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充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~  作者: 中畑道
第一章 修行編

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幕間 神々の女子会

 

「ご苦労様でした、カミリッカ」


「ありがとうございます」


 トキオ様がこの世界でも十分に活動できるまで成長され、私は神界に戻った。


「心のつかえは取れましたか?」


「はい。このような機会を与えていただき感謝いたします」


 前世での人生を終え、この世界の創造神様にお声がけいただいたとき、私はすぐに答えを出すことが出来なかった。

 自らの不注意で青年の人生を奪った。こんな十字架を背負ったまま女神になっていいとは思えなかったからだ。


「それにしても本当に素晴らしい魂を持った青年ですね。彼が私の創造した世界をどの様に変えてくれるのか楽しみでなりません」


「トキオ様ならばこの世界を良き方向へ導いてくださると確信しております」


 力を得て喜ぶよりも先に責任をお考えになる。そんなお方が間違った力の使い方をする筈がない。

 この世界はこれからの数十年で大きく変わる。


「改めて聞きます。この世界の女神になってもらえますか?」


「はい。不束者ですが宜しくお願い致します」


 命と心、トキオ様に二度も救われた。

 これから大きく変わるこの世界、トキオ様が変えるこの世界を女神として支えていけるのなら、これに勝る喜びはない。


「修行は厳しいですがあなたなら乗り越えられます。精進してください」


「はい」


 トキオ様に厳しい修行を課したのだ。今度は私がどんなに厳しい修行だろうと乗り越えて見せる。


「そうそう、彼女が首を長くして待っていますよ。顔を出してあげてくださいね」


「かしこまりました」



 ♢ ♢ ♢



 扉越しに声を掛ける。


「女神様、カミリッカです。只今戻りました」


 ゆっくりと開く扉。その先にはトキオ様の妹、この世界最初の女神様が鎮座していた。




「お久しぶりです。女神様」


「・・・・・・・」


「女神様?」


「・・・・・・・」


「知ちゃん」


「久しぶり、夏ちゃん。さあさあ、こんな所で話すのもなんだから私の部屋に行こう。すぐにお茶を用意するから待っていて」


 女神の間から強引に連れてこられた彼女の私室は、前世でいうところの普通の女の子の部屋。見慣れたスナック菓子まである。


「はい、座って」


「はぁ、失礼します」


「ちょっと、夏ちゃん。さっきからよそよそしくない」


「知ちゃ・・女神様に対して失礼な態度は・・・」


「そういうのいいから。同郷の友達に女神様とか勘弁してよ。今までどおり夏ちゃん知ちゃんでいいから」


「う、うん。わかった」


 神界に来て出来た最初の友人、知ちゃんこと世良知世は女神になっても何も変わらない。




「それで、どうだったお兄ちゃんは?」


「一切穢れのない魂、想像以上に素敵な方だったわ」


「でしょー。最高なんだよ、うちのお兄ちゃんは」


 スナック菓子をくわえながら上機嫌な知ちゃん。前世ではほとんど病院暮らしだった彼女にとって、普通の部屋、普通の暮らしこそが何より望んだものだったのだろう。


「ところで夏ちゃん、あれはないんじゃない」


「あれって?」


「夜伽の方はいかが致しましょう?って、やり過ぎでしょ」


「だって、トキオ様の反応があまりにも可愛らしいから、つい・・・」


「なんが、ついよ、お兄ちゃんがアレしようとする度に夜襲かけたりしてさー。お兄ちゃんだって男なんだよ、もしその気になっちゃったらどうするつもり」


「その時は身も心も捧げるつもりだったわ」


「エロいよ、エロ過ぎだよ、夏ちゃん。修行が終わったらエロの女神確定だね」


「嫌よ、そんなの。せめて愛の女神とかにしてよ」


「この世界の人達もびっくりするだろうね。まさか二人目の女神がエロの女神様なんて」


 それだけはなんとしても阻止せねば。修行頑張ろう。




「そうだ、あれ見せてよ。お兄ちゃんに貰ったフィギュア」


「だーめ。あれは私の宝物だから、いくら知ちゃんでも駄目」


「えー、いいじゃん」


「駄目。あれだけは創造神様でも駄目」


 あの時はあまりの嬉しさに固まってしまった。トキオ様に勘違いさせてしまったようで以後貰えなかったことを思うと、上手く喜びを表現できなかったことが悔やまれる。


「いいなー。しかも誕生日にプレゼントまで渡してさー。私、気付いているからね」


「何を?」


「あの本「カミリッカのレシピ」って、見る度に思い出してもらおうと思って、あえてタイトルに自分の名前入れたでしょ」


 チッ、バレたか・・・


「あーその顔、やっぱり狙ってやっていたんだ。流石エロの女神」


「エロの女神じゃない。愛の女神よ」


「いいもんね、私もプレゼント送ったから」


「何を送ったの?」


「それは着いてからのお楽しみ」


「えー、教えてよ」


「だーめ。折角の物語なんだから、ネタバレしたら面白くないじゃん」


「それもそっか」


 自然と二人の目が前世のテレビを模した画面に向く。そこには森を走る主人公の姿。


 物語は始まったばかり。




 神々の女子会は続く・・・


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