船内にて
「なんで海の宝が無いんだ?」
俺がそう聞くと、見張りの男はポツポツと話し始めた。
「船長が何処かへ持ち出してるんだよ。お得意様に会いに行くってな。ち、ちなみにどこに行ったかは知らねぇぞ。あの人、俺たちにもどこへ行くかは秘密にしてるんだからな」
こいつが本当のことを言っているかは分からない。ただ、海の宝――青い宝玉がついた杖が無いのは事実だ。今のところはこいつの話を信じるしかないだろう。
なら、この場で取れる行動は一つ。船長の部屋を漁ることだ。もしかしたら、誰かとメッセージのやり取りをしている証拠が出てくるかもしれない。
「ねえ、どうしよっか」
シトリーが小声で俺に尋ねてくる。俺はこの見張りに船長室への案内をしてもらう旨を伝えた。
「もしかしたら、何かの手がかりがあるかもしれないから船長の部屋を調べようと思う。もちろん、こいつの案内でな」
「そうだね。それが一番いいかも」
「というわけで、船長室までの案内頼んだ」
「はぁ!?さすがにそれは……」
見張りの男は船長の部屋に案内することを拒もうとするが、シトリーの無言の圧により見張りの男は黙って俺たちを船長の部屋へと案内した。
男は他の仲間が起きないか、周りをキョロキョロしながら船長室に向かっていく。しかし、その心配はまったくの無用だ。なぜなら、魔法で俺たちの存在を希薄にしているのと共に、歩く音やわずかな振動までも魔法で極限まで抑えているからだ。さすがに睡眠の邪魔をするわけにはいかないからな(棒)。
「こ、ここだ……」
男が両開きのドアを開けると、そこは少し広めの部屋だった。ここで一人暮らしをしろと言われても申し分ないくらいだ。船長って優遇されてるんだな。
「シトリー、俺が中を調べるから男を見張っててくれ」
「任せて!」
俺はシトリーにそう頼むと、部屋に入って真っ先に目についた大きな机の方に向かった。海賊船の船長という固定観念から乱雑に物が置かれていると思っていたが、机の中は意外にもきちんと整頓されていた。
とはいえ、なかなかに物が多いので、お目当てのものを探し出すことは至難の業だった。資料多いな!もしかして、こいつらはインテリ系海賊なのか?なんだよ、インテリ系海賊って。
ひとまず、絶対に違う内容のものは省いていき、残ったものの中からそれらしきものを精査していく。行き先を船員にも伝えていないことから、それなりに秘密裏でやり取りをしているのだろう。それならば、一見すると何のことか分からないようにしてあるはずだ。
その基準でそれらしきものを抜き出していくと、三つほど奇妙な内容の紙を見つけた。他の資料は内容がしっかりしたものだが、この三つだけは内容がふわふわしている。なんというか適当感が満載だ。
ということは、この三つがお得意様とやらとのやり取りを記しているのだろう。だが、分からん。何か特殊な解読方法があるのだろうか。
「なあ、船長から暗号の話とか聞いてないか?」
俺は見張りの男に尋ねてみることにした。だが、望みは薄いだろう。こいつは誰と会うかすら教えてもらってないんだからな。
「知らねえよ」
「まあ、そうだろうな」
予想通りの答えに俺は納得する。
まずいな、完全に行き詰まってしまった。あと少しで海の宝の場所が分かりそうだってのに……。
「ああ、そうだ」
これからどうしようか、と考えていると、男が急に声を上げた。もしかしたら、何かを思い出したのかもしれない。
「なんだ?」
「いや、その紙を船長が見て思い出したんだが、船長がその紙を見る時、なぜか紙を上に掲げてたんだ。理由を聞いても教えてくれなかったけどな」
男の言う通りに一枚の紙を上に掲げてみる。すると、紙に書かれた文章の所々が光に当たることで見えなくなっていた。
「そうか!これはインクを使い分けて書いてあるのか」
おそらく、普通のインクと光に当たることで見えなくなるインクの二つを使って文を書いていたのだ。そして、一枚の紙だけでは成立しないということは、三枚の紙を重ね合わせて同時に見る必要があるのだろう。
俺は三枚の紙を重ねて上に掲げる。すると、三枚の紙に書かれていた内容とは全く異なる新たな文章が現れた。そこには海の宝を渡す際の日時と場所が書かれていた。
取引の時間は今から約十分後であり、取引場所はこの場所から大体三キロほど離れた場所だった。今から行けばまだ間に合いそうだ。
「シトリー!場所が分かった。でも、時間がない。急いで行くぞ!」
「う、うん。分かった!」
俺たちは急いで船内から出てシャオの元に向かった。
この次の話から一週間に一度の投稿にさせていただきます。ご了承ください。




