最終話 ナメクジ、教導する
リマキシアン神学校の歩み
魔王歴411年 リマキシアン神学校設立
基本理念『人の気持ちになって考えよう』
『なりたい自分になろう』
『君を忌子と呼ぶヤツは俺の名の下ぶっ殺せ』
校長 リマキシア
体育教師 ラグナ
社会教師 ヴィットリオ
保健教師 ガブリエラ
雨季臨時教師 イザヴェッラ
教師の就業規則『未だ名もなき小鬼達に配慮して、名前を名乗らないこと』
魔王歴412年 第一期卒業式 祖霊樹海本校にて
卒業生 小鬼一名 シグル
魔王軍第八デーモン大隊に入隊
同年 第二期卒業式 グランヴァル広場にて
卒業生 小鬼五十名
二十五名 魔王軍第十旅団に入隊
二十五名 グランヴァル守備隊に入隊
魔王歴413年 グランヴァル分校設立
種族を問わず受け入れを開始
ギルド所属冒険者の訓練施設を兼ねる
新教師採用
盗賊・斥候担当教師 エイダ
同年 祖霊樹海本校にて祖霊樹海流緑牙道本部を増設
種族を問わず門下生を受け入れる
第1652代魔王襲来、ラグナが決闘で下し、以後門下生となる
魔王軍は祖霊樹海戦線から大幅に後退
魔王歴414年 祖霊樹海本校、討魔連合軍総大将兼正教大教皇の襲撃を受ける
本校、機能停止に陥る
その後、ナメクジの姿を見たものはいない
※
「――その後、ナメクジの姿を見たものはいない、よし!」
「ダメですわナメクジ様、そこはこう!」
女はナメクジの触覚からペンとノートを奪い取り、ペペッと書き込んだ。
――邪神リマキシアを中心に魔王軍、サングノイン教団、リマキシアン神学校、森の民が同盟締結
討魔連合に反撃を開始し、再び戦線をロシュ川まで押し上げる。
「よし!」
「よくないよ教皇様、俺は戦争したくないって言ってんの」
「でもこれが一番みんな死にませんよ? 間違いなし!」
教皇様は指を立てて、キリッとナメクジを見た。
彼女は物心ついた時からすべてが数字に見えたらしい。
ある日彼女は一生懸命計算した。
どうしたらこの地獄でみんな幸せになれるんだろう?
計算ピピピ!
人間の幸せ。
森の民の幸せ。
魔物の幸せ。
全部の最大公約数を計算したら、祖霊樹海前線で永遠に小競り合いするのがHAPPY END!
「だからお願いしますナメクジ様。
この世界の神として、一生戦線を維持して下さい。
この子達がいれば世界はあなたの思うがままです」
腕を回しながら