第3話
【視点:水無月篝】
突然二人の男の子に自己紹介を受けた私は、まだ心臓の鼓動が高かった。
フユトさん、かっこよかったな。
クラスルームに着いた私はホワイトボードに書かれた自分の席を確認して着席する。
フユトさんを探す。
居た。
私の斜め右方向。
「あの、水無月さん。」
不意に声をかけられる。
「はい?」
声をかけてきた女の子はそわそわしている。私は経験上このあとの行動が読める。
きっと、お見知りおきのあいさつだろう。
「私、今日から同じクラスになった友枝です。家は水無月さんの会社のグループ企業なんです。今後ともよろしくお願いします。」
つまらない。
私はこういうあいさつは好きじゃない。確かに水無月家は大きい。でも、私の力で成ったわけじゃない。だから、私の事は普通の学生としての立場で見て欲しい。
そう、フユトさんみたいに。
私は目で側近の相坂ちゃんに合図する。
「友枝さん、そういうお話はこの場ではすべきものではありません。」
相坂ちゃんが私の前に立ち警告する。
「し、失礼しました。では、ごきげんよう。」
焦りを見せつつこの場を去る。
「はぁ。」
ため息。
「相坂ちゃん」
「なんですか?」
私は人の目が無いところでは相坂ちゃんと呼ぶ。もちろん小声ではあるけど。
「ああいうの疲れるから、察したら止めてよね。」
「以後留意します。」
「む、堅苦しい。」
ジト目で相坂ちゃんを睨む。すると相坂ちゃんは軽く咳払いをすると、
「しょうがないわね、篝ちゃんは。」
と大胆にも切り替わる。
「篝ちゃんって呼ぶのはお屋敷だけにしてよね。」
「お嬢様って、地味にめんどくさいよね。」
「うるさい。」
ふと、またフユトさんを見つめる。
「好きなの?」
バッ!
瞬速で相坂ちゃんを見つめる。
顔、赤くなってないよね?
「図星か。」
相坂ちゃんはそのまま私の視線の先の人物を見つめる。
「タイプじゃないな。うん。」
「ちょっと!私の好みを否定しないでよ。」
はっ!?誘導尋問!?
「ニヤリ。」
相坂ちゃんにしてやられた。
「篝ちゃん、可愛い。」
「う、うるさいわよ。」
うう、まさか、私顔に出やすいのかな?
「顔に出てるよ?」
やっぱり!?
ガックリと肩を落とす私。
すると狙ったかのようなタイミングで本鈴が鳴るのだった。
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