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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第三章 学校編

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第十二話 妹よ、俺は今腹を立てています。

 

 部屋に入るとマザーループは落ち着いた表情で侵入者と対峙していた。手には一本のナイフ。これは侵入者と戦う武器ではない。いざとなれば自ら命を絶つ道具だ。


「結界」


『トキオ様、こちらは片付きました。結界破りのスキルを持った者はいません』


『わかった。しばらくシスターパトリの傍に居てやってくれ』


『御意』


 マザーループの安全を確保し「上位鑑定」で侵入者の能力を探る。一人B級冒険者程度の力を持つ者は居るが、俺の結界を破って侵入できるほどのスキルを持った者は居ない。


 どういうことだ。どうやって侵入した?


 睨み合いの中、「不動心」を意識しもう一度部屋の中を落ち着いて見渡すと床に不自然な膨らみを発見した。まさか、あいつか?


 腰の小太刀「雷鳴」に手を添え一瞬で一番後ろにいる男の横に移動し意識を刈り取る。


「グラウンドキーパー」


 盛り上がった床が平らになると、リーダーらしき男の顔に焦りの色が浮かんだ。


 やはりそうか。意識を刈り取った男が持っていたスキルは「発掘」。俺も持っているスキルで地下から侵入したのだ。結界にこんな初歩的な攻略法があるとは。学校の方も対策をする必要があるな。


