vol.26
手渡されたマグカップ。
注がれてる暖かいカフェオーレ。
ふーふーさましながら飲んでいると感じる視線。
「あの・・・仁さん?」
どうしたのかな?やっぱり顔まだ腫れてるのかな
恥ずかしくてあまり顔が見られない。
「あ、ごめんごめん。いや・・・本当なんだなーって思ってさ」
言葉の意味がわからず、思わず顔を仁さんの方に向けると
「俺って真澄ちゃんより年上だからさ、OKもらえるなんて正直思ってなかった。
だから今すっごく嬉しいんだ」
そう言ってにっこりと優しい笑顔で返された。
かーっと頬に血が集まっていくのがわかる。
・・・・・その笑顔は反則です。
「・・・私も・・・デス」
それでもちゃんと言わなくちゃいけないから
真っ赤になったままうつむいてぼそぼそ呟くと頭をぽんぽんと軽くなでられた。
何気ない仕草に心臓が跳ねる。
わかってやってる?わかってやってる?
この人は私を心臓発作で殺す気かもしれない・・・なんて考えてみたり。
ああ、自分の考えながらバカすぎる。落ち着け私ー!
「真澄ちゃん、お腹空かない?」
物思いにふけっていたらかけられた言葉。
「いいえ」と答えようとしたら空気を読まずに鳴るお腹
ちょっとー!勘弁してー!
仁さんは目を丸くしたかと思うとくすくす笑い出した。
ああ、穴があったら入りたいってのはこういう事を言うのね。
さっきとは別の意味で真っ赤になっていると
仁さんはジャケットを片手に立ち上がる。
「近所に旨いパン屋があるんだ、一緒に買いに行こうか」
「はい・・・」
返事をして立ち上がる。
ぱぱっと全体を見える範囲でチェック。
服のまま寝ちゃったけど大きな皺にはなってない。
これなら一緒に外にでても恥ずかしくないかな・・・
そう判断するとボレロの裾を軽くひっぱって形を直し、
コップを流しに運んで、鞄を手に取ると仁さんの元へ
「お待たせしました」
「あ、うん 大丈夫。・・・あのさ」
「はい?」
「手、つないでも良い?」
目の前に差し出された手のひら
断る理由もないので目の前に出された手に小さくうなずくとそっと滑り込ませる。
ぎゅっと握りしめられた手の暖かさと骨太さに自分とは違う性を感じ、
ドキドキしだした心臓の音が聞こえないか、
手のひらに汗をかいちゃわないか、それだけが心配だった。
*
軽く振動して車が自宅の前に停まる。
シートベルトをはずそうともぞもぞしていると頭上から落ちてくる声。
「外泊しちゃったけど大丈夫?」
「うち結構放任なので大丈夫です」
「どうしよう、ご挨拶しておいた方がいいかな」
「あーこの時間だと両親もう仕事でいないです」
「近いうちにご挨拶しておきたいよなぁ・・・」
「仁さん?」
「ほら、けじめだから」
その言葉に顔が赤くなる。
ちゃんと考えてくれていることがとっても嬉しくて。
「仕事の都合があるからすぐには無理かもだけど
ご挨拶はしておきたいからご都合聞いてみてくれる?」
「はい」
車から降りると助手席の窓が仁さんの手によって開けられた。
何か用事かな?っと思っていると差し出された1枚の紙。
「仁さん?」
「とりあえず今わかってる俺のスケジュール渡しておくよ
真澄ちゃん気にして連絡してくれなさそうだからさ」
・・・なんでわかったんだろう。
学生の私とは違い、仁さんのお仕事は不定期で
連絡あんまりできないなぁって考えていたこと。
そんなに私ってわかりやすいのかなぁ?
「仕事中だと返事できないけど、終わったら必ず返事するから
気にせず連絡してきて?じゃないと俺が寂しい」
えーっと、仁さんこういうキャラでしたっけ?
くすくす笑うとちょっと照れたような顔。
「よかったら真澄ちゃんの都合も今度教えて?
デートの時間合わせなくちゃだしね」
「はい・・・」
デート。
その言葉にまた顔が赤くなる。
今日一日でどれだけ真っ赤になったことだろう。
でもそれがイヤじゃないのは・・・ああ、落ちてるよなぁ
これから仕事だという仁さんを見送って家に入る。
昨日の今頃は仁さんにかわいく見てもらいたくてバタバタしてた。
それがたった1日で仁さんは私の彼氏に・・・なった。
ヤバ、なんか恥ずかしい。
また赤面した頬を抑え、私は自室へと向かった。




