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宝玉使いは実力を隠す  作者: 潮騒
第二章 憂慮の魔法剣士
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思わぬ再会



◇◇◇


 そこはバーリンの街のすぐ近く。シンジたちが登った山の中腹にある小屋の中で、海賊と依頼主との取引が行われていた。


「これがお目当ての品でしょ?」


 海賊の女船長が依頼主から頼まれたものを机の上に出す。それは海の宝と言われる杖だった。依頼主はそれを見てニヤニヤと笑っている。


「ええ、確かに。報酬はこちらです」


 依頼主である男の後ろに控えていた女が杖の隣にケースを置く。そして、ケースをぱかりと開けると、中には金貨がぎっしりと詰まっていた。


「よし、これで取引は成立だね」

「はい。また何かあればご連絡しますので……ん?」


 その男の言葉を遮るように強風が小屋を揺らした。その風は小屋に唯一ある窓を吹き飛ばし、小屋の中まで入り込んできた。


「ぐっ……なんですか、この風は……!」

「くそッ!前が見えねぇ……ッ!」


 その風が収まってから小屋の中にいた面々は状況を確認する。周りが木々に囲まれているため、小屋の中には葉っぱなどが散乱していた。

 

「無い……!私の【静海杖ポセイドン】が無いぃぃッッッ!!」


 男が叫ぶ。彼の言う通り、先ほどまで机の上に置いてあった杖は跡形もなく消えている。


 その時、風のせいで一部が吹き飛んだ屋根から声が聞こえてきた。


「へぇ、これってそんな名前がついてんだな。海の宝が正式な名前かと思ってたぞ」

「な、何者だッ!?」


 男が見上げると、そこには金色の髪の少女と仮面をつけた男が中を覗き込んでいた。


「通りすがりの冒険者」

「だよ!」



◇◇◇



 小屋の中にいた奴らは唖然とした表情で俺たちを見ていた。ただ一人、こちらを睨むモノクルをした男を除いて。


「返せッ!それは私のものだ!!」

「嫌だよ。てか、お前のものじゃないし」


 俺は手に持った【静海杖ポセイドン】を見ながらそう言う。見た目は魔法使いが持っている杖と大差ない。俺の店にもこういう杖はある気がする。


 おっと、そんなことを考えている場合ではなかった。俺たちにはまだやるべきことが残っているんだったな。


 現状の問題を解決するためにはこの杖を元々あった場所に戻せばいい。そうすればリヴァイアサンの怒りは収まる。しかし、それをしただけでは、またこいつらが盗みにくるかもしれない。俺たちが防衛に当たるわけにはいかないし、シャオもそれにだけ注力するわけにはいかない。


 だから、今ここでこいつらを捕まえる。幸い、海賊たちは有名らしいから衛兵も喜んで捕まえてくれるだろう。


「お前たち!あいつから【静海杖ポセイドン】を取り返せッ!」

「はぁ?なんで私たちがあれを取り返さなきゃならないんだい?そこまでは依頼に含まれてないだろ?」

「チッ!分かりました。追加で報酬を用意します」

「あっはっは、仕方ないねぇ。アンタたち、行くよ」


 髭面のいかつい男たちを従えた女性がこちらにやってくる。もしかして、彼女が海賊船の船長なのか?てっきり男かと思っていたが、なかなか珍しいな。


「ということだ。悪いが、それを返してもらうよ」


 女船長が顎をくいっと動かすと、手下の海賊たちが武器を構えて俺たちに近づいてくる。その数はざっと二十人ほど。どうやら数で押し切れると思っているようだ。


「シトリー、こいつらは俺に任せてくれ。お前は船長を頼む」

「分かったよ。負けないでね、パールくん」


 シトリーは俺に向けて拳を突き出す。俺はそれに自分の拳を合わせた。何気にシトリーから名前を呼ばれるのは初めてかもしれない。


 それから俺たちは二手に分かれた。俺の相手は二十人ほどの海賊だ。まあ、人数差なんて俺には関係ないが。


「行くぞ、オメェら!!」

『おぉぉぉぉ!!!』


 海賊の一人がそう叫ぶと、一斉に攻撃を仕掛けてきた。剣や斧などの武器を振り回す者や遠距離から弓やボウガンを撃ってくる者がいたが、俺はそのすべてを躱していく。


 そして、緑色の宝玉を三つ取り出し、それぞれから風の魔法を放った。


 一つの宝玉からは旋風を纏った風の矢が現れ、迫ってくる海賊たちの腹や足に突き刺さってその動きを止める。別の宝玉からは風の鞭が飛び出し、海賊たちの足元を払って転ばせたり、手に持った武器をはたき落としていく。さらに別の宝玉は小さなつむじ風を起こして無力となった海賊たちを吹き飛ばした。


 受け身を取ることもできずに着地(落下)した海賊たちは痛みから立ち上がることすらままならないようだった。あとは全員の手を魔法で縛れば一丁あがり。


 有名な海賊とはいえこの程度か。海の宝を盗んだのだからそれなりの実力を持ってるとは思っていたんだが、違ったみたいだな。


 その時、俺の背後に誰かが来たことに気がついた。シトリーかと思って振り返ると、そこにはシトリーではなく薄紫色のローブを羽織った女性がいた。


「あら、もう倒されたのね。やっぱりあの船長以外はダメダメだわ」


 どこか聞き覚えのある声。その理由は彼女がローブのフードを取ったことで理解することができた。


「あなた、面白い戦い方をするのね。私の知ってる人にそっくりよ?」


 そこにいたのは王都で発生した連続誘拐事件の犯人の一人、ミラだ。




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