表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/27

vol.25

え?


今、仁さんの言った言葉が頭の中をぐるぐる回る。

仁さんは今「私を」好きだと言ってくれた・・・よね?

涙でぼやけているけど、仁さんは私の瞳をしっかり見つめているようで

少なくとも空気からは冗談だとか、嘘だとかは感じられない。


心はぐるぐる回る。



「・・・真澄ちゃん」



気がつけば仁さんがすぐ目の前に。

呼ばれた自分の名前がこんなにもうれしい。

さっきまでの悲しみの涙ではなく、うれしさで涙が湧いてくるのが止められない。



「仁さん・・・」


「泣かないで、真澄ちゃんに泣かれるとどうしていいのかわからない」



そっと壊れ物を扱うかのように抱きしめられる。

その優しさがとっても嬉しかった。



「・・・・・私も」


「え?」


「私も仁さんが、好き・・・です」



仁さんの胸に顔をうずめたまま小さくつぶやくと

その体がビクっと大きく反応する。



「・・・・・真澄ちゃん・・・本当・・・に?」


「はい」


「じゃあその涙は・・・嫌じゃないの?」


「嫌なわけ・・・ないじゃないですか」



小さな声で抗議した瞬間、今までで一番強い力で抱きしめられた。



「真澄ちゃん、真澄ちゃん」



仁さんがそれしか言えないというように私の名前を呼び続ける。

私は仁さんの体から腕を引き抜くと、その背中にそっと腕を回し

自分の気持ちをあらわすかのように少しだけ力を込めた。






*






どのくらい時間がたったのか、私の涙もすっかり乾いていた。

鼓動も早いものからゆっくりしたものに変わっている。

私の体に伝わる仁さんの鼓動もゆっくりしたものに。

くちゃくちゃになった顔を見せたくないけど、仁さんの腕は私を放してくれない。


少しだけ身じろぎすると体の間に隙間ができ、仁さんが私をやさしく見下ろしている。



「キス、していい?」



その言葉に私は瞳を閉じることで無言の返事を返した。


お互いの意識がはっきりしている中でのキス。

触れるだけのそれに収まっていた鼓動がまた駆け足になっていく。

それは彼も同じで、今、お互いのことは何もわからないことがないと

思えるような、そんな空気が私たちの間に流れていた。



「真澄ちゃん、俺と付き合ってくれる?」


「・・・・・はい」



耳元で小さくささやかれた言葉に私は小さな言葉で

でもしっかりと返事を返した。






*






「コーヒー入れるからその間に顔洗ってくる?」



名残惜しそうに離された腕になぜか急に寒さを感じる。

実際寒いわけじゃないけど、少し寂しい気分。

でも泣きはらした顔を仁さんに見せ続けるのも嫌だったので

お言葉に甘えて洗面所を借りることにした。



「なんでも好きに使って」



案内された洗面所でタオルを手渡される。


男の人ってこんなに綺麗にしてるのかな

それとも仁さんの性格なのかな

使って良いっていわれたけど借りるのもなんだし・・・


洗顔フォームや化粧水なんかが棚に整然と並んでいるのを見て

しばらく考えた後、元々お化粧もそんなにしっかりしていたわけでもないし

一晩寝て、泣いて、残ってたお化粧も落ちてしまったと判断して

ぬるま湯で顔を洗うだけにしておいた。


何度も顔を洗い、さっぱりしたのでタオルを使い水気を拭う。

ほっと一息ついて、鏡で自分の顔を見つめてみる。


ああ、泣いたから顔少し浮腫んで、目なんか真っ赤になっちゃってるよ。

今は少しでもかわいくなりたいのに・・・・。


冷たい水で目の周りを冷やしたり、冷たくなった手でほほを押さえたりしてみる。

そんな努力をしていたら、ずいぶん時間がたっていたようで

心配した仁さんが洗面所を覗きに来てしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