「マザーループ、もう大丈夫です。結界で安全を確保しましたので、あとはお任せください」


「ありがとうございます。トキオさん、くれぐれも・・」


「わかっています。多少手荒なことはしますが、心得ております」


 俺の余裕な態度が気に食わなかったのか、うしろの男が大声で威嚇する。


「てめー、なめてんじゃ・・がっ」


「孤児院の子供達が起きるかもしれないから大きな声を出すな」


 一瞬で無力化するとリーダー格の男が目を見開いた。

 残るは二人。リーダー格の男が剣で牽制して時間を稼ぐ中、うしろの男がぶつぶつと呟き始める。


「我が魔力を対価に願う。熱く燃え盛る・・がはっ」


「室内で火属性魔法なんて使うな。火事になったら大変だろうが」


 またも一瞬で仕留める。剣で牽制しているのにもかかわらず何度も素通りされ次々とうしろの仲間が無力化されていくと、リーダー格の男は剣を床に置いた。


「二度とあんた達には手を出さない。見逃してくれ」


「駄目だ。お前の所属している組織と依頼者の名を言え」


 見逃してもらえると思っているのか?それは無いな。腐ってもB級冒険者相当の力を持った男だ、どうせくだらない策でもあるのだろう。


「そんなことを吐いたら俺は殺されちまう」


「安心しろ、お前が所属する組織は今日壊滅する。依頼主も同じだ」


 許す訳がない。マザーループにナイフを握らせたお前達は絶対許さない。


「拘束する。頭の後ろで手を組め」


「へい、へい」


 あえてゆっくりと近付く。仕掛けてくるならここしかない。


 マジックボックスから拘束する縄を物色する振りをすると男が革袋に手を入れて何かを取り出す。それを俺目がけて投げようとしたので男の周りを結界で囲った。


「ぎゃぁ!」


「馬鹿か。お前は既に結界で囲まれている」


「熱い!顔が焼ける!」


 顔の皮膚から煙を上げ焼けた匂いがする。硫酸でも投げつけようとしたのか、そんな危険物を持ち歩くなよ。


「大変。すぐに回復魔法をかけますので・・」


 まったく、この人は・・・


 こちらに来ようとするマザーループを手で制して俺が回復魔法をかけてやる。


「ヒール」


「ハァ、ハァ、ハァ」


 顔の火傷は治っているが精神的にまいったのか、リーダー格の男は肩で息をして座り込む。


『サンセラ、侵入方法がわかったから孤児院は大丈夫だ。シスターパトリの部屋でコタローが無力化した男達を受け取ってこっちに来てくれ』


『わかりました』


「さて、もう一度聞く。お前の所属している組織と依頼主の名は?」


「・・・・・・・・・」


 殺されることは無いと高を括ったのかリーダー格の男はだんまりを決めこんだ。黙秘権など無いと教えてやるしかないな。


「マザーループ、すぐにサンセラが来ます。その後この男と外に行ってきます」


「その方を外に連れて行って何を?」


「マザーループは知らない方がいい。教会でできない事ですから」


 恐怖を煽るようにゆっくりとリーダー格の男に近付き首根っこを掴む。


「嫌だ。この男と二人にしないでくれ。マザー、お願いします。助けてください」


「黙れ」


 力ずくで首根っこを引っ張り立たせる。


「嫌だ。マザー、助けてください」


 縋るような眼でマザーループに訴えかけるリーダー格の男。


「トキオさん・・・」


「はい」


 ダメですよ、マザーループ。ここは俺に任せてください。


「ほどほどに」


 マザーループの言葉にリーダー格の男は顔から血の気が引く。


「マザー、マザー。助けて・・・」


「諦めろ」


「嫌だ。この男と二人にしないでください。マザー・・・」


 この期に及んでまだ口を割らない。相当組織を恐れているな。仕方ない、もう少しビビらせてやるかと思ったところでサンセラがドアを開く。


「師匠、こいつらは何処に転がしておけばいいですか?」


「ひぃ!」


「なんですか、こいつ。泣いていますよ」


「これからお仕置きだ。他の奴らは縄で縛ってから見張っておいてくれ。マザー、少しシスターパトリの部屋でお休みください。すぐ終わらせます」


「わかりました。すこし休息をとらせていただきます」


 軽く頭を下げて部屋を出るマザーループ。リーダー格の男はなんとか止めようと必死に縋りつく。


「マザー、行かないでください。ここに居てください。マザー、マザー」


「うるせー」


 サンセラに蹴飛ばされ部屋の壁まで転がるリーダー格の男。その間に頼み綱だったマザーループはシスターパトリの部屋へ。


「さて、マザーループも退室したから外に出るまでもないか。これが最後だ、お前が所属している組織と依頼主の名は?」


「・・・・・・・・・」


 ザシュ!


「ぎゃ!あぁぁぁぁ。痛てー、痛てーよー。腕を斬られた。助けてくれ!」


 なんとかマザーループに声を届けようと必死に大声を張り上げるリーダー格の男。まあ、本当に痛いんだろうけど。


「結界で防音にしてあるからどんなに大声出してもマザーループには聞こえないぞ」


 絶望的な表情を見せるリーダー格の男にサンセラが追い打ちをかける。


「師匠、腕を切り落とすぐらいじゃ喋りませんよ。こういう時は順番に顔のパーツを切り落としていかないと」


「なるほど。じゃあ、取りあえず耳だな」


「師匠、耳は切るのではなくて引き千切らなきゃダメですよ。そっちの方が痛いですから」


「わかった。それじゃあ・・」


「言う。言います」


「さっさと言え」


 遂に観念したリーダー格の男がようやく口を割る。


「イレイズ銀行だ・・・イレイズ銀行で営業をしているジャンセンって男だ」


 やっぱりあいつか。


「お前が所属している組織は?」


「それだけは勘弁してくれ。本当に殺されちまう」


「安心しろ。俺が今晩潰してやるから」


「いくらあんたでも無・・ぐふぉ」


 サンセラのボディーブローが炸裂する。いいの持ってんじゃん!


