表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

vol.8

「ところで私のせいでお話の腰が折れてしまいましたよね?

 本当にごめんなさい。・・・水口さん、あなたゲームとかする?」


「多少は。あ、でもRPGとかが多いです」


「このゲームご存知かしら?」



駿河さんが鞄の中から小さなパッケージを取りだす。

渡されたそれを見ると・・・あ、知ってる このゲーム。



「これね、友達が勤めてるゲーム制作会社のソフトなの。

結構話題になったんだけど、聞いたことないかしら?」


「知ってます!たしかヒロインが一流法律家を目指すんですよね」


「ええ、そう、でも主旨は育成よりも男性同僚や先輩、

依頼者との恋愛にあるんだけど・・・」


「ええ、友達にファンがいて薦められたことありますよ」


「パッケージの裏を見て」


「裏ですか?」



裏?裏に何があるんだろう。

疑問に思いながらも素直にひっくりかえしてみると・・・



「あれ!?この名前」



なんと!目の前の方々のお名前があるじゃありませんか!

うわー こんな有名なゲームに出てる人たちなんだ。

すっごーい。



「驚いたな、真琴ちゃん、まさか君が俺の出てるゲーム持ち歩いてるなんて」



遠江さんの言葉を軽くスルーして、駿河さんは私の方を向いている。

・・・いいのかなぁ



「ハードをお持ちならそれ上げるわ。私はもう大方コンプリートしてしまったし」


「へぇ・・・こんな有名なゲームのお仕事をされている方たちだったんですね」



そうらしいわね、と駿河さんが肩をすくめる。



「でもいいんですか?」


「ええ。だって私も申し訳ないけど頂きものだし、気に入ったら次回作を買ってあげて」


「ありがとうございます・・へぇ・・・これが」



手の中にある小さな重み


さっき駿河さんにもらった槇原さんたちが出ているゲーム

知らない事とはいえ、かなり失礼な事を言ったっぽい

遠江さんは駿河さんとお話されるのに夢中だけど

槇原さんはなんか機嫌が悪いような気がする。



謝っておいたほうがいいよね…



「あの…槇原さん…」



呼びかけた私に槇原さんの視線が向けられる。

ひぇぇぇぇ…ちょっと怖いかも でもきちんと謝らなくちゃ。



「知らなかったとはいえ、失礼な発言ばかりすみませんでした…」



軽く頭も下げておく。



「いや…知らなかったんだし仕方ないよ」



と。言ってはくれるものの笑顔には程遠い

よほどプライドをこわしちゃったんだなぁと考えてると



「知らなかったのは仕方ないけど正直、ちょっと悲しかったからね。

だから真澄ちゃんにはペナルティーってことで1つお願い聞いてもらっちゃおっかな」



遠江さんが発言する。

お願い?なんだろ?


とにかくこの空気をなんとかしたくて頷く。

視界の端で駿河さんがなんか慌ててたけど

ごめんなさい、スルーさせてもらう。



「お願いってなんですか?」


「んとね、槇の事これから名前で呼ぶこと!」



にこやかな笑顔で宣言されたお願い。


私はびっくり

駿河さんは唖然

槇原さん本人は「は!?」っと

各自遠江さんを見つめていた。











遠江さんの発言に私以外の二人がほぼ同時に反応した。

駿河さんは氷のように冷たい視線を遠江さんに投げ 、心底呆れたって顔をしている。

槇原さんは「誠さん!?」と遠江さんが言い出したことが信じられないと言いたげに。

私はどうしていいのかわからずに こそっと槇原さんの様子を伺う。



遠江さんは何故いきなりこんなこと言い出したんだろう。

私と槇原さんは出会ってまだたった2日だ。

たった2日前に偶然出会った女にいきなり名前を呼ばれても槇原さんだって良い迷惑だ

だからこんなに戸惑ってるんだろうし


第一私…槇原さんの下の名前忘れちゃったよ…

って、この状況で言えません!



槇原さんに問い詰められてる遠江さんは

「だって俺の名前呼んでもらっても真琴ちゃんか俺かわかんないじゃない」

なんて訳のわからない持論を展開している。


てか、駿河さんの事勝手にお名前で呼べません。

ご本人の許可もないのに



なんて言ったら火に油っぽいのでひたすら沈黙

この隙に槇原さんのお名前なんとしても思い出しておかなくちゃ…

あ!駿河さんにもらったゲームの裏にあったじゃん!

一筋の光明を見いだし、そっと裏返してお名前確認。


槇原まきはら じんさん

槇原 仁さん…おし、覚えた。

遠江さんは誠さん、駿河さんは…どんな字を書くんだろ?

でも、まことさん…よしこれで大丈夫。



そっとゲームをもとに戻し、どうするのかなぁと

私は半ば他人事のようにお三方を眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