vol.13
真琴さんからメールが来たのは仁さんと食事をした次の日のお昼。
ちょうどメールをもらった日、バイトが中番だったので
仕事が終わった真琴さんとご飯に行くことになった。
今日は仕事で両親が家におらず、晩御飯をどうしようか
考えているところだったので渡りに船だったのだ
それに昨日の事も報告したかったし…
*
「「お疲れ様で~す」」
真琴さんの手にはカルピスサワー
私の手にはカシスオレンジ
私達はそれぞれの仕事場近くに最近できた
居酒屋くまくま亭でグラスをあわせていた。
ここ、くまくま亭はお料理が美味しいことで
最近有名になって来てる居酒屋で
結構早い時間に満席になることも多い。
今日も私と真琴さんで満席になっていた。
「待たずにすんだのはラッキーだったね」と
話していたけど、案内されたのは二人掛けの小さなテーブル。
キャッシャーのすぐ側なので、ちょっと落ち着かない場所だった。
運ばれて来たチーズ春巻や唐揚げをつつく。
最初はお互いの事なんか話していたけど
ふいに真琴さんが小声になり
「お食事会はどうだったの?」と聞いてきた。
あえて固有名称を出さないのは
一応彼が有名人であるからだろう。
私も彼の名前は出さずに
連れていってもらったお店のこと
美味しかったお料理のこと、
後家まで送ってもらったことなど普通に話した。
「そっか、楽しかった?」
聞かれた事に楽しかったのは事実なので素直に頷く。
そうすると真琴さんは「ならよかった」とにっこり笑ってくれた。
ああ、心配してくれてたんだなぁと思う。
お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなと
ちょっとくすぐったかった。
*
その後も世間話なんかしてると
背後の障子が開き、「すいませ~ん」の声。
あ、いい声なんて思ってると真琴さんがすっごい勢いで振り向いた。
「あれ?駿河さん!?」
「やっぱり立野さん!どうなさったんですか」
ほほう。真琴さんのお知り合いか。
そう思ってたら障子の影から遠江さんも顔をだした。
「あれ!?真澄ちゃんもいる」
遠江さんの言葉に立野さんとやらが少し眉をよせる。
「真澄ちゃんは立野さんが好きな
レナーズのバイトの子で真琴ちゃんの友達ですよ」
と遠江さんが説明すると
警戒心が溶けたのか、にこっと笑顔になった。
「ねぇ君達まだ時間ある?あるならこっち合流しない?
いい加減野郎の顔見て酒飲むのに嫌気がさしてたんだ」
「え、ご一緒させていただいていいんですか?」
真琴さんの言葉に立野さんが是非と誘ってくれる。
遠江さんへの態度と全然違うなぁとこみあげてくる
笑いを押さえ、私達は合流させてもらうことになった。
*
「真琴ちゃんは俺の前ね。遠江どっかいけ。
久音、オーダー聞いたげて。」
「お隣り失礼しますね」
立野さんに指示された場所に座るとき
真琴さんが隣の久音さん?に笑顔で声をかける
そんな真琴さんを見て、遠江さんはなにがブツブツ
いいながらも席を真琴さんに譲り、一つ隣へズレた。
私はどうしようか…そう悩んでいたら
「真澄ちゃん、こっちおいで」
「…仁さん」
もう一人知ってる人がいたことにほっとする。
誘われるままに私は仁さんの隣に腰を降ろした。
ん?なにか視線が集まってますが…?
「真澄ちゃん、槇の事名前…?」
あれ?なんかダメだった?
思わず隣の仁さんを仰ぎ見ると仁さんは
なんでもないというふうににっこり笑ってくれた。
本人がいいならいっか。
すこぉ~し空気が変わった部屋で
改めて乾杯の音頭が誰からともなしにあがった