「師匠が潰すと言ったら潰れる以外無いんだよ。さっさと吐け。別にお前じゃなくても他の奴を叩き起こして聞くだけだぞ」


「・・・裏ギルド」


 ほう、比較的治安がいいと言われるトロンの街にもそんなものがあるのか。


「場所は?」


「図書館の地下だ」


 まさかの場所だな、そりゃわからん。入館料が異常に高かったのも関係ありそうだ。これは確実に貴族か役人が絡んでいる。


「よし。サンセラ、こいつの腕もってやれ」


「こうですか?」


「エクストラヒール」


 切り落とされた腕が元に戻ってリーダー格の男は驚きのあまり声を失った。


「サンセラ、ひとっ走り頼む。まず、マーカスを呼んで来い。こいつらを監視させる。次にオスカーの所に行ってここで起きたことをブロイ公爵にも伝えてくれ。そっちは慌てなくていいぞ」


「師匠は?」


「マーカスと交代したらコタローと裏ギルドを潰しに行く」


「ええー、私も連れて行ってくださいよー」


「サンセラが来てもやること無いだろ。ここに居てやってくれ。その方がマザーループとシスターパトリも安心する」


「・・・わかりました。でも、次はコタロー様じゃなくて私の番ですからね。次も連れて行ってくれないとコタロー様は贔屓されていると駄々こねますよ」


「わかった、わかった。早く行け」


「はーい。とりあえずマーカスを呼んできますね」


「ああ、頼む」


 まったく、何百年も生きているのに子供みたいに駄々こねるとかやめてくれ。なんか俺の周りそういう奴多くね?




 サンセラが教会を出て十五分後マーカスが駆けつける。


「師匠!」


「おお、寝ているところを起こして悪いな。しばらくすればオスカーが衛兵を連れてやって来るから、それまでの監視を頼む」


 襲撃の詳細を話し始めると拘束された男達の中、唯一意識のあるリーダー格の男がブルブルと震え始める。


「マ、マーカス ハルトマン・・・」


「んっ、お前ら知り合いか?」


「こんな男、知りません」


 マーカスは名前の売れたS級冒険者だから裏ギルドの連中が知っていいて当然か。それにしても随分と恐れられているじゃないか。やるじゃん、マーカス。


「どうして、S級冒険者のお前が・・・」


 怒りの感情を隠すことなくリーダー格の男の髪を掴み上げるマーカス。


「弟子が師匠に呼ばれて駆けつけるのは当然だろう。お前達は誰を敵に回したのかわかっているのか?」


「誰って・・・」


「この御方は私など足元にも及ばない世界最強の冒険者、トキオ セラ様だ。この御方を敵に回すのなら、最低でもドラゴン十頭くらいは連れてこい。それでも勝てるとは思えんがな」


「ひぃ、ば、化物・・・」


 失礼な、誰が化け物だ。あと、マーカス。ドラゴン十頭は俺でもきついぞ。


「師匠。話の続きですが、こいつらの依頼主はわかりましたか?」


「ああ、イレイズ銀行に雇われた裏ギルドだ」


「裏ギルドですか・・・トロンの街では聞いたことがありませんね」


 そこが謎なんだよな。俺もトロンの裏ギルドなんて聞いたことがない。名の売れた犯罪組織なら一度や二度は耳にしてもおかしくないし、ギルド長やブロイ公爵からも話が出る筈だ。


「マーカス。オスカーが来たらブロイ公爵に伝言を頼む。イレイズ銀行はそちらにお任せするので即座に行動してもらいたい。あと、裏ギルドのアジトは図書館の地下にあることが判明した。今回の件に関与している者には貴族、役人など身分に関わらずしっかりと調査しててもらいたい。マザーループとシスターパトリを手に掛けようとしたイレイズ銀行に対してトキオは烈火のごとく怒り狂っていると付け加えておけ」


「わかりました。それで、師匠はどちらに?」


「ちょっと、裏ギルドを潰してくる」


 声こそ荒げていないが、普段謙虚なトキオの言葉の端々からマーカスは怒りを感じ取る。


『行くぞ、コタロー』


『御意』


 ドアに向かい歩き出すトキオの肩にコタローがとまる。その姿を見たマーカスは今夜裏ギルドが潰されるのを確信した。



 ♢ ♢ ♢



「何者だ?」


「夜分遅くに失礼いたします。トキオ セラ様の使いでやってまいりました、サンセラと申します」


 ブロイ公爵邸の門番はトキオと名乗る冒険者が現れた場合、いつ何時だろうと報告するよう言われている。今は真夜中。本人でもない。しかし、無下に扱う訳にもいかないため、とりあえず用件を聞く。


