騎士団から抜けてくれ
なろうでの投稿の初作品となります。追放系を意識した作品となっておりますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ジョナサン。このパーティー――ノクトゥス王国騎士団のタンク役から外れてくれ」
夜も更けようという頃合い。魔導ランプの明かりが灯る宿の談話室。フルプレートの鎧を着込んだ騎士達に囲まれる中、パーティーリーダーたるモーガンがそう告げた。
「何故でごわすか!? 理由を、理由を教えて欲しいでごわす!」
受け入れがたい決定に、おいどんは腹を叩いて抗議した。感情が昂ぶってしまい、足を地面に叩きつけてしまう。右足と左足とで1回ずつ。つい体が勝手に動いてしまっていたのだ。
「ン全部ゥゥゥゥ!」
モーガンも叫びながら、もう我慢の限界と言わんばかりに、両の手を机に叩きつけた。夜の談話室に大きな音が響き、机の脇に積まれたおいどんの鎧と剣、盾がカチャリと鳴った。
「発足から5年間、ずっと俺達は騎士団を名乗り続けて来たんだぞ!? なのに筆頭タンク役が腰布一枚しか身に着けられなくなっただなんて……あぁ、なんて報告すれば……」
「……」
おいどんは、何も言い返すことができなかった。気持ちは分かる。だが、おいどんだってこの状況は苦しいのだ。悲しい気持ちが胸に渦巻き、思わず鋭い視線を向けてしまう。
「ちょっと落ち着けよ、もう一度状況を整理しよう。な?」
感情的になってしまったおいどん達の間に、ジダルノスが割って入ってくれた。おかげで、深く息を吸うことができた。
「重騎士にジョブチェンジするために、教会へ行ってきたんだよな? ジョナサン、ステータスボードを出してみろ」
「ごっつぁんです」
「ン返事ィィィィ!!」
思わず飛び出た未知の言葉に、おいどんは手で口を覆った。いけない、またこれだ。ジョブチェンジをしてからずっとこうなのだ。
「職業欄は何と書いてある? 俺には読めないが、ジョナサンなら読めるんだろう?」
そう言われ、おいどんは職業欄に書かれた未知の言葉を読み上げた。
「力士」
知らないはずの言葉だが、本人であるおいどんには読めた。稀に古代語などで同様の事例があるというが、どうやら本当らしい。
「いやリキシって何だよ!? 騎士じゃないのかよ!?」
「分からんでごわす……」
モーガンが指摘するが、おいどんは答えられなかった。これが何を意味する言葉なのか、皆目見当がつかない。
「武器も鎧も装備できないだなんて、呪われた職業じゃないのか?」
モーガンは呆れている。そう、おいどんは今、腰布1枚の状態だ。職業としての制約なのだろう。剣も盾も鎧も、全部外れてしまったのだ。聖騎士が悪魔の武具を持てないように、おいどんには装備制限が課せられているらしかった。
「しかし、ジョナサンからは仄かに聖属性が見える。闘僧の類ではないか?」
ジダルノスの指摘に、モーガンは首を振る。
「それなら闘拳くらいは装備できるはずだ。だが装備スロットには……」
塩。
そう、調味料の塩だ。おいどんの装備スロットには塩と表記されている。デフォルト装備らしい。
しかし、塩でどう戦えというのか……おいどんも途方に暮れてしまったのだ。
「塩といえばだけど〜」
今まで黙っていた彼女が声を上げた。後衛を担当するメルだ。食料の管理も彼女が担っている。塩と聞いて、あの話題を振りたいのだろう。
「ジョナサンさぁ、食べられる物まで変わっちゃったんだよね〜」
「なぜか四つ足の獣の肉が不吉に感じるようになってしまったのでごわす……」
メルの言う通りだ。色々試したが、野菜や穀物は問題無かったものの、肉は鶏や魚くらいしか食べられなくなってしまったのだ。
「あぁ……食事に制限があるだなんて、ダンジョン攻略では致命的だ。武器や鎧が装備できないだけでも大問題なのに、更に食料問題まで……」
モーガンは頭を抱えている。今のおいどんは、パーティーのお荷物でしかないのだ。それどころか、厄介者もいいとこだろう。
「というか、名前まで……」
ジダルノスに言われてよく見ると、ステータスボードの名前の欄にはこう書かれていた。
『ジョナ山』と。
「名前まで変わるなんて聞いたことがない。やはり呪われているとしか言いようが無いな」
やはり、言われた通りにパーティーを去るしかないのだろうか。おいどんの背中に、ずしりと重たいものがのしかかったような気分だ。
「明日になればまた変わるかも〜。みんな一旦休もうよ〜」
「……そうだな」
「明日また話し合おう。だがジョナ山、このまま解決策が見つからなければ……」
こうして、各々自室へと戻った。
おいどんも自室に向かうため立ち上がるが……
「どすこい、どすこい」
謎の呪文が口から溢れ、腰を落とした体勢で歩みだしてしまう。頭の中に浮かんだのは、すり足という言葉だった。それが何を意味するのか、おいどんには分からない。
はじめまして。秋松カブトムシと申します。普段はカクヨムでSFを書いております。なろうへの進出記念として、なろう的な作品を書こうと思い今作を書いております。楽しんでいただけましたら幸いです。




