vol.15
パタン…遠くでドアの閉まる音が聞こえる。
もう少し遠くでガチャっと鍵の閉まる音。
私はベッドの中で寝返りを1つ。
そうしてゆっくり目を開けて…
思わず飛び起きた!ここどこ!
心臓が全力疾走したかのように鼓動を速める。
自分の姿を確かめると一部ボタンが緩められてるも
それ以上なにかあった形跡はない。
男女間の交渉はしたことがないのではっきりとしたことはいえないけれど
そっち方面も大丈夫そうだ
もしなにかあったならわざわざ服を着せるとは思えないし
しかし全然見覚えのない部屋。
私のより少し大きなベッド。
耳をすませても何の音も聞こえない。
私は意を決してドアからそっと顔を覗かせた。
*
やはりだれもいないらしい。
少しだけ大胆にリビングらしい部屋へとむかう。
もちろんその前に服は調えた。
リビングへのドアは音もたてずひらく。
そこにもだれもいなかったので私は少し緊張をとく。
室内を見回して、テーブルの上に小さな紙袋と
メモ、そして鍵が乗っているのに気がついた。
『おはよう 真澄ちゃん
まずは君が起きるまで側にいてあげられなくて
ごめん。朝からどうしても外せない仕事があってこのメモを残しておきます。
まずここは俺の家です。
それは気がついたかな?
夕べ倒れた君をお家の方もいらっしゃらなかったようなので
勝手に家に連れて来ました。
それと君の鞄ですが誠さんがしたまま帰ってしまい
今朝まで連絡がとれませんでした。
今は駿河さんの手元にあるので安心してください
念のため交通費として5000円置いておきます
用事で動くのに必要なら使ってください。
その時は鍵、よろしくね。
鍵は次会うまで預かっててください。
後、食欲ないかもしれないけどパン買ってきました
ちゃんと食べるように。
仕事が終わったら戻ります。
そしたらちゃんと送るので家の中、自由にしてもらっていいです。
昼食もちゃんと食べること、いいね?
なにかあったら家電に電話入れます。
仁 』
あああああ…
紙袋から漂う美味しそうな焼きたてパンの香りと
カフェオーレのボトルに私は自分の失敗を理解し
ただただ頭を抱えていた。