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vol.21

家に帰ると速攻脱衣所へ。

防水バックから汚れ物を取り出し、自分が来ていた服も脱ぐと

洗濯機に入れ、乾燥までセットしてお風呂場へ。

お湯がたまるのを待つ間、髪と身体を洗い上げる。

トリートメントをした髪をまとめ上げる頃には

お湯が半分以上湯船にたまっていたので、そのままゆっくり身体を沈めた。


「あ~」


我ながら親父くさいとは思うけれど、ついつい言葉が口から漏れる。

身体をゆっくり伸ばし、腕とふくらはぎをお湯の中でマッサージ。

ひねった首がガキっと音を立てる。

あー、いい音。


今回のツーリングは自分のペースじゃなかったから少し疲れた。

それでも帰る頃には初めての子もバイクになれ、

そこそこ安定したスピードで走れていたので

思い切って遠出したのは正解だとおもう。

ま、バイクの慣らし運転にも良い距離だし。


後・・・驚いたこともあったけれど。


裕哉・・・まさか私が彼の恋愛対象になっているだなんて思いもしなかった。

あの時抱きしめられた感覚は、今もうっすらと身体に残っている。

それくらい力強く、想いを全身で表された気がした。


でも私は彼を選べなかった・・・

すでに仁さんが心の中にいたことに気がついたから。

仁さんが私をどう思っているのかはわからないけれど

いつか「妹分」じゃなく「異性」として見てくれたら・・・ただ、それだけを願う。


なんて浅ましい考え。

人の心なんてどうしようもできないのに。


私は自分の中に浮かんだ埒もない考えを洗い流すかのように

何度も湯船のお湯で顔を洗い続けた。












しばらくお湯の中でのんびりした後、身体を湯船から引き上げる。

お湯につかるのは大好きだけど、あがるときの虚脱感はあまり好きじゃない。

トリートメントをシャワーで流し、身体を拭いて着替えをするころには

洗濯物も無事終了していた。


できあがった洗濯物をそのままわさっと抱きかかえ、自室へ運び、

ベッドの上で畳んで、クローゼットにしまうと

ドレッサーの前で髪の毛を乾かし始める。

ああ、そうだ服も選ばなくちゃ。


ドライヤーを一端とめ、再びクローゼットへ。

かかっている洋服を眺め、悩むことしばし。


今日はバイクに乗らないからまずデニムははずそう。

仁さんちはテーブルだったけど、もしかしたら床に座ることもあるかもなので

タイトスカートもパス。フレアーのスカートがいい。

長め?短め?どうしよう・・・大人っぽく見せるならロングかな。

そう結論づけると、マキシ丈のロングワンピースに薄手の長袖Tシャツ

デニムのボレロをチョイスしてハンガーにかけ、出しておく。

靴はサボでいいかな。


選んだ服を姿見で身体に合わせてみる。

うん、これなら一緒に歩いても子どもっぽく見えない・・・よね?

まるで自分に言い聞かせるように鏡の中の自分を見つめる。

そうしてハタと次の難問に気がついた。


髪型はどうしよう・・・・?

おろしたまま?・・・お鍋なのにそれはまずい気がする。

ポニーテールにしちゃう?・・・子どもっぽくならないかな?

後ろで1つにまとめちゃう?・・・おばさんっぽくなっちゃうかも・・・


櫛をもって髪を上げてみたりおろしてみたり鏡の前で少々悩む。


ポニーテールは子どもっぽくなっちゃうので却下。

おろしたままもお鍋に髪が入ると困ったことになるので

サイドを三つ編みにして、後ろで他の髪が落ちてこないようにバレッタで止めることにした。


お化粧はどうしよう・・・・・

フルメイクはこの髪型に合わないよね・・・・

かといってすっぴんもちょっと恥ずかしいし・・・

お粉だけはたいてグロスつけるくらいにしておく?

アイメイクは必要かしら?


気がつけばドレッサーの上は持ってる化粧品があちこちにちらばっていた。











pirupirupiru


携帯のアラームが鳴る音で目が覚める。

髪の毛を乾かした後、仮眠を取ろうとベッドに潜り込んだんだった。

大きくのびを一つし、ベッドから身を起こす。

少し寝たのが良かったのか、帰宅したときの疲れは身体に残っていない。


寝起きの顔で会いに行けないもんね。


いつ電話がかかってくるか解らないので携帯を持ったまま階下へ。

冷たい水で顔を洗うと、頭の中もすっきりしてくる。

予定通りに髪型を整え、ほんの軽くお化粧をすませた後

キッチンに戻りマグカップにカフェオレを作る。


いつ電話かかってくるのかな。

お仕事夕方には終わるって言ってたけど何時くらいかな・・・


ふーふーとさましながらカフェオレを飲んでいると、突然電話が電子音を響かせた。

思わずどきっとししまい、あたふたして、ついボタンに手が伸びるのが遅くなってしまう。


「もしもし!」


『もしもし、槇原です。真澄ちゃん?』



何故私はこの声に何も感じることがなかったんだろう。

こんなにもやさしい、暖かい声に。



「お仕事お疲れ様です 仁さん」


『ありがとう、やっと終わったよ。待たせちゃったかな?』


「いいえ、大丈夫ですよ」


『ちゃんとゆっくりした?』


「はい、仮眠もとりましたから元気です」



電話をしながらカップを流しに運ぶ。

電話が終わったらすぐ出る準備をしなくちゃ。



『そっかならよかった。じゃあ出てこられる?』


「はい」


『んじゃ俺も今から帰るから17時にうちのマンションでどう?』


「大丈夫です」


『じゃあそういうことで、あ、ちゃんとタクシー使ってね?』


「はい」



電話を切るとカップを洗い、用意していた服に急いで着替える。

タクシー会社に電話して、配車を頼んで

カニの入ったBOX確認して、お願いするビールの入った紙袋用意して。


下駄箱から靴を取り出し

玄関の姿見でもう一度チェックし、おかしいところがないか再確認。


うん、スカートにほつれもないしゴミもついていない。

グロスちょっと塗りすぎたかな・・・

もうすこし抑えめな方がかわいく見えるかな・・・。


あわてて家にあがり、リビングでティッシュをとると軽く唇を押さえる。


手鏡でもう一度口元を確認して

・・・・これでいいかなぁ。

少しでもいつもよりかわいく見えたらと願ってしまう。


そんな事をやっていると玄関の方から聞こえるクラクション。


うわ、もう来た。


BOXと鞄、紙袋を手にすると、私は少し慌てて家を後にした。

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