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vol.18

深緋はバイクの事をあまり良く知りません。

なので知ってる人から見たら「はぁ?」と思うかもしれません

そういうときはこっそり教えてもらえると嬉しいです。

(ロングツーリングは1000kmからだと友人に聞いて初めて知った!)

なんだか最近仁さんがやたら優しい・・・気がする。

元々優しい人だったけれどそれに輪をかけてというか・・・


あの電話の後、約束した映画に行った。

待ち合わせの映画館、渡されたチケットには指定席の文字。



「え?こんな高そうなチケット・・・」


「貰い物だから気にしないで」



席に着き、訪ねた私に耳元でささやく声。

思わず背中をぞわぞわしたものが駆け上がる。

うひぃー、やっぱり良いお声すぎます。


映画はアクション物だけどラブロマンスなんかもちりばめられていて

艱難辛苦を乗り越え、ヒーローと結ばれたときは思わず涙がこぼれていた。

そんな私に仁さんはハンカチをそっと差し出してくれる。

自分のも持ってたけれど、断るのもあれな気がして

そのハンカチをお借りした。


ふわっと薫る仁さんの香りにことん。

また1つ心が動いた。











その後も植物園や水族館、動物園。

いろんな所にさそわれた。


植物園では二人でお揃いの鉢植えを買い、その笑顔にどきっとした。

水族館では魚を見上げる真剣なまなざしに。

動物園ではさりげなく階段で手を貸してくれるところに。


高校生の時つきあった彼とも動物園は来たことあるけど

ここまでスマートにエスコートされた覚えはない。

まぁ彼が同学年だったということもあったんだろうけど

手もまだ柔らかくて仁さんとは全然違った。

掴まった手の大きさと骨太さに

仁さんが大人の男の人だという事を感じた。


知らない仁さんを知るたびに、私の心がことん、ことんと動く。

それが楽しくもあり、見知らぬ扉を開けるようで

少しだけ、怖くもあった。











仁さんは絶対に私にお金を出させない。

最初に借りた5000円の返却は別として


「学生にお金出させるつもりなんてないよ」の一点張りで

結果毎回私が奢ってもらっている。

いくらなんで心苦しいので最近はお弁当をもってお出かけ。

公園や景色の良いところに車をとめて

二人で私のつくったお弁当をつついている。


仁さんは細いのに健啖家だ。

よく食べ、毎回恥ずかしくなるくらいの感想をくれる。

でもそれが嬉しい。


だけど不安もある。この人は芸能人だ。

それも一部熱狂的なファンがいるらしい。

そんな人が私なんかでいいの?


真琴さんに相談したら

「自分の気持ちに聞いてごらん?」と言われた。

私の気持ち・・・私の気持ち・・・


正直よくわからない。

仁さんは好きだけど人として好きなのか

男の人として好きなのか・・・


それを仁さんがいない今回のツーリングで考えてみようと思う。











防水性のボストンバックに着替えと雨具。

いつものポーチにお財布と携帯。

キーケースで光る仁さん家の鍵はまだ返せてなく

時々私をどきりとさせる。

長距離のツーリングなのでライダースジャケットを羽織ると

みんなと待ち合わせしている高速近くのコンビニへと向かった。



「真澄ー、遅せぇぞ!」


「ごめんごめん みんな待った?」



待ち合わせ場所にはすでに10人ほどの友達。

声をかけてきたのは言い出しっぺでリーダー的存在の裕哉。

男の子だけじゃなく女の子もいる。

今回は女の子も連れてのツーリングなので

いつもよりこまめの休憩を取ることで話はついた。


目的地はツーリングといえばの北海道。


ここから約700キロ弱はある距離を

150キロ単位で細かく刻んで走る予定。

バイクの足下にあるドリンクホルダーにいれた

ストロー付きマグに健康飲料水を入れ、蓋をして準備していると

腰に付けた携帯が大きく震えた。



「もしもし」


『もしもし?真澄ちゃん?』


「仁さんこんにちは」


『今少しいい?』


「少しなら大丈夫ですよ」


『・・・あれ回りが騒がしいけど学校?』


「いいえ、これからみんなでツーリングに行くんです」


『へぇ~いいなぁ で、どこに?』


「北海道です」


『北海道!?えらくまたはりきったね』


「ええ、なんだか急にバタバタって決まっちゃって」


『そっかー 夕飯でも誘おうと思ったけど無理だな』


「ごめんなさい」


『いや、いいよ気にしないで。いつ戻ってくるの?』


「一応今日中に北海道に渡って、向こうで2泊の予定なんですけど

 ツーリング初めての子がいるのでケースバイケースです」


『そっか、帰ってきたら連絡くれる?』


「もちろんです、おみやげ買ってきますね」


『ありがとう、でも無事で帰ってきてくれたらそれでいいから』


「・・・はい」



ちょっと頬が赤くなる。

最近の仁さんはこういうこと真顔で言うのでちょっと恥ずかしい。



「真澄ぃー そろそろ出るぞー」


「あ、OK 仁さん、そういうことなので」


『真澄ちゃん、男の子もいるの!?』


「いますよ 学校の友達です。女の子だけじゃ危ないですから」


「真澄ぃー」


「はぁい もうしつこいよ!じゃあ仁さん行ってきます」


『あ、ああ・・・くれぐれも気をつけてね!?』



何をそんなに心配したのかわからないまま私は電話を切った。



「真澄ぃー」


「もう、うっさい!」



私は連絡用の無線用インカムの具合を確かめ、ヘルメットをかぶり

バイクに命を吹き込んだ。

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