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宝玉使いは実力を隠す  作者: 潮騒
第一章 商売の宝玉使い
13/22

役割分担



◇◇◇



 スタンピードの場所に到着する少し前、俺はラピスと戦い方について話し合っていた。


「今日の戦いなんだけど、完全に役割を分けようと思うんだ」

「どういうこと?」

「今回、俺は戦況がまずそうな場所に優先的に向かう。だから、ラピスは後方で魔物が街の方に行かないようにしてくれ」

「分かったわ」


 そうして役割を決めた俺たちは即座に決めたように動いた。まず、俺は近くにいた槍使いの冒険者に群がる魔物を吹き飛ばす。


 それから魔物の連携に苦戦していたパーティーの場所まで走り、その連携の要となっているリーダー格の魔物に狙いをつけて魔法を放つ。


「《火剣・(ブースト)》」


 俺の周りを浮遊する深紅の宝玉からものすごい速さで炎の剣が飛び出してくる。その剣は狙いを定めたリーダー格の魔物に向かって一直線に飛んでいき、その胴体を貫いた。


「ガルァァァ……!」


 火剣に貫かれた魔物はそのまま倒れ込み絶命した。そして、俺の予想通りリーダー格の魔物がいなくなると、他の魔物たちの連携に穴ができ始めた。苦戦していた冒険者たちはその穴を逃さず、なんとか立て直して残りの魔物を倒していった。


「ありがとう!おかげで助かったよ!」

「いえ、気にしないでください」


 助けた冒険者のうちの一人が手を振って礼を言ってくる。それに同じく手を振って返答した。


「さてと、お次は……」


 俺は辺りを見回して苦戦してそうな場所を探し、援護に向かっていった。




◇◇◇





「"吹き荒れる嵐よ 乱れる竜巻よ……」


 後方で冒険者たちが狩り損ねた魔物を倒そうと、一人の女性冒険者が魔法の詠唱を始める。しかし、彼女が詠唱を終える前にドンッという音が鳴り、向かってくる魔物の額から勢いよく血が飛び散った。


 その後も、後方に抜けてきた魔物たちはドンッという音で血を噴き出しながら絶命する。それを見ていた女性冒険者は唖然としているが、その状況を作り出しているラピスはいたって普通の顔をしていた。


「えっと……すごいですね。こんなに早く魔物を倒して」


 女性冒険者は無表情で銃を撃つラピスに話しかける。しかし、ラピスにはその声が聞こえていないのか、女性冒険者を無視して銃を撃ち続けていた。


「あの、えっと……」

「あ、ごめんなさい。集中していて気づかなかったわ。珍しいでしょ?魔銃をこんなにちゃんと使ってる人なんてあんまり見ないでしょうし」


 魔銃は使い手の魔力量によってその性能を大きく左右される。その上、魔力量が多い人は魔法を使うので、魔銃を使う人は滅多にいないのだ。


「い、いえ、こんなにも早く魔物を倒していてすごいなと思って。私なんて詠唱にすごく時間がかかっちゃって……」

「そんなことないわ。私は魔法が得意じゃなかったから魔銃を使ってるだけで、出来ることなら魔法を使ってみたいって思ってるわよ。近くに凄腕の魔法使いもいるしね」


 そう言って、ラピスは少し離れた場所で宝玉を操りながら戦う少年を見つめる。


「要するに、私たちはお互い様ってこと。だから、お互い精一杯頑張りましょ?」

「は、はい!」


 女性冒険者はラピスに諭されて、自身の気を引き締める。そして、魔法の詠唱をあらかじめ開始しておき、複数の魔物が来た時に発動寸前の状態で保っておいた魔法を一気に発動した。


「《疾走乱風(ランページソニック)》!!」


 女性冒険者の頭上に現れた風の塊から三十センチはあろうかという風の鎌がいくつも放たれる。その風の鎌は魔物に向かって一直線に飛んでいくと、魔物たちの体を切り裂いていった。


「あなたもすごいじゃない!こんなにも多くの魔物を倒しちゃうなんて!」

「あ、ありがとうございます。でも……」


 あなたの方が多くの敵を瞬殺してますよね?とは、喜ぶラピスの前では女性冒険者は口にすることができなかった。


「待って。何かしら、この音?」

「音ですか?私には特に何も……」


 そう言いかけたが、耳を澄ませてみると確かに妙な音が聞こえてくることが分かった。そして、もう少しの間聞いていると、それが何かの足音であることにも彼女たちは気づいた。


「何ですか、この大きな足音は!」

「分からないわ。私、ちょっと前線に行ってくるわ。状況を確認してくるから、ここは任せたわよ!」


 ラピスは女性冒険者に後方の魔物討伐を任せて、足音が聞こえてくる前線へと向かった。






◇◇◇





 

 ラピスたちが大きな足音を聞く数分前のこと。戦場から少し離れた場所で様子を観察していた一人の女性が大きく舌打ちをする。


「なんで未だに突破できないのよ!この国の冒険者たちは質が低いんじゃなかったの!?」


 事前情報では、マイン王国の周囲は比較的弱い魔物しかおらず、それに伴って王都の冒険者たちのランクも高くないとなっていた。それなら圧倒的物量と細かな連携を魔物にさせたら、余裕で冒険者たちを屠れると考えていたのだ。


 しかし、どれだけ時間が経っても冒険者たちは諦めず、それどころか少し押し返し始めている。その現状に彼女は苛立ちを隠せなかった。


『さて、これからどうする?』


 彼女の近くの木に止まっているフクロウが尋ねる。


「こうなったら、アレを出すわ。アレを出せば、低レベル冒険者たちなんて瞬殺よ。あははは!」

『良いのか?アレをこんなところで使ってしまって』

「うるさいわね!私をコケにした報いよ!あいつらに地獄を見せてやるんだからッ!」


 フクロウは彼女を止めようとしてやめる。彼女の説得をしようかと考えたのだが、彼女が出そうとしているアレが『破滅の魔道士』を見つけるのに使えるかもしれないと思ったからだ。


(これでハッキリするかもしれん。あの中に『破滅の魔道士』がいるのかどうかがな……)


 フクロウは目を閉じた。自身の能力を使って『破滅の魔道士』を探すために。


 




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