「こんな時間に何用でしょうか」


「セラ教会が襲撃されました。侵入者を全て捕縛しましたので引き取りの衛兵をお願いしに参りました」


「なんと、しばしお待ちください。すぐに伝えてまいります」


 慌てて屋敷に駆けこむ門番。五分と経たずに戻った門番に屋敷へ案内されると、すでに屋敷内は騒然となっていた。サンセラに気付いたオスカーが慌てて駆け寄る。


「サンセラ先輩、皆様はご無事ですか?」


「慌てるな、オスカー。師匠が居るのだ、後れをとる訳なかろう。あくまでも事後報告だ。公爵家の方々にも一旦落ち着くように言ってこい」


 オスカーの説明でようやく落ち着きを見せる公爵家。平和な領地とはいえこれくらいの騒動は日常茶飯事だろうに、少し慌て過ぎではないかと思うサンセラの前にブロイ公爵、長男のエリアス、三男のクルトがオスカーに連れられてやって来る。サンセラは彼らが到着する前から深々と頭を下げた。


「はじめまして、トロン領主ヘンリー フォン ブロイです。息子が世話になっております」


「はじめまして、トキオ セラ様の一番弟子、サンセラと申します。オスカーにはいつも助けられております」


 その後、兄弟とも軽い挨拶を交わし以前トキオ達が会談した部屋へ場所を移す。正面にブロイ公爵、両サイドにエリアスとクルト、サンセラとオスカーが向かい合うように座る。初めに口を開いたのはブロイ公爵ではなく、長男のエリアスだった。


「早速ですが、今わかる範囲で襲撃事件の詳細を教えていただけますか」


「はい。襲撃は今夜未明、侵入者は七人、狙いはマザーループとシスターパトリでした。即座に対応した師が全て捕縛いたしました。こちらに怪我人はおりません。実行犯は裏ギルドと名乗る組織の構成員。その中の一人が「発掘」スキルで穴を掘って地下から侵入されました。実行犯の移送にはその対策もしてください。依頼主はイレイズ銀行行員のジャンセンです」


 事件の詳細とは別にブロイ公爵はトキオの一番弟子と名乗るサンセラを注視していた。年齢はトキオより上に見える。非常に洗練された佇まいで品があり礼儀正しい。貴族然とした雰囲気はあるが貴族ではない。これほどの人物が貴族ならばブロイの耳にも噂くらいは入っている。


「ここへ来る前にマーカスを応援に行かせました。今頃は捕縛した侵入者の監視を師と交代しているでしょう」


 ブロイは次男のオスカーからトキオにサンセラという弟子がいることを情報としては聞いている。トキオが認めるほど魔法に長けた人物で学校の建設はトキオとサンセラの二人だけで行っていること、S級冒険者のマーカス ハルトマンが自分とは比較にならないと言う強者だということ。クルトに目を向けると眉間に皺をよせ小さく首を横に振る。なるほど、マーカス ハルトマンの言葉は本当らしい。


「トキオ殿と交代・・・トキオ殿は何処へ行かれたのですか?」


 エリアスの質問にブロイは嫌な汗が流れた。


「裏ギルドに決まっているではありませんか」


「裏ギルドへ・・・何をしに?」


 サンセラの表情が一瞬変わったのをブロイは見逃さない。ごくりと唾を呑む。


「エリアス様、失礼な物言いになって申し訳ありませんが、今夜起こった襲撃事件を理解しておられますか。裏ギルドが手に掛けようとしたのはマザーループとシスターパトリです。お二人を尊敬してやまない師がそんな組織の存続を許すとお思いですか」


