第4話
【視点:早坂冬登】
最初はホームルームから始まった。担任が軽く自己紹介をしたあと、クラス委員を決める流れになった。
その前に一人一人自己紹介があり、僕は篝さんしか耳に入ってこなかった。
とはいえ、名前と趣味くらいしか話さなかった彼女。
趣味は紅茶らしい。
趣味が紅茶って何だろうな?
飲むのか?作るのか?
作って飲むのか?
どっちでもええやん。
という一人ボケツッコミ。
「まずはクラス委員長を決めるぞー。」
担任が軽い感じで言い放つ。だが、僕たちにとってはこの一年を決める重要な場面だ。
なぜかって?
クラス委員長なんてなってみろ。忙しくて篝さんと関わる時間が減ってしまうぞ。
僕の学園生活は篝さんに捧げたのだ。
一目惚れってすげーな。自分でもびっくりする。
「立候補はなしか?」
勿論誰も挙手などしない。
「あ、あの。」
恥ずかしげに、でも確かに手を挙げたのは篝さんだった。
「だ、誰もいないのでしたら私がその役目を担いたいと思っています。」
「さすが水無月。先生は嬉しいぞ。他に異議や立候補はいないかー?」
誰も何も言わない。
「では、クラス委員長は水無月篝さん。みんな、拍手。」
一同拍手。
「水無月、お前議長をやって残りを選出してくれ。」
担任はそう言うとクラスルームの窓際に寄り、椅子に腰かける。
「はい。」
歩いて教卓に向かう篝さん。
可愛い。
ほのかに良い香りがする。これ、シャンプーかな?
って、変態か僕は。
いかんいかん。
頬っぺたをバシバシと軽く叩いて煩悩を払う。
「?」
教卓から僕を不思議そうに見つめる篝さん。
やば、また変なところを見られてしまった。
「では、えー、次は副委員長を決めたいと思います。」
モトキを除く男子全員が負けずと挙手する。
僕もそれに混ざる。
この一年を決める重要な場面だぞ!
「お前ら。」
担任は呆れている。
「えっと、これは困りました。先生、どうやって選出しましょうか?」
「んー、参ったな。」
担任も困りぎみだ。
「では、水無月。君が決めていいぞ。」
「えっ!?」
男子全員が篝さんに視線を寄せる。
くそっ、負けないぞ。
篝さんに熱い視線を向ける僕。
今年一年を決める重要な場面。
この短時間でどれだけ連呼しただろう。
運命のジャッジが下されようとしていた。
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