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宝玉使いは実力を隠す  作者: 潮騒
第二章 憂慮の魔法剣士
19/22

レッツ海水浴!



「海だぁーーー!!!」


 マリンがニコニコで叫ぶ。念願の海に来れたのだからテンションが上がって当然だろう。朝イチで冒険者ギルドに行き依頼を完了したため、昼前には海で泳げるようになったのだ。


 マリンは満面の笑みで砂浜を走り回る。海水浴ができるようになったことを聞きつけた人たちも何人か来ていた。やはり地元の人たちは泳ぐことが好きなのだろう。


「よし、じゃあ俺は浮き輪を借りてくるよ」


 俺は近くの店で浮き輪を二つ借りた。そして、それをマリンとローズに渡す。


「ありがと!」

「おう。泳ぎ方を知りたかったら教えるからいつでも言ってくれ」

「じゃあ後で教えてもらおうかな」


 事前に聞いた話では泳げないのはマリンとローズだけで、ラピスとトルーは昔に何回か経験があるらしい。泳げるのは俺一人だけかと思っていたので少し驚いた。


「私はちょっと遠くまで泳いでくるわね」

「分かった。気をつけてな」


 ラピスを見送った後、マリンとローズと一緒に海に入った。泳げない組には浮き輪を渡したとはいえ、万が一のことを考えて俺がずっと見ているように決めておいた。せっかくの楽しい思い出が台無しになってしまっては元も子もないからな。


「ひゃぁ……」


 浮き輪を持ちながら海に入ったマリンはその冷たさからか、小さく声を上げる。そして、そのまま進んでいき、足の届かないところまで行くと浮き輪につかんでぷかぷかと浮いた。


「どうだ、初めての海は」

「うんとね、水が冷たくて気持ちいい!」

「そ、そうだな……」


 なんて普通の感想なのだろうか。まあ、本当に思ったことを言っただけだから仕方ないのだが。


「シンジさん!海の水って本当にしょっぱいんだね!」

「おう、そうだな。あんまり飲んじゃダメだぞ」


 ローズはニッコニコで海の味の感想を述べる。楽しそうでなによりだ。


 それからは海に浮かびつつ、たまに来る少し大きめの波を楽しんだ。波の揺れが心地よくて時々眠りそうになったがなんとか持ち堪えた。思えば旅行に来てからあまり眠ってない。何のために旅行に来たのか分からなくなってくるな。


「海には慣れたか?」

「うん!最初はちょっと怖かったけど、今は大丈夫だよ」

「私は最初から大丈夫だったなー。とりあえず、海の水の味が知れたのは良かったよ」


 ある程度海にも慣れたようなので一度砂浜に戻った。何も海に入ることだけが海水浴ではない。


「ビーチバレーをやろう!」


 浮き輪を借りたところでボールを借りてきた。そして、砂浜でくつろいでいたトルーを呼び、二対二でビーチバレーをした。最初は俺がルールやボールの扱い方を教えながらやっていたが、少し経つと何の問題もなくゲームを行えるようになっていった。


「そこだぁぁ!」

「甘いよ!」


 俺のアタックにローズが反応してレシーブをする。そのボールをトルーがトスして、最後にローズがアタックを打ってきた。そのボールはライン際ギリギリでインとなり、ローズたちの得点になった。


「お前ら、短時間で上達しすぎだろ……」

「運動神経には自信があるからね」

「俺は大体のことは見て覚えられるので」

「天才かよ」


 さらっとすごいことを言ったトルーにツッコミを入れる。ただ、本人にとっては普通のことらしく、俺のツッコミにも首を傾げていた。


 それから、泳ぎ終わったラピスと合流して少し遅めの昼食を取ることになった。浮き輪とボールを借りた場所の隣が料理を提供していたので、そこで好きなものを注文して食事スペースに向かった。


「お、ここ空いてるな」


 空いている席を見つけたのでそこに座ろうとすると、ほぼ同じタイミングで別の人もその席を取ろうとしていたので、互いに顔を見合わせた。


「あ、すみませ……」


 そこにいたのは金色の髪を後ろで縛った女性、シトリーだった。あまりにも急な出会いに俺は固まってしまう。


「ごめんね、全然周りを見てなかったよ。どうぞ、座って」


 シトリーは笑顔でそう言うと、席を離れようとする。しかし、ばっと振り返り、じーっと俺の顔を覗き込んできた。


「あれ?君ってボクとどこかで会ったことある?」

「い、いや……ないんじゃないですかね……」


 俺は少し顔を逸らしながら答えた。それでも顔を覗き込もうとしてくるシトリー。すると、後ろから声がかかった。


「あら、知り合い?」


 料理を持って戻ってきたラピスが話しかけてきた。ナイスタイミング!


「いや、多分俺を別の人と勘違いしてるんだと思う」


 俺の連れが来たことでシトリーは俺から離れた。


「いやぁー、ごめんね。ボクの勘違いだったかも」


 シトリーは手をひらひらと振りながら立ち去っていった。諦めてくれたようで一安心だ。できる限り正体はバレたくないからな。


 

 昼食を食べた後はマリンとローズに泳ぎを教えることになった。とはいえ、教えられる時間は短いので、息継ぎとバタ足だけマスターさせることにした。


 幸い二人とも水に対しての恐怖心は無いようで、息継ぎは何も苦戦することなく出来るようになった。次に俺はローズの、トルーはマリンの手を持って、息継ぎをしながらバタ足をするという一般的な練習を行った。


「お、いいぞ。二人とも上手いな」


 二人とも基本的なことは出来ていたので、あとは細かい部分を教えながら練習を繰り返すと、一時間も経つ頃には完璧に息継ぎとバタ足をマスターしていた。あとはここに手の動きを加えるだけでクロールが出来るのだが、時間もないので今日はそこまでで終わることになった。


「お疲れ様。二人とも上達が早いわね」


 昼食後は砂浜で休憩しながら二人の練習を見ていたラピスが海から上がった二人にそう声をかける。


「うん、泳ぐのとっても楽しかったよ!」

「時間があったら全部マスターしてたんだけどね。次で完璧に泳げるようになってみせるよ」


 率直な感想を述べるマリンと自信満々なローズ。ラピスの言う通り、二人とも上達が早いから俺の教え方が上手いかのように錯覚してしまう。


「じゃあ帰り支度もしなきゃいけないし、そろそろ宿に戻るか」

「そうね」


 明日も一応休みにしてあるが、ここから店がある王都までは結構距離があるので早めに帰ることにしていた。旅行帰りは疲れるものだからな。


 とはいえ、俺にはまだやることが残っている。旅行から帰ったら海賊退治だ。


 ……休むために行った旅行先で新たな事件に出会うなんて、本末転倒とはこのことだな。




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