 この師弟には絶対的な信頼感があるとブロイは知る。たった一人で組織に向かってもサンセラは心配すらしていない。


「たった一人で組織を壊滅させると・・・」


「何か問題でもありますか?裏ギルドなる組織がドラゴンを十頭ほど使役していれば多少は戦いらしくなるでしょうが、それでも師の敵ではありません」


 クルトが目で必死にエリアスを黙らせろとブロイに訴える。武闘派ならではの感じ取る部分があるのだろう。ブロイがエリアスに替わり発言する。


「サンセラ殿、以前トロン冒険者組合ギルド長のマノアどのからも聞いたのだが、本当にトキオ殿はドラゴン以上の強者なのか?」


 ブロイの問いを聞いたクルトが思わず「バカ」と声を出さずに口だけ動かした。親に向かって「バカ」とは許される言葉ではないが反射的に口が動いてしまったのだろう。


「本当も何も、私は実際に師がドラゴンを造作もなく倒すところを見ていますから。その戦いでも師は掠り傷一つ負っていませんでした」


 これ以上はクルトの精神が持ちそうもない。そろそろこの話を終えようとブロイが言葉を発する直前、空気を読めない事では公爵家一のオスカーが興奮気味に声を荒げる。


「父上!これ以上先生のお力を疑うような発言があれば、サンセラ先輩の前に私が許しませんよ。先生がドラゴンごときに後れをとるなどありえません」


 誰もトキオの力を疑ってなどいない。あまりに現実離れした力に戸惑っているだけだが、いち早くトキオの力に魅了されたオスカーにはそれが理解できない。


「オスカー」


 オスカーの暴走を止めたのはサンセラだった。


「ドラゴンなどとは、ドラゴンより強者のみに許された発言だ。人の威を借るような言葉は慎め。己の価値を下げるだけだぞ」


「申し訳ありません。サンセラ先輩の言われる通りです」


 サンセラの言葉にブロイだけでなく、エリアスとクルトも納得する。それと同時にトキオの一番弟子を名乗るに値する人物だと感心されられた。クルトの反応を見てもサンセラが強者であるのは明らかだが、それと同時に知識と教養を兼ね備えている。それ程の人物が足元にも及ばないというのがトキオなのだ。


「それでは、私は教会に戻りますので衛兵の手配をお願いいたします。イレイズ銀行に関してもできるだけ迅速に動いていただくことをお勧めします。マザーループとシスターパトリを手に掛けようとした首謀者が、のうのうと営業しているのを許す師とは思えませんので」


 そう言ってサンセラは席を立つ。


「サンセラ先輩、私も一緒に行きます」


「そうか、それじゃあ門の外で待っているから早く準備してきなさい」


「はい」




 サンセラが去ってすぐにブロイ公爵は動いた。


「クルト、衛兵を連れて教会へ向かえ。スキル対策を忘れるなよ」


「はい」


「エリアス、イレイズ銀行へ行って証拠を押さえろ。行員だろうと支店長だろうと一歩も建物の中に入れるな。すべての容疑が晴れるまでイレイズ銀行は営業停止だ」


「はい。すぐに建物を押さえたのち必要書類を揃えます」


「朝までに終わらせろ。これはこの街の問題だ。これ以上トキオ殿の手を煩わせるな」


 ブロイは息子たちに指示をしてから冒険者組合ギルド長のマノアに使いを出した。できることはすべて、迅速に行わねばならない。サンセラは言った。「ドラゴンなどとは、ドラゴンより強者のみに許された発言だ」と。それすなわち、サンセラもドラゴン同等かそれ以上の強者だということ。トロン領主としてトキオとサンセラの師弟を敵に回すのは勿論、心証を悪くされることも許されない。

 イレイズ銀行の蛮行を一刻も早く国中の冒険者組合へ通達してもらわなければならない。王都にあるイレイズ銀行本社もただでは済まないだろう。




 公爵家の面々が忙しく動き回る中、門の外でオスカーを待つサンセラは腹を立てていた。


「オスカーの奴、何がドラゴンごときだ。お前が言うな!」


 サンセラはただ単にオスカーの「ドラゴンごとき」発言がむかついただけだった。


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