人の惑星。 後篇。
次の日、武田さんが帰ってきた。暗い顔で。
「久岡、大事な話がある。こっちにこい。」
個室に僕たちは入る。猿は外にいる。個室は二人だけになった。
「・・・今から言うことは他言無用だ。」
「・・・はい。」
空気が震えた。
「・・・猿の殺害命令が出た。」
「!?なぜですか。」
「わからん。ただ、猿の存在は人類にとっての最大のタブーとだけ言われた。」
「そんな、納得できません。」
「・・・上からの命令だ。私が殺す。」
「そんな、やめてください!。」
「警察にとって上からの命令は絶対だ。殺す。」
「・・・人でなし。」
「明日殺すいいな。」
その日のうちに上から通達がきた。上によると猿は事故で記憶を失った侵略者らしい。そういわれるとなんだか気が楽になった。しかしなるべく殺したくはない。取り調べを経て記憶を取り戻せれば、命だけは助けてやれるかもしれない。僕は取り調べをすることにした。
「本当に何も覚えてないんだな。」
「おべえてねえです。」
・・・・・本当に何も覚えてないらしい。仕方がないので大変いいにくいのだが明日殺すことを伝えた。伝えざるを得なかった。猿はうつむいたまま何も言わなくなった。・・・。
「武田さん。何とか殺すのだけはやめましょう。」
「・・・だめだ。殺す。上からの命令なうえに侵略者と分かったんだ。」
「しかし・・・。」
「殺す俺の身にもなれ。それともお前がやるか。」
もはや何も言えなかった。
いよいよ明日になった。武田さんが悲しそうに拳銃に球を入れている。猿は無表情に地面を見つめていた。僕はただただ執行の時間を待つしかなった。
「猿…僕たちを恨まないでくれ。恨むなら記憶をなくす前のお前を恨んでくれ・・・・・。」
「・・・・・。」
猿は何もしゃべらない。黙ったままである。
「さあ、時間だ。」
武田さんの声が響いた。
武田さんは静かに拳銃を猿のこめかみにつける。猿は暴れても無駄と分かっているのか一切動かない。
「最後に言い残すことはあるか。」
武田さんが静かに聞いた。猿は一言言った。
「すべてを思い出した。地球を侵略したのはお前たちだった。」
「・・・では行くぞ。」 パーン 銃声が響いた。
・・・馬鹿な。侵略者は猿のほうである。猿は死ぬ直前に苦し紛れのウソをついたのだ。そう思った。そう思いたかった。
後日、僕と武田さんは権藤博士のところを訪ねた。ちなみに猿は自力で勝手に帰ったということにした。
「そうですか、残念ですね。ロケットできたのに。」
「ありがとうございます。ロケットはこちらで引き取らせていただきますので。」
「はい。ところでロケットに変なマークがあるのですが。」
「?どれですか。」
僕たちはマークを見た。
「どうですかこれ。どう見ても地球ですよね。イヤー偶然ってあるんですね。」
僕は何も言えなかった。
「・・・・・人類にとっての最大のタブー・・・か。」
武田さんの声が無情に響いた。




