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どんなやり方で探す?

 宇宙へ、『旅人』を探しに行こう。


 この星の人たちは皆が同じ思いを抱いていましたが、どうやって追いかけるかで意見が分かれています。

 『旅人』に頼るか、頼らないか。


 彼らの残した知識の中には、「宇宙船の作り方」や「宇宙での暮らし方」のような宇宙で旅をする方法ももちろんあります。

 「どうしてそれが動くのか」はよく分かっていないものの、これを使えばすぐにでも探索の準備が始められます。

 簡単で早い方法ですが、だからこそ嫌だと思う人たちもいました。


 一応、この星の人たちは自分たちの力だけで宇宙に行くことができます。

 まだ月に、地球でいう月にあたる衛星にしか行くことができていませんが、少しずつ行ける距離は長くなっています。

 宇宙旅行には時間がかかります。『旅人』のメッセージによると、彼らは寄り道をしているらしいので、急ぐ必要もありません。彼らは、自分たちのやり方で追いかけたいのです。


 『旅人』に頼ろうという人たちは反論します。


 板から教えてもらったやりかたで、試しに作ってみた宇宙船。これは自分たちで作ったものよりもはるかに速く、宇宙一速いものである光と同じくらいの速さも出せます。


 宇宙はとても広い場所で、光と同じ速さで飛ぶことができるとしても、地球から別の恒星(太陽のような光を出す星)まで五年かかります。地球から月までの距離と比べると、地球から別の恒星までは大体一千億倍の距離。


 今、彼らが自力で作れる宇宙船は、『旅人』の宇宙船の何千、何万分の一の速さしか出せません。速く飛べる宇宙船を作っている内に、『旅人』はどこまで遠くに行ってしまうでしょう。

 やり方にこだわらない人たちは、追いつけないかもしれないことを心配していました。


 速く出発したい「頼る派」の人たち、ゆっくりでも自力で追いかけたい「頼らない派」の人たち。どちらにもそのやり方が良いという理由があるため、中々どちらを選ぶかは決まりません。


 ところが、こんなことを言う人が現れました。


「両方やっても良いんじゃない?」


 探索隊はとても大きなものになります。両方いっしょに準備するには色々なものが足りません。


「『今すぐ』両方やろうってことじゃないんだ。早く出発したい人の準備を先にして、ゆっくりで良い人たちの準備は、その後に時間をかけてやるんだ。どうせすぐにはできないんだから、どうかな?」


 やり方にこだわる人たちの中には、「自分たちの力でやることに意味がある」とこの考えを嫌がる人もいましたが、大体の人には受け入れられました。

 一人で選べるやり方は一つだけですが、全員が一つのやり方を選ばなければならないということはありません。


 先に出発したい人たちのために宇宙船が作られ始めました。とても大きいので星の上では作れません。彼らの星の近くに小さな星をいくつか引っ張ってきて、それを材料に宇宙で準備が始まりました。


 長く大変な旅に耐えられるよう、どの宇宙船も丈夫に、それぞれに必ず必要な機能は全てを持たされて作られました。食べ物や水、空気のような生きていくために必要なものを作る機能。宇宙船の部品を、周りにある星を材料にして作る機能。大事なのはこの二つです。


 何で動くのかよく分からないエンジンも、かならず二つ以上載せられました。旅の途中で食べ物が無くなっても、船が修理できなくなっても困りますが、まだ何とかなるかもしれません。しかし、船が動けなくなったら本当に何もできなくなってしまいます。だから、船を動かすエンジンだけは一つがダメになっても何とかなるよういくつも載せます。


 それぞれがトラブルに強い宇宙船。それを何隻も作り、船同士で助け合えるよう船団を組むことによって、探索隊全体はよりトラブルに強くなります。


 乗組員はすべての国から募りました。何かの専門家でなくても、身体が健康で宇宙船内での生活していける人であれば、乗る権利は与えられます。大事なのは、『旅人』を探したいと思う気持ちの強さでした。

 一生かけて探し続けても、見つからないかもしれない。子供に、孫に、それ以降の子孫の代になっても見つからないかもしれない。それでも、探しに行きたいと思えるか。

 そう聞かれて「はい」と答えられる人たちが、宇宙船の乗組員になりました。


 出発の瞬間は、カプセルを開ける瞬間と同じように世界中に放送されました。

 「頼らない派」の人たちは、自分たちの旅立つ日の事を思いながら「頼る派」の旅立ちを見送ります。


 「さようなら」ではなく、「いつかまた」。

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