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第四話 妹よ、俺は今スキルを選択しています。

 

 今俺は創造神様に渡された一冊の本と格闘している。


『スキル大全集』


 ・・・タイトルはあれだが、これから行く異世界にある全スキルが網羅された一冊。この中から選んだスキルを一つだけもらえるのだ。スキルは全部で108。奇しくも人の煩悩と同じ数。読み逃さぬよう一言一句熟読する。


 きっとこの本は神界にしかない物だろう。

 自分が取得するスキルを選ぶと同時に、選ばないスキルの中で危険なものは記憶しておく必要がある。誰かが持っている可能性のあるスキルなのだ。


 スキルは多岐にわたる。「歌唱」や「芸術」といった文科系のスキルから「身体強化」や「怪力」「俊足」などの基本ステータス強化系、「経験値2倍」や「魔力増加」などの成長促進系、「剣術」や「格闘」などの戦闘技術系、「商人」や「医術」などの職業系、「暗殺」や「毒作成」なんておっかないものまである。


 ここで忘れてはならないのが、スキルは努力次第で取得できるということだ。俺が既に持っている「自動翻訳」と「鑑定」は創造神様組合から貰ったものだが「交渉」と「料理」は自分で身につけたもの。

 選ぶのなら取得が不可能なものか、極めて難しいものにすべきだ。


 もう一つ、創造神様から頂いた加護も考慮する必要がある。

 成長促進系や状態異常無効化のスキルは全て「創造神の加護」の下位互換に他ならない。


 それらを考慮して候補を四つに絞った。



「即死無効」

 一撃で死に至るいかなる攻撃を受けてもスキルレベルに応じた体力が残る。使用制限一日一回。


「思考加速」

 魔力を消費しスキルレベルに応じて思考のスピードが速くなる。体感的には周りの時間が遅くなったように感じる。使用制限なし。


「創造」

 魔力を消費しあらゆる物を創造できる。ただし材料を必要とする。自分の知識に無いもの、構造を理解していないものは創造できない。使用制限なし。


「忍者」

 スキルレベルに応じて忍術を使える。忍術の練度は基本ステータスの影響を受ける。魔力は消費しない。使用制限なし。



 命を重んじるのであれば「即死無効」一択だが使用制限がネックだ。一度攻撃を耐えても追撃されてはそれまでだしな。


 混乱を回避するなら「思考加速」は有用だが自分が強くなるわけではない。思考時間が長く取れたからと言って必ず答えが出るとも限らない。


 便利さを追求するなら「創造」は究極のスキルに近い。ただし材料が必要な為、本当に使えるスキルかは賭けになる。自分が創造したい物の材料が異世界にある保証はない。


 そして「忍者」はかっこいい!



 さらなる熟考を重ね、ついに取得スキルを決めた。


 初めに外したのは「思考加速」

 決め手は「創造神の加護」にあった状態異常無効化だ。混乱は状態異常に含まれている可能性が高い。


 次に外したのが「即死無効」

 喉から手が出るほど欲しいスキルだが、創造神様組合からもらった「鑑定」レベル10を信じよう。「鑑定」の中には「索敵」がある。敵を察知できる筈だ。

 スキル大全集で「暗殺」などの物騒なスキルを見て臆病になり過ぎていたかもしれない。前世で即死だったのが影響したかも。


 そして最後に究極の二択「創造」と「忍者」

 俺は日本人だ。世界で最も忍者のかっこよさを知っている民族と言っても過言ではない。忍者はかっこいい。圧倒的にかっこいい。まさに男のロマンだ。だが、断腸の思いで「忍者」を外す。

 忍びとは・・・陰に生き、陰に死ぬもの。本来の目的、充実した人生とは何か違う気がする。



「決めました。「創造」にします」


「わかりました。では、早速付与しますね」


 創造神様からスキル大全集を受け取って相当の時間が経つ。正確にはわからないが体感で二・三時間は待たせてしまったのではないだろうか。

 その間、創造神様は物音一つ立てることなく待ってくれた。


 やさしい神様だ。知世の師がこの世界の創造神様で本当に良かった。


「えい!」


 可愛らしい掛け声と同時に俺の体が淡い光に包まれる。


「完了です。上位鑑定で確認してください」


 言われたとおりステータスを確認すると、スキルの欄に「創造」1が追加されていた。


「「創造」はレベルに応じてより精密に具現化ができるようになります。どんどん使ってスキルレベルを上げてください。ただし、魔力を大量に消費しますので魔力枯渇には気をつけてくださいね」


「はい。創造神様から頂いた大切なスキルです。きっと極めてみせます」


「その意気です。さて、いよいよ旅立ちの準備が整いました」


 ここは神界。一度ここを出れば人間の俺がこの場に帰ってくることはできないだろう。妹の師であり俺の大恩人である優しい創造神様の御姿を決して忘れないようしっかりと脳裏に焼き付ける。


「それでは、良い人生を」


「はい。行ってまいります」


 ここに来た時と同じように視界が真っ白になる。

 姿は見えなくなったが創造神様の方に深々と頭を下げ異世界の地に立つその時を待つ。


 最後に創造神様の声が聞こえた。


「向こうに異世界ナビゲーター兼戦闘指南役を準備しておりますので指示に従ってくださいね。まあ、当分は修行の日々になると思いますが」


「えっ」


 修行って、何するの・・・


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