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vol.10

つかつかとテーブルに戻った真琴さんはにっこりと笑顔を遠江さんに向ける。


その笑顔にポカンとした遠江さんの腕を右手で掴み、左手で伝票を掴む。

あ、この場から遠江さんを連れ出すつもりなんだ。

私は慌てて自分の鞄を引っ掻き回し

お財布を取り出すと、真琴さんは

「この人達、高給取りだからいいのよ」と

追い立てるように遠江さんとキャッシャーの方へ消えていった。

残されたのは呆然とした槇原さんと私。


しばらくして硬化が溶けたのか槇原さんは大きなため息をつくと

背もたれにぐったりと体を預けた。



「水口さん、ごめん」


「え?」


「なんか誠さんが変な事言って」



ぐったりしながらも私に謝罪する槇原さんに私は首を横にふる。



「確かに少し驚きましたけど最初に失礼したのは私ですから」


「そんな事ないよ、この仕事は特殊だし

 最近ちょっと人気になってきてたから僕も少し自惚れてたんだろうね。

 君みたいな普通の人が知らなくても全然おかしくはないのに…さ」


「槇原さん…」


「さっきだって電話したのは昨日のお礼に食事に誘うつもりだったんだ。

 それが誠さんと一緒だろ?驚いたよ」



そう言うと槇原さんは

テーブルに手を伸ばして、アイスティーに口をつける。



「私も電車でお会いした時は驚きました。」



同じように私もアイスティーに手をのばす。

シロップも何も入れてないのに

アイスティーは咽にとても優しかった。











「槇原さん、さっきお礼っておっしゃいましたけど

 私、お礼が欲しくてしたんじゃないんですから

 気にしないでください。それになんかここ

 遠江さんに奢っていただいちゃったみたいだし…」



さっきの真琴さんと遠江さんを思い出す。

真琴さんは自分の分をさっさと払っちゃって

残りを遠江さんに押し付けたんじゃないかな…

なんかそんな気がする。

私の分を槇原さんに預け…

たぶん受けとってくれないだろうな

それどころか後で私の分だといって

遠江さんに自分の分と渡しそうだ。

自分のお財布から。



「駿河さんが言ってたように、誠さんは高給取りだから

 心配しなくてもいいよ。でも誠さんは誠さん、俺は俺でしょう?」



どうしてこの人は私にそこまで奢ろうとするんだろう

私に借りを借りた気になってるんだろうか?

別にそんなつもりはないんだけど

そうなら一度奢ってもらったほうがこの人的に気が楽になるんだろうか…



「水口さん?」



いつの間にか考え込んでいた私に槇原さんが心配そうな顔になっている。

おっといけないいけない。



「私は槇原さんに奢っていただきたくてしたんじゃないんで…」


「でもそれじゃ俺の気がすまない。

 二度だよ?二度も俺は君に助けられたのに

 そのお返しもさせてもらえないの?」


「え、でも…」


「それに偶然とはいえ、俺たちは名前と

 お互いの携帯電話っていう個人情報を知っている

 君は俺のマンションも知ってるよね?

 そういう個人情報を知ってるのってもう友達じゃない?

 友達に助けてもらったら普通お礼するでしょう?」



真剣な眼差しに心が揺れる。

私、押しに弱いんだよぉぉぉぉ


真琴さん、カムバック~!





「じゃあそういうことで 明後日19時に△■駅の東口、券売機のちかくで。

 真澄ちゃん、送れなくてごめんね」


「…いえ気にしないでください。

 仁さんもお気をつけて…いってらっしゃい」



じゃあと手を挙げ、槇原さん、

訂正、仁さんは次の仕事場へむかう。

私はいつの間にか彼のいきおいに押され

食事の約束と、お友達になることを約束し、

友達には名前で呼んで欲しい主義なんだという

彼に押され、お互いを名前で呼ぶことを約束してしまっていた。

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