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初めての街と出会い【1】

初めて氷槍を成功してから、1度も失敗していないといえば嘘になる。けれども、成功率が安定してきた。意外と母の擬音と感性だけで教えてくれるやり方がやりやすかったのかもしれない。


他の魔法の練習は特にせず、ずっと氷槍の成功率をあげていった。母曰く、成功する確率が低い魔法を5つ持っているよりも、必ず成功する魔法を1つ持っている方がいいと言っていた。


魔力精製、氷槍、どちらとも使う時の感覚やコツなどを覚えた。今では魔法を使うときのルーティン的なものも出来上がっている。


1度大きく息を吐く。息を吸うのと同時に魔力精製を使う。

魔力精製は1年間の練習により無詠唱でできるようになった。息を吐くのと同時に素早く魔法陣を展開していく。


氷槍(イエロ・ランス)


勢いよく氷の槍が木に向かって飛んでいく。1年前よりも成功率が上がり、威力も上がっている。


グサッと木に刺さったかと思えば氷の槍は消えていた。正確には消えてはいない。


「やった……穴が空いた……」


達成感で満たされた。


木を貫通して奥に飛んでいったのだ。


1年前、母と約束した。魔法であの木を貫いたら街に行ってもいいと。父は「そんな課題を課さなくても……」って言っていたが、それくらいのことをしなければ知らない土地で生き延びていくことはできないだろうと、その課題を受けた。


直ぐに母と父を呼んで穴が空いた木を見せた。穴が空いている所を触ったり指を通してみたりしている。


「セネ、よく頑張ったね。街に出ることを許可します」


「ついに、行ってもいいんですね?!」


「ええ。ここまで出来たのならひとまず安心でしょう。街に出る準備が出来たらすぐにでも街にいっていいですよ」


「それでも、名残惜しいと言いますか……その、もう少しやった方がいいのではとも思うんです」


「村に残ってくれるのは母として嬉しいですが、そんなことを言っていたら、いつになっても夢は果たせませんよ?街に出ても練習は出来ます。私なんかよりももっといい術士がいらっしゃいますよ。私はセネの夢を応援すると決めました。だから、たくさんの人を英雄のように救ってあげてください」


母も本当は離れるのが苦しいなんてこと分かっている。それでも笑顔を向けてくれるのは本当に尊敬しなければならない。


必ず人のためになるようなことを果たして帰ってくる。そう心に決めた。


「分かりました。準備が出来次第、街に行こうと思います」


「……よく頑張った」


父は一言だけそう言って「仕事があるから」と帰って行った。その時顔は見せてくれなかった。



*****



1週間もせずに支度は終わった。持っていくものはほとんどなく、何冊かの本と透明の石、着替えを何着かをかばんに詰め込んで準備が完了した。


明日の朝に出発する。目的はここから東にずっと進んだところにあるリュタロスという街だ。



*****



「ああ、頑張れよ。ただ、セネは元々体が弱い。それは自分が一番わかっているはずだ。無理はするなよ。少しずつでいい」とか、「これ、ちょっとだけど持って行って。初めは色々と大変でしょう。お仕事が落ち着いてきたらでいいから、また顔を見せに来てね」とか、心配してくれるのは嬉しいけれども、本当はそれどころじゃない。


(やばい、眠たい……)


昨日の夜、なんだかワクワクしたり、ドキドキしたりして眠れなかった。


(クマとかできてないかな……)


今、目が充血していたり、クマができていたりしていたら、余計に心配をかけてしまうかもしれない。別れの時には心を込めて、しっかりと返事をした。そして振り返らずに早足にその場を離れた。



*****



途中まではいつものランニングルートと一緒だ。


「おお、セネ!今日は大荷物やなー」


「おはようございます。今日からここを離れるんですよ。会えなくなるのが寂しいですけど、夢のためなんで……」


「そうか……会えなくなるのは寂しいな……またこっちには戻ってくるのか?」


「はい。必ず戻ってきますよ」


「じゃあ、それまでは死ねれんの」


数分の談笑をした後に、「夢を叶えるために頑張れ、セネならできる」と言ってくれたので、素直に嬉しかった。


「それでは、行ってきますね」


荷物を背負い直して、また歩き始めた。



*****



ランニングの時いつも会うおじさんと別れてから体感で約1時間。眠気が襲ってきた。自然と歩くスピードも遅くなり、ふらついてくる。


「ここ、気持ちいい……」


ちょうどいい所にいい感じの木陰があった。周りは草原で心地よい風もあたる。


「ここで寝て……それから走って……夜には着くか……」


ふかふかな草の上に座り、カバンをおろす。その中から一冊の本を取り出して5ページほど読んだ時に目をつむった。


寝ることしか考えていなかった。それゆえに考えも甘かった。いつ頃起きるか、どれくらいのペースで走るかなど、そんなことを気にせずにしっかりと寝る、ただそれだけを考えて寝た結果、深い眠りにつき、空が赤くなるまで起きることは無かった。

読んで頂きありがとうございますm(_ _)m


宜しければ、ブックマークをして頂けると嬉しく思います。


また、感想や評価をしていただくと励みになります。

書いていただけると、もっと嬉しく思います\└('ω')┘/


次回投稿は11月25日です。

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