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vol.19

ツーリングの途中途中で携帯で写メをとって仁さんへと送る。

何故そうしようとおもったのかはわからない。

でも、この景色を一緒に見れたらな・・・と考えたから。



「真澄、今回写メ多くないか?」


「そうかな?・・・記念にね」



そういうと裕哉はお前も入れよ写してやると私から携帯を取り上げた。

写して貰った景色に写る私。

仁さんはどう見るだろう・・・。



『友達に写して貰いました 元気に走ってます♪』



そう文章をつけ、もう指が覚えてしまった

アドレスへメールを送信していた。



北海道への旅も順調に進み、フェリーも待つことなく乗れた。

今回は日数が短いので、函館近辺を中心に回る。

五稜郭タワーに上り、景色を堪能したあと

函館のみでチェーン展開するハンバーガーショップでランチを。

夜は街に出て海鮮をいただく予定。

北海道ってなんでも美味しいなぁと思いながらハンバーガーにかぶりついていた。











「ねぇ真澄は自由行動どうすんの?」


「私?ちょっと市場へ行こうかなって考えてる」


「市場?」


「うん、家にカニでも送ろうかと」


「夕べあれだけ食べたのにまだカニはいるの!?」


「お土産は別ですー」


「じゃあ、俺も行こうかな」


「裕哉も?めっずらしー」



家にお土産なんか今まで買ったことないタイプだったのでちょっと驚く。

でもたしかに夕べのカニは美味しかったし、家族にも・・・って気持ちになったのかな。



「俺だって土産くらい買うってーの」


「はいはい、んじゃ行こう」


「お、おう」



裕哉と二人、目をつけていた市場へ。

ふと目についたカニと魚介類のセット。

カニも2杯入ってるし、お得感がびしばし。

家へのお土産はこれに決定・・・と、思ったところで

ここ最近頭によぎる人を思い出す。


いっつも奢ってもらってばっかりだし・・・

好き嫌い大丈夫そうだし・・・

ダメなら真琴さんに食べて貰えばいいし・・・


自分の中で理由をいくつもつけ、気がつけばもう1セット

帰宅予定日に自宅へ届くように注文していた。

親が間違って両方あけないように片方に印を付けて貰う。

お金を払っているとビニール袋を手にさげた裕哉が戻ってきた。



「は?お前2セットも買うの?買いすぎじゃないか?」


「1つはお世話になってる人へですー

いくらなんでも2箱も家で消費できません」


「ずいぶん張り込んだな」


「ずいぶんお世話になってますから」


「ふーん・・・」


「あ、私ちょっと家に電話しておく。

 間違って両方開けられたら大変だから」


「おう、その辺で待ってる」


「はーい」



家に電話してその旨伝えると

「カニ?奮発したわね♪」と嬉しそうな母の声がした。


二人でアイスを歩きながら食べる。

これは珍しく裕哉が奢ってくれた。

「他のヤツには内緒だぞ」との言葉つきで。

異存はないのでうなずいてアイスを味わう。

濃厚なミルクがとても美味しかった。



大きな買い物を済ませると、小さな買い物へ。

バイクを昨日行った五稜郭タワーへと向ける。

裕哉も一緒だ。

別に一人でもいいと言ったのに着いてくると言うので好きにさせておいた。


店に入って真琴さんには七華亭のバターサンドを選ぶ。

たしかここのが好きだと前に聞いた気がするから。

誠さんへは・・・一瞬函館山の展望台で見た

ネーム入れてくれるキーホルダーを真琴さんとお揃いにしようかと

ちょっとだけ考えてみたけど、後が怖そうなのでやめておいた。

五稜郭に売ってる土方俊三ビールでいいだろう。

これは本数を少し多めに頼む。

この前ご飯ごちそうしてもらった立野さんや、下村さんへ

仁さんから渡して貰うためだ。

その二つも家に送ってもらうことにし、身軽になった私は

裕哉とともにみんなとの集合場所へバイクを走らせた。











特に変わったこともなく、北海道へのツーリングは無事終わった。

