!せいぜいトキオ様の足を引っ張らぬよう、精進するのだぞ』


『聖獣様・・いえ、コタロー様。御言葉添え、誠にありがとうございました。この御恩は生涯忘れません。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します』


『良い心掛けだ、励むがよい。あと、私は面倒くさい先輩などではないからな。トキオ様と従魔契約をすれば私とも念話が使えるようになるから、わからないことがあれば何時でも聞いてくれ。なんなら、私のことはコタロー先輩と呼んでもよいのだぞ』


『畏れ多い。聖獣であられるコタロー様を軽々しく先輩などとは呼べません』


『そ、そうか・・・』


 微妙な距離感・・・まあ、これから長い付き合いになるだろうから、仲良くなれるといいね。さてと、それでは・・・


『希望する名はあるか?』


『頂けるのであれば、ネズミの糞だろうが死体にたかる蠅だろうがかまいません』


 なにそれ。なんか、前も聞いたことあるぞ。異世界キャグなの?まあいいや、折角だからコタローに続いて忍者シリーズでいくか。


『サスケ。今日よりお前の名はサスケだ』


『ありがとうございます。無知ゆえ言葉の意味はわかりませんが、かっこいい名前ですね』


『おっ、このかっこよさがわかるか』


『はい、なにやら主様を背に暗闇を疾走するような響きを感じます』


『いいねー。俺達と通ずるものがありそうじゃないか。なあ、コタロー』


『はい。時間がある時に私からサスケという名の由来を教えておきます』


『是非、お願いいたします』


 サスケ、その言葉あとから後悔するなよ。多分、物凄く長い話になるぞ。


『当面の仕事は、馬房の外からこちらを覗いている三人の乗馬技術向上だ。子供達が怪我をしないよう細心の注意を払ってくれ。任せたぞサスケ』


『お任せください。お坊ちゃま、お嬢様に怪我をさせることなく、馬を扱えるようにしてみせます』


 恐る恐る馬房を覗くノーラン達。孤児の三人が馬にお坊ちゃま、お嬢様と呼ばれているなど想像もつかないだろう。



 馬たちのリーダーであるサスケが従魔となったことで安心して乗馬訓練をおこなえる。馬の性格も鑑みて、最初に話した馬をキャロ、次に話した馬をアルバ、サスケをノーランの担当にした。サスケ以外の二頭にはキャロとアルバに名前を付けさせる。二頭には魔獣の血は流れていないので名前を付けても従魔契約にはならない。


 一通り世話の仕方を説明して本日は解散。中庭でマザーループとシスターパトリと共に花壇を作っている子供達の楽しそうな声が聞こえる。



 ♢ ♢ ♢



「コタロー、お前随分と馬以外の動物を威嚇していたなぁ」


『奴らは知能が低いせいでトキオ様に無礼を働く可能性がありますから。己がいかに矮小な存在か知らしめておく必要があります』


「お前さぁ、妹の命令で俺のところに来たんだよなぁ」


『はい。女神様より神託を賜りました』


「そうだよな。ちなみに、妹がもし異世界に行けたら一番欲しがっていた能力を知っているか?」


『いえ、存じ上げません』


「動物と話す能力だ」


『そうだったのですか』


「そうだったんだよ。だからさ、俺が異世界に来て創造神様に頂いたスキルの中に「自動動物語翻訳」があったときは嬉しかったよ。妹の代わりに動物と話すことができるからな」


『そのようなことが・・・』


「だからさ、俺は動物を探していたんだよ。多少の罵詈雑言を受けようとも、犬や猫と話している姿を妹に見せてやりたくて」


『・・・はぁ』


「それなのに街で一度も動物に出くわしたことがない。犬や猫どころか、鼠すら見たことがないんだ。俺はこの世界には極端に動物が少ないのかなって思っていたんだけれど、簡単に動物は手に入ったし、例え話でもよく鼠の糞とか出てくるじゃん。おかしいよなぁ」


『・・・・・・・・・』


「・・・・・・・・・」


『・・・・・・・・・』


「・・・犯人、お前だな」


『あっ、あの・・・そ、それは・・・』


「いやな、俺はいいんだよ。正直、俺も動物と話すのは楽しみだったが、俺の楽しみを奪われただけなら目を瞑ることもやぶさかじゃない。でもさぁ、慈悲の女神チセセラ様の楽しみまで奪うのは拙いんじゃないか。コタローにとっては直属の上司みたいなものだろ?」


『で、ですから・・・それは、その・・・トキオ様の為に良かれと・・・・』


「あれー、前に善悪の問題じゃないとか言ってなかったっけ」


『ト、トキオ様・・・』


「コタロー」


『・・・はい』


「謹慎三日」


『そんな、ご無体なー』


 妹よ、俺は今日初めて従魔に罰を与えました。


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