vol.5
お待たせしちゃってごめんなさい
病院が思った以上に混んでて予定時間過ぎた更新になりました。
今度から総合病院にいくときは予約更新しよう・・・そうしよう・・・
てなわけでvol.5です。楽しんでください♪
その後何度も「信じられない」と、遠江さんがつぶやくので
「一種の緊急避難処置じゃないですか?
今朝も早くから仕事があるって仰ってましたし。
背に腹は替えられないんじゃなかったのかと」
と、言うと腕を組んで「うーん」とうなり出す。
そりゃ昨日今日知り合った程度の人間に家を知られるのは
どうかと思ってるんだろうけど、別に私はあの人の家が
どこだろうと知ったこっちゃないし、事実道のりはすでに半分消えかかっている。
「2~3日もすれば綺麗さっぱり消えますよ」と言うと「それもなぁ・・」と言う。
どうしてほしいんだこの人は。
さて、どうやって逃げようか考えていると鞄の中の携帯が震える。
ラッキーと思い取り出すと見知らぬ番号。
誰だー?と思い出ると・・・げっ、張本人様でした。
『もしもし、槇原ですが。水口さん、今大丈夫?』
「いえ、大丈夫ではありません」
『あ、ごめん。じゃあ都合良くなったらワンプチくれる?
折り返しかけ直すから』
「いえ、遠江さんに捕まっているだけです」
『・・・は?誠さん!?なんで?』
「電車の中で偶然お会いしまして、拉致られてます』
最初は大人しく私の会話を耳にしないようにしていた遠江さんだが
相手が槇原さんだとわかると、とたんに目がきらきら輝き
興味津々といった顔つきにかわる。
『拉致られたって・・・・』
電話の向こうで少し唖然とした槇原さんの声。
でも、これはどう見ても拉致だと思う。
おかげで今日の講義はパーだ。
それを彼らに言うつもりは無いけれど。
『昨日のお礼に都合が良いときに食事でもって思ってたんだけど
悪い、この電話遠江さんに変わってくれる?』
私は無言のまま、携帯を遠江さんに差し出す。
え?俺?って顔を彼はしたけど素直に電話を受け取った。
槇原さんと私の携帯で話し始めた遠江さんは
「いや、その」だとか「偶然だと、偶然!」だとか。
どうやら電話の向こうの槇原さんに問いつめられているようだ。
それでしどろもどろで反論にもならない反論をしているのか。
私は通りがかりのウェイトレスさんにカフェオレを再オーダーする。
それが運ばれてくると、目の前の展開を眺めながら
それをゆっくり味わっていた。
*
カフェオレが半分に減った頃、「じゃあ」と言って会話が終わる。
とたんテーブルにべしゃっと遠江さんはつっぷし
片手だけ差し出して私に携帯を返してきた。
私は受け取り、鞄の定位置にもどす。
目の前にあるつむじをつつこうか悩んでいると
ゆっくりと遠江さんが動き出した。
「先輩、後輩の語らいは済んだようですので私はそろそろ失礼します。」
一応そう声をかけるととたん電池が新しくなったように彼は動き出す。
「いやいやいや、そんなに慌てなくてもいいでしょ?
それに何か急ぎの用でもある?」
「いえ、別に・・・」
と、言った瞬間、しまった!「ある」って言っておけば
逃げられたのにと自分のうっかりを悔やむ。
「槇が来るからさ、もう少しここでお茶してよ?」
「・・・なんで槇原さんが?」
「どうやら近くにいたみたいなの。で、こっち来るって」
「はぁ・・・でも何で来るんですか?」
「悪魔に拉致られたお姫さまを助けるためじゃない?」
お姫さま?というと遠江さんはこっくりうなずき
自分を悪魔と言って指さす。
槇原さんの先輩ということはそこそこ良いご年齢なのに
悪魔とお姫さまときましたか。
ってことは何か?槇原さんは王子様か?
車は昨日誘拐された所だから徒歩の王子様?
しまらねぇーと少しだけ思ったのは本人には絶対に言えない。
私と遠江さんは槇原さんが来るまで
とりとめのない世間話で時間をつぶすのだった。