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少年のこれまで【3】

夫、ロコ=デルフィから「子供の夢を壊すことはしないでくれ」と言われた。


言われた初めは何故か無性に苛立った。


それでも、そう言われた次の日に色々と考えた。


色々と言っても、自分の行動とセネの夢のことだが。


父が外出して、セネは部屋に閉じこもっていることを確認して、カリスは1人、小さく呟いた。


「……私も人のことを言えないな……」


何かを決意したように立ち上がり、セネの部屋の前に行く。


「明日、リビングに来てちょうだい。話があるわ」


そう言って晩ご飯の支度をして、自室に戻って静かに眠った。



*****



母に呼ばれた。明日話があるようだ。


何の話しだろうか。やはり夢についてはダメと言われるのだろうか。


母は僕を外に出すことに反対している。その理由は明白だ。


1度だけ兄と父に誘われて外に出ようとした時に、ものすごく怒られたのを覚えている。それからは、そのような事がないように部屋で大人しくしていた。


だけども今は……


「初めて自分のやりたいことを見つけたんです。お父様も頭を下げてくれました。ここまで来て引き下がるわけにはいかないですよね……」


とても心配で、怖い。何を言われるのかもわからない。それに言い返せるか……正直なところ、できないだろう。それでも勇気を振り絞って。逃げないように。


そう思いながら晩ご飯を食べに行った。


母の姿はない。もう部屋に戻ったのだろうか。


「いただきます」


今までのご飯とは違う、なんだか不思議な感じがした。


誰もいないリビング。初めての光景に少々戸惑ったのだろうか。


静かに箸を進める。


「ごちそうさまでした」


皿を洗って自分の部屋に戻る。


明日に備えて早く寝よう。そう思っていつもより早く横になったが、それから寝付くまでにかなりの時間が経った。



*****



朝ごはんを食べていると、母が向かい側に座った。


「食べ終わったらそのままでいて。話があるわ」


「……分かりました」


こうして顔を合わせるのも実に三日ぶりだ。なんだか話し方がぎこちなくなる。


ご飯を食べ終わって皿が無くなった机。母が向かい合って座る。


黙ったまま体感30秒くらいが過ぎた。


「この前、夢について考えてみろと言われて、少し考えてみたわ」


僕は予想していた話題であることに心臓の鼓動が早くなるのを感じた。1度深呼吸をして頷く。


「カルが旅に出てから少し寂しさで取り乱していたわ。ごめんなさい。セネの夢、私にも応援させてくれないかしら」


「えっ……ほ、本当ですか?!」


緊張して声が裏返っていた。しかし、そんなことはどうでもよかった。


母に応援してもらえる。その事がとても嬉しかったのだ。


「お父さんからもらった本で魔法について勉強はしているかしら?」


いつもの母だ。笑顔で話してくれるいつもの母に戻った。


「それが……ダメと言われると思って、どうも手がつけられておらず……」


「それなら安心だわ。あの本は初心者には難しいもの。ちょっと待ってて」


母が椅子を立ち、自室に戻ったかと思うと、よいしょよいしょと大きな箱2つと、小さな箱1つ持ってきた。


「この本とこれを上げるわ」


机の上にドンッと置かれた数十冊の本と、ひとつの握りこぶし1つ分位の透明な石を渡された。


「こ、これらはなんですか……?」


「まずはこの本から説明するわね。これは私が子供の頃から使ってきた魔法の書。お父さんからもらった方は魔法についてよく知ってから読んだ方がいいわ。まずはこれを読んで」


そう言って1番上に置いてあったほかの本よりは若干薄い本であった。


「これは私が初めて読んで、魔法に興味を持った本。簡単に魔法についてまとめられているから、1番初めに読んでみたらいいと思うわ」


それから本の読み方のレクチャーを受けた。


その時感じたことは、母がいつも以上に楽しそうに話してくれる事だった。


(お母様は、魔法のことが好きなのでしょうか)


少し気になったが、間髪入れずに話す母に聞くことは出来ず、透明な石についての説明が始まる。


「この石は自分がどれだけ魔法が使えるか分かる魔法石。その石に力を込めると……」


そう言いながら母は石に手を近づけた。そうすると、透明だった石がなんとも綺麗な水色に輝き始めた。


「このように光ってこれだけ魔法が使えますよって教えてくれるの。初めは白く光らせるところからが目標。どんどん色が濃くなっていったら、自分の魔法においての力が強くなっているということが分かるわ」


そう言ってその石を渡してくれる。


「約束、無理はしないこと。あと、魔法に夢中になって勉強を放ったらかしにしないこと。それだけよ」


母はそれからすぐに「お洗濯をしてくるわね。分からないことがあったらすぐに相談してね」と言ってその場を離れた。


それからはリビングで勉強をすることにした。母に魔法のことを聞くと、なんでも答えてくれた。


魔法について勉強をし始めてから2週間、知識はどんどん増えていったが、いざ実践してみるとどうも上手くいかなかった。


あの透明の石も透明のまま、何の変化もなかった。


母に相談してみると、「セネは持っている魔力が少ないのかしら?そうねえ……」


しばらく考えてくれて出た答えは、魔素を使って魔法とするものだった。


話してくれた内容は難しいものだった。本に書いていた通り、魔法を使うには魔力を使う。だが、持っている魔力は個々人で量が違うらしく、強力な魔法を使うのには、ある程度多めの魔力がいるらしい。


そこで、魔力の量が少ない僕に提案してくれたのは魔素を魔力に変換してから魔法を使うということだった。


綺麗な魔素を取り込んで、それを魔力に変換して……と、母はぺらぺらと話していたが、そこら辺の話が難しくて、頭を抱えた。


「じゃあ、実際に見せてみましょうか」


そう言って家の外に出た。実は夢を応援してくれるようになってから、家の周りなら出てもいいという許可が降りた。


そうこうしているうちに、母が「ここら辺でいいでしょう」と言って右腕を差し出した。


魔力精製(マギア・アセール)


そう言うと、空気中から色鮮やかな光が集まってくるのが分かった。


ある程度まとまった時に一気に分散したかと思うと、魔法陣が浮き上がっていた。


氷槍(イエロ・ランス)


魔法陣から放たれた氷の塊は近くにあった木に当たって散った。


「本当は何も言わなくてもできることは出来るんだけど、初めはイメージしやすいように詠唱をして練習をしてね。毎日やったら感覚は掴めると思うけど……早く習得したいからって無理しちゃダメよ」


そう注意された次の日に、何も分からないのに無理をして、疲れ果てて寝込んでしまった。

読んで頂きありがとうございますm(_ _)m


宜しければ、ブックマークをして頂けると嬉しく思います。


また、感想や評価をしていただくと励みになります。

書いていただけると、もっと嬉しく思います\└('ω')┘/


次回投稿は11月13日です。

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