vol.11
「真澄~、今日バイトあり~?」
授業が終わって荷物をまとめてると背後から声がかかる。
振り返ると友人の一人でもある由岐が手をふっていた。
「ないよ~」
「じゃあさ、今晩つきあってくれない?
合コンのメンツ、急に足りなくなっちゃってさ」
片目をつむり、目の前でお願いと手を挙げる。
「あ~ごめん、今晩は先約あり」
「え!?何々、もしかして…」
「違うよぉ。友達とご飯の約束してんの」
うん、仁さんは友達だから間違いないよね。
「そっかぁ先約ありなら仕方ないね。また今度付き合ってよ?」
「うん。ごめんね」
バイバイと手を振って由岐と別れバイク置場へ向かう。
約束までまだ時間があるので一旦家に帰ることにした。
*
夕べ、仁さんから来たメールには時間と場所の再確認。
どこに連れてってもらえるのかは内緒らしい。
格好について何の指定もなかったけど
流石にデニムで行くのもなんだし、真琴さんに相談したら
「スカートの方がいいんじゃない?」って言われたんで
一応スカートにはきかえるつもり。
あれ?これってデート…?じゃないよね?
一応、仁さんは男性で、男性とご飯って…
あれ?あれれれ?
いやいやいや、別にそんな意味で誘われたんじゃないし
私勝手に変な事考えちゃダメでしょ。
うん、ダメダメ。
私はバイクに跨がると自宅へ向け
アクセルを回した。
*
「△■駅の東口だったよね…」
腕時計で時間を確認しながら辺りを見回す。
約束の時間までにはまだ少しある。
券売機からちょっとだけ離れた場所の壁にもたれ
人の流れを見る。
後少しで約束の時間だなぁと思っていると
目の前に人が立ち、影が落ちた。
「彼女、一人?」
仁さんかと思って顔をあげたら違う人。
キョロキョロと両隣を見てもいるのは男性。
ってことは、この人の言ってる「彼女」ってのは私のことなんだろう。
「一人ですけど人を待ってます。」
「待ち合わせの相手って女の子?ならその子も一緒に食事でもどう?」
私に声をかけてきた人の後ろにもう一人の男の人。
あ~ これナンパなんだ…
どうやって断ろうかと悩んでいると
「真澄!」
仁さんの声が聞こえた。
*
仁さんが私の側にやってくると
男の人達は「なんだ男待ちかよ」と、どっかへ行ってしまった。
「遅れてごめん」
「いえ、時間大丈夫ですよ。私が少し早く着きすぎただけです」
「もう少し早く来れてたら、あんなのにも声かけられないですんだのに」
「何もなかったから大丈夫です」
「それならいいけど…じゃあ行こうか」
「はい…」
先導するかのように人混みをかきわける
仁さんの後に遅れないよう
私は少しだけ小走りについていった