信号機
信号機
目が冷めてギョッとした。
何時も此処を出る時間より拾分過ぎている……。
マジか〜……目指しをかけ忘れて眠ってしまったらしい……。
脳裏に別れて暮らす子供達と、楽しくやいやいとドライブする夢の残映が残っている。
はあ〜……目を擦りながらそそくさと身仕度を整え、此処を後にする……バタン! 行って来ます……誰も居ない部屋なれど、わたしは行って来ます、ただいまは欠かさない。
ザッザッ……ザッザッと膝迄積もる雪に足を取られながら川辺の歩道を進んで行く……。
隣の公園の桜の枝が雪の重みで、根本から倒れて歩道を参分の弐程塞いでいる……。
無造作に突き出す桜の枝を避けながらザックザック、ザックザックと更に深い雪を掻き分け進んで行く……足の体力はじわじわ積もる積雪に奪われていく。
河原をぬけて大橋へと出たものの歩道は道の雪を押す際に押し出された雪の凸凹とした塊となり通路を所々塞いでいる。
足場を確かめながら、進んで行く……。
ガソリンスタンドのある交差点へとたどり着く……此処らあたりが2.5キロの徒歩通勤の大体半分の距離だろうか……。
横断歩道の先の信号は青の点滅し始めた所だったが……足場も悪いし無理に渡るのをあきらめ待つことにする……。
ガソリンスタンド側から箱バンが右折で曲って来て……横断歩道の前で……何故か停車? ドライバーと目が合う……信号はもう赤になってるけど……何故? 止まる? 運転手は何故行かないと目がそう訴えているのがあからさまに伝わって来た?
いやいやいや……赤だしと思と突っ込んでやりたいが、届くはずも無いのだ。
行って行ってとゼスチャーで、運転手へと即す……。
運転手ははぁ? と、首を振り納得行かない様子で車を発進させて……ジッと横目で睨みつけられながら去って行った?
変なのと携帯で時間を確認し、顔を上げると横断歩道の先、信号が青になっていた。
おっ! と、辺を確認をして晩御飯の献立を何にしようか等と頭に過ぎらせながら横断歩道を進んで行く。
横断歩道の中程に差し掛かった時……ビイイイイ……とけたたましくクラクションが鳴り響く? えっ? と……クラクションの先に車が壱台? 何故に? クラクションを鳴らされているのか分からず? 首を捻りながら……前方を見ると……啞然とする……信号が赤だ! えっと……今の自分の立たされた立場を壱瞬にして理解する。
眠りから冷めた様な、気だるさがアタマを過ぎっていく……?
青だったのに? 何で赤……慌てて辺を見ながら幸いにもクラクションを鳴らしてくれた車以外車両は無かったので……そのまま横断歩道をズサズサと駆け抜けた……ハァハァ……。
クラクションを鳴らしくれた運転手に壱礼し……ドキドキバクバクする心臓を落ち着かせながら……何が起こった?
わたしは青の信号を確認して横断歩道を渡った……記憶を辿っても、青信号だった。
クラクションを鳴らしてくれた車から見れば、赤信号で素知らぬ顔でゆっくりと横断する変な奴が前方にいる。
躰の震えが止まらなかった……。
沢山の交通事故の中には、もしかするとこういう現象が起きているのでは無いかと……ふと……頭を過ぎるのでした。
車が壱台しか走っていなかったので、助かりましたが……これが頻繁に車が走っていた時に起こっていたのだとしたら……今、思い出も身震いいたします。
わたしの中では、あの魔の交差点は要注意危険地帯に認定しています。