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プロローグ5

「「「過去に戻って仲間を集める???」」」

「そうだ」


 所変わってここはこの研究所内にある休憩場。見たこともない家具に床の模様。聴いたこともない音楽がどこからか流れており、天井の照明器具は壁の内部に設置されている。更には薄暗い室内に漂うほんのりと甘い香り。何から何まで初めて見る。

 そんな部屋の中心に置かれた円卓にわたし達は座り、メタスターシさんから話を聞いていたのだが、予想打にしない言葉にわたし達は力のない返答をする。過去に戻る? 仲間を集める?


「それはメタスターシさんのおっしゃっていた過去に転移するってことですかい?」

「その通り。正確には僕の力ではなく、『テレポーター』を使ってだけどね」

「確か行きたい場所を思い浮かべるとその場所への門だか穴だかを作るからくりだっけか?」

「うん。それは何も現代に限った話ではない。過去を思い浮かべれば過去にだって行けるし、あの世だって行けるんだ」

「「「あの世!?」」」


 円卓に置かれていた茶菓子を食べていたのだが、動揺からか思わず手から落としてしまった。あの世って事は……死んだ同志たちにも会いに行けるってこと?


「組のみんなに……会えるの?」


 あの世に行けるのなら会いたい人は何人もいる。近藤さんに土方さん、それに組のみんな……


「……ううん。やっぱりいい。今は会わないわ」

「総子ちゃん良いのか?」

「ええ。会うのは今じゃなくて……『奴』を殺した後よ!」

「へっ! そりゃいいや!」

「気に入りやしたよ。そっちの方が良いですねぇ」


 わたし達は笑顔で腕をぶつけ合い、互いを鼓舞し合う。そう。悲しみに暮れて会うのではなく、勝利したことを……仇を討った後に、勝利の報告をするんだ!


「それでここからが本題だ」


 メタスターシさんは飲み物の入った容器を机に置き、本題に入った。


「過去に戻って仲間を集める……ですよね?」

「ああ。過去の猛者達を集める計画だ」

「昔って言うと……自慢じゃねぇがそんなに知らないぜ?」

「織田信長……豊臣秀吉……徳川家康……とかですかい?」


 武田信玄や上杉謙信……伊達政宗や本田忠勝とか? でも……


「彼らが弱いだとか、頭が悪いとは言わないけど、彼らが『奴』と戦えるとは到底思えないわね」


 それぞれが腕っぷしや知略、統率力などで名を上げたのは知ってるけど、直接戦ったわたしだからこそわかってしまう。恐らく……いや、絶対に『奴』には勝てない。


「メタスターシさん? こういったらなんですけど、昔の武将達では勝てないかも……」

「沖田ちゃん。僕は過去の武将を呼んで来いなんて思ってない。彼らは強いかもしれないけど、『奴』には到底及ばなそうだということは想像がつく」

「え? それじゃ一体誰を呼ぶんですか?」

「沖田ちゃんや右膳、道が僕に教えてくれた者達さ」


 そんな記憶はないのだけど、恐らくは過去にあったわたし達の事の言っているのね。そんな過去のわたし達がメタスターシさんに教えたって、一体何を……?


「その昔……日本にいたと呼ばれる伝説の者達さ」

「「「ま、まさか……!」」」」


 昔日本にいた伝説の者……その単語でわたし達は勘づき、互いに顔を見合わせる。メタスターシさんの言っている過去の人間って……!


「日本昔話の登場人物!?」


 かつて日本にいたとされている者達。その伝説の数々は子供のわたしでも……いや、日本人なら知らぬ人などいない程のお話だ!


「桃から生まれ、鬼退治をしたという者。竹から生まれ、月に帰った者。大きさが一寸しかない法師に、熊と相撲をとった少年なんかもいたっけ。他にも猿と蟹が戦う話に出てくる物に魂が宿っている存在。どれもこれも並大抵の戦士じゃない」

「そ、そりゃ並大抵の奴らじゃないかもしれないけどよ……」

「皆さん本当にいたかもわからないおとぎ話でっせ?」

「そうね……」


 日本人のわたし達ですらにわかには信じがたい者達。確かに彼らは武将よりも強いかもしれない。実際鬼と戦ってる者も何人かいるしね。でもそれは全部お話……とても実在したとは思えないけど……


「やってみる価値はあると思うよ。伝説というのは無からは生まれない。必ず元となる人や事件があるんだからね」


 妙に説得力のあるメタスターシさんの言葉に一同は黙り込んでしまった。


「やるかい? やらないか?」


 真っすぐ見据えられたその眼と言葉を前に、わたし達の答えは決まっていた。


「「「やる!!!」」」

「そうこなくっちゃ!」


 前のめりになりながら答えたわたし達に対して、満面の笑みを零すメタスターシさん。さぁ面白くなってきた!


「さてと! それじゃまずは誰を仲間にするかだな!」

「ちょっと待って! 思ったんだけど、わたし達に協力してくれると思う?」

「わかりやせんねぇ……少なくともあっしの前によくわかんない方がいらして、強大な敵と戦ってくれと言われても、あっしなら断りやす」


 そうよね……。見知らぬ人がいきなり現れて、しかも地球外の異星人と戦ってくれって言われても正直頭がおかしいとしか思われない。わたしでもそう思うだろう。一体どうしたら……


「今思いついたことがあるんだけどいいかな?」

「メタスターシさん? はい、どうぞ」

「会いに行くのは物語が終わった後ではなくて、物語が始まった頃というのはどうかな?」

「物語が始まった頃? って言うと……」

「昔々あるところに……ってところですかね」

「そうだ。そして君達がその物語に沿って行動し、主人公に協力してあげるんだ」

「わたし達が……主人公に?」

「そう。そして物語が終わるころに信頼もあるし、協力したという恩もある。そうなれば、きっと君達に協力してくれるだろう」


 わたし達が主人公達に協力して、物語を進める? 


「本来の物語とは異なる物語になってしまう。いわば新しい物語になるけどね」

「新しい物語を……わたし達が作るってわけね」

「そう。新物語だ」

「気に入った! やろうぜ!」

「あっしもだ。それはとても刺激的な物語になりそうですねぇ」

「ふふふっ! 新物語の幕開けね!」

「そうだ。場合によっては奏虎君達にも協力を仰ぐのもいいかもしれない」

「やりましょう!」

「「「おお!!」」」


 わたし達が過去に戻って、昔話の主人公たちに協力する! そしてわたし達で新たな物語を創り上げる! 新たな物語の幕開けね! やってやる! そして必ず『奴』を……倒して見せる!

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