第7話
【視点:早坂冬登】
「か、かっこいい!」
はっ!?
何が起こったんだ?
「あの、お名前聞いて良いですか!?」
すごく目がキラキラしている。
「早坂冬登。」
「早坂先輩ですかー!」
先輩?ということは後輩か?
ん?
僕、まだ1年だぞ。後輩なんているはずがない。
「君は?何年?」
僕はあえて誘導尋問を仕掛けることにした。
「2年です!」
おかしくないか?
「本当に2年なの?」
「そうですよ!生徒手帳見ます?」
制服のポケットから差し出される生徒手帳。
生徒手帳を見る。
裏には顔写真と学園生である証明書が印字されている。
確かに2年だ。
でも、僕は1年だぞ?何でこの子は僕を先輩と呼ぶんだ?
「先輩?」
「なんでもない、ありがとう。」
深く追求するのは今はやめておこう。僕は生徒手帳を彼女に返す。
「あの、私の事はアイリって呼んでください!」
「いきなり名前なんだ!?」
「だって先輩は、私の将来の旦那様になるかもしれないんですからぁー。」
ないない。
「それじゃ先輩、名残惜しいですけどまた今度!」
嵐のように去る。
「ツッコむ暇がなかった。」
モトキもアイリさんのテンションに負けたらしい。
「でも、いくつかおかしい点がある。」
「学年……だろ?」
モトキも違和感に気付いたようだ。
「おかしくないか?僕たちはまだ1年だぞ。後輩なんているわけがない。」
「留年でもしたかのか?」
「誰がだよ?」
「あの子。」
そんなわけない。それなら僕が後輩じゃないとおかしい。
アイリさんは明らかに『先輩』って迷いなく呼んだんだぞ。
「フユト。」
「なんだよ?」
「とりあえず屋上で昼飯食おうぜ。」
「ああ、そうだな。」
なんだ、この心のモヤモヤは。
違和感。
「篝ちゃん、居るといいな。」
「そ、そうだか。」
クールにいけ僕。
「噛んだぞフユト。」
くっ。動揺しすぎて「そうだな」を「そうだか」って言ってしまった。
長い階段を登り、屋上の入り口に到着。
「フユト、開けるぞ?」
なんで僕に確認したんだモトキ。
「早く開けてくれ。」
ガチャン。
鋼鉄のドアが重い音を奏でる。
瞬間、吹き抜ける風。四月の風はとてもやさしく頬を撫でた。
ドクン。
そして胸が高鳴る。
篝さんだ。
篝さんが屋上にいた。
僕の心はさっきの違和感をぬぐい去り、ますますの高鳴っていく。
声をかけたい。
そんな衝動が込み上げる。
「フユト、声かけないのか?」
「お、おう。そうだな。」
これまでになく緊張する。
ここが勝負どころだぞ僕!
心の中で気合いを入れた。
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