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3.露わになる俺

 突然現れた俺に、男たちの視線が集中した。どれも濁った目で、獲物を物色するようにジロジロと見ている。

 ま、まずいよな。俺だって山賊一人くらいならなんとかなるけど、相手は6人……。あぁっ! そもそも剣なくしちゃったじゃないか!

 落ち着け。落ち着け、俺。やばいと思った時こそ落ち着かないと。

 そうだ。なにもこの人たちが山賊だって決まったわけじゃない。斧や鉈を持ってるし、木こり的なお仕事をされてる方たちかもしれないじゃないか。すごく乱暴そうで、かなり凶悪な顔で、めちゃくちゃ不潔に見えるけれど……。


「……こ、こんにちは~」


 できる限り朗らかに挨拶したつもりだったけど、緊張のせいか信じられないくらい甲高い声が出てしまった。それか、さっき吸ったガスのせいかも。

 そのまま男たちの脇を自然に通りすぎようとしたが、


「おい、待てよ姉ちゃん」


 男の一人に腕を掴まれてしまう。ん?


「ね、姉ちゃん?」


 またしても聞きなれない高い声が、俺の口から洩れた。やっぱりあのガスのせいか?


「男もんの服を着てたって、そんな立派なもんぶら下げてたら男のふりはできねえぜ?」


 げへへ、と下品に笑う男の視線を追って見ると、俺の胸に大きな、お、お、おっぱい!?


「なんだこれぇぇぇぇぇっ!」


 今日一の叫び声だった。どうして今まで気付かなかったんだろう。たわわな双丘が俺の胸にあって、シャツのボタンをいくつか弾き飛ばしてしまっていた。どうりで胸が苦しいはずだよ……。

 そういえば頭も重いような気がしてたけど……あぁ、やっぱりだ! 後ろに手を伸ばして確認してみると、相当髪が伸びているのがわかった。てか、金髪になってるじゃんか。俺、黒髪なのに。引っ張ってみるが、カツラでもない。直に生えている。


「あぁっ、もう堪んねえぜ!」


 男が、乱暴に俺のシャツを引き裂く。露わになるおっぱいを、俺は咄嗟に自由なほうの腕で隠した。なんだこれ、柔らけぇ。


「おいおい、折角の上玉なんだ手荒にすんなよ」


 他の男たちも寄ってきて、俺はすっかり囲まれてしまった。男の腕から逃れようとするけど、力が強くてびくともしない。いや、俺が非力になってるのか?

 なんだこれ? なんなんだよ、この状況! 想定外のことが立て続けに起こりすぎて、理解が追い付かない。が、ともかく、まずは伝えておかなければならないことが一つある。


「おい、勘違いすんな。俺は男だ!」


 一瞬の沈黙。

 そのあとで、爆笑の洪水が起こった。


「ぶっはははははっ、まだ言うのかよ」

「ぶふふっ、誰が騙されるっつーんだか」

「ぎゃははっ、そんなに言うんなら確かめてやろうぜ。アレが付いてんのかよ」


 男たちは、俺の足をすくって持ち上げた。手足を拘束されて、ジタバタすることもできない。動かせるのは首くらいだ。


「お、おい、なにすんだよ。やめろって!」

「そーれっ」


 掛け声と共に、ズボンが脱がされる。


「へー、下着まで男もんとはなぁ」

「うぅ、ほんと、マジで男なんだって! なぁ、いったん離して? 説明するから、お願い!」


 必死に懇願するけど、山賊たちはまったく聞く耳を持ってくれない。まるで発情した獣みたいだ。目を血走らせた男たちの荒い息が、全方位から俺に降り注ぐ。本能的な嫌悪感に、全身を怖気が走った。今まで感じたことのない種類の恐怖だけど、めちゃくちゃ怖い。それと臭い! とにかく臭い! こいつら体を洗ったことあるのか?


「さあ、いよいよご開帳だぜぇ」


 山賊の手が、俺の下着にかかった。

 嫌だ。嫌すぎる。こんな目に合わなきゃいけないようなことを、なにか僕はしたでしょうか、神様? もししていたのなら謝りますし、改めます。ですからどうか、哀れな私をお救いください。一生のお願いです。ねえ、聞いてますか神様?


「神様ったらぁ!」


 俺がなけなしの信仰心を絞り出すと、下着に手をかけていた男の側頭部に矢が突き刺さった。


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