高校入学
小さい頃からキーキーわめく女子が苦手だった。ここなら静かに、と比較的おとなしいグループに入っても、いつのまにかキーキー女子が割り込んでくる。おかげで自分はどんどん無口になってしまったと思う。何か言うとその倍になって返ってくるのが面倒になっただけだが……。
そんなこんなで、高校は逃げるように全寮制の男子校を選んで無事合格した。
寮には一週間前から入寮出来るということで、俺は早めに入ってしまおうと早速行動した。「まだ相部屋の子は来てないよ。」と、寮長に鍵をもらい、部屋に入った。部屋は二人部屋になっていて、ベッドと机、クローゼットがそれぞれ部屋の両側に配置されていた。間に仕切りなどない、シンプルな部屋だったが、トイレとシャワーは各部屋に付いている。そして、なんとミニキッチンも付いていた。長期休暇や日曜日など、寮の食堂は休みになるらしい。各々食べに外に出るか、作って食べるか好きにしていいらしい。うれしい。
荷物はそんなに多くない。制服だし、外に出ると言ってもここは都会ではないので普段着で大丈夫なのだ。あっという間に荷物の片付けも終わってしまったが、気付けば暗くなっていた。ちなみに入学前のこの期間は長期ではない為食堂はやっているという。よかった。
食堂に出向くと、チラチラ視線を感じたが空いている席で食事をした。普通においしい、よかったー、と思いながら食事を終えた。
翌日、朝食をとった後、部屋でのんびりしていると、コンコンとノックがあった。お、相棒の到着かな?
「はーい。」
「こんにちはー、今日からお世話になりますー。」
そう言って入ってきた相棒は、男のはずなのにえらい可愛かった。え?男だよね、マジで。
思わずマジマジと見てしまったが、相手も俺を見て目を見開いていた。何?
お互い見つめ合ったまま数秒が経過したが、ハッとして、
「どうぞ~、初めまして綿貫裕也です。入って入って。」
「あっ、こちらこそ初めまして早乙女理久です。よろしくお願いします!」
「あー、場所そっちで大丈夫?今なら変えられるけど。」
「いえ、大丈夫ですよ~。」
最初こそお見合いしてしまったが、なかなかフレンドリーじゃないか。よかったよかった。
二人とも、女子が苦手で男子校を選んだとか、共通点もありつつ、話ははずんだ。
「名字のせいで渾名は乙女ちゃんだったんですよ!ひどいですよね!」
…かわいい……たぶん名字のせいだけではないと思う。乙女ちゃんは納得とか言ったら傷つくよなぁ、とか思いながらも相槌を打つ。俺は空気が読める男だ、初日から間違ったりしない。とりあえず、ルームメイトは当たりで良かったと思った。