本州へと向かうフェリーの中、友達の何人かはすっかり眠っている。

眠る気がしなくて、風にあたるためデッキにでていたら裕哉が声をかけてきた。



「どしたー 寝ておかないと後つらいぞ」


「んー わかってる、でも風が気持ちよくて・・・」



海をかきわけて進むフェリー

舞い上がる髪が少しうっとおしくないこともないけど

この風はとても心地良い。



「なぁ」


「ん?」


「お前さ、今回やたら写メしてたよな」


「うん、景色綺麗だったからね」


「・・・誰か見せたいヤツでもいるのか?」


「・・・え?」



突然の言葉に思わず振り返る。



「な、何言ってんの。らしくないよ?」


「ああ、確かに俺らしくないかもな

お前が誰かに持って行かれるって思ったら気が気じゃないくらいに」


「・・・え?」


「前から言おうと思ってた。本当は就職がきまったら

そしたら言おうと決めてた。でもそれじゃ遅すぎるみたいだから」


「ゆう・・や?」


「真澄、俺はお前が好きだ。つきあってほしい」


「え・・・」



私を見つめる裕哉の瞳は真剣で、思わず心臓がはねる。

どう答えていいのかわからない。

裕哉のことは良い友達だと思ってたから。

まさか好かれてるなんて思ってもいなかったから。



「真澄」



そっと近寄ってきた裕哉に髪をなでられる

と、腕が裕哉に向けて引き寄せられた。


気がつけば裕哉の腕の中。



「え、裕哉?」


「俺じゃ・・・ダメか?」


「ま、待って、待って待って!裕哉、落ち着こう?」


「俺は落ち着いてる。

 お前のあんな姿を見るまでは・・・な」



心臓はありえないくらい早い鼓動を刻んでいる。

どうしよう?どうしたらいい?

頭の中が真っ白で何を言えばいいのかも思いつかない。

気がつけばだんだん裕哉の顔が近寄ってきて・・・

とっさに私は両手で裕哉の胸を押し返す



「真澄・・・?」


「ご、ごめん。でもこんなのヤダよ」


「そいつにはもう許したのか?」


「何言ってんの、そんなわけないじゃない!」



顔が赤くなっていくのがわかる。

私が仁さんと!?


そんな私をそっと裕哉は腕から解き放つ。



「お前と初めて会った頃から惚れてた。

 お前にふさわしくなりたくて頑張ってきた。

 俺の入る隙間はどこにもないのか?」



なんで勝手にそんな事言うの?

仁さんは仁さんで、裕哉は大事な友達で、どっちも無くしたくなくて。

どうしたらいいのかわかんなくて涙が出そうになったとき

ふいに真琴さんの言葉が脳裏をよぎった。

「真澄ちゃんの心のままにすればいいのよ」と。


私の・・・私の心は・・・




「ありがとう・・・」


「真澄?」


「私を好きになってくれてありがとう。

でも、ごめん。私、好きな人がいるの」



小さく言った言葉。

波にかき消されても仕方ないその音はしっかり裕哉の耳にとどいたようだった。



「俺の知ってるやつ・・か?」


「ううん、学校のみんなは誰も知らない」


「バイト先?」


「・・・に、近いかな」



まさかここで仁さんの名前をだせないので、少し濁して答える。



「そいつはお前を幸せにしてくれるのか?」


「そんなこと・・・わかんないよ・・・」


「気は変わらない?」


「たぶん・・・変わらない」


「そっか」


「・・・うん」



裕哉は手すりに背を預けると夜空を見上げる。



「あーあー、もっと早く言っておけばよかった。

そうすりゃお前を他の男になんか取られずにすんだのにな」


「・・・・・」


「もし、そいつに泣かされたらいつでも俺んとこに来い

俺はいつでもお前を待ってるから・・・じゃあな」



それだけ言うと裕哉は片手をあげて船内へ戻っていった。

男の子に告白されたのは初めてじゃない。

けれど裕哉が私を、というのは予想もしてなかった。

そして私の心が誰をむいているのかも。


今はもう寝ているであろう彼。

そのとき初めて自分から彼に会いたい

そう思っていた。

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