第2話
翌日。
「モトキ、おはよ。」
昇降口で靴を履き替えているモトキに声をかける。
「おっす、フユト。」
水無月篝
僕は緊張していた。なぜなら、彼女と同じクラスになるというのが最重要事項だからだ。
「大変だな、フユト。」
「う、うるせぇよ。」
ニヤニヤしてんじゃねぇよ。
クラス表の前には人集り(ひとだかり)ができていた。その中に僕たちも混ざり、自分の名前を探す。
Aクラスには名前がない。水無月篝の名前もない。
Bクラス、ない。
Cクラス、『早坂冬登』
あった。僕の名前だ。ついでにモトキの名前もある。少し安心した。知ってるやつはいるにこしたことはない。
「フユト、篝さんの名前だ。」
「えっ!?」
ほんとだ!同じクラスだ。
「んおおおおおおお!!!!」
言葉にならない言葉を発して無意識に叫ぶ僕。周囲がざわめき、僕に視線が集まる。
「あ、あははは、な、なんでもないです、はい。」
最高に恥ずかしい。
「っ!!」
篝さんを発見した。僕のことを見てる。心臓の鼓動が一気に早まる。
しかし、こんな失態を見られるなんて最悪だ。
「泣くなよフユト。」
「泣いてねぇよ。」
「ん?」
気のせいか、篝さんがずっとこっちを見ている気がする。自意識過剰だろうか?
篝さんの近くには二人ほど女生徒がいる。きっと護衛係だと思う。
政界に影響力を与えるほどの御家だ。居て当然だろう。
でも、これだと声をかけにくい。
「水無月篝さん、同じクラスになった相馬元基です、よろしく。」
うわ、あいつ!なに先に声かけに行ってんだよ!
慌てて追いかける。
「モトキお前!」
「よう、フユト。篝さん、こいつは俺の親友のフユト。俺含め改めてよろしくね。」
篝さんはあっけにとられた顔をしている。
「よろしく、水無月さん。」
さすがに初対面で篝さんなんて言えるかよ。
護衛係らしき女生徒が篝さんの前に出るが、彼女がそれを止める。そして、僕たちの前に一歩歩み寄る。
「ありがとうございます。水無月篝です。よろしくお願いいたします。」
ペコリと一礼する彼女。
気のせいかな?顔、赤くないか?
「あの、フユトさんとモトキさんとお呼びして構わないでしょうか?」
「俺は構わないよ。」
軽く頬笑むモトキ。
「僕も構わないよ。」
「分かりました。それでは私の事も篝と呼んでいただいて構いません。」
マジで!?
やったぜ。
今回は叫びそうになるのを制御できた。
そして予鈴が鳴る。
「では、失礼します。」
篝さんは一礼すると先にクラスルームへと歩き出した。
「俺たちも行こうぜ。」
「ああ。」
学園2日目。最高のスタートになった。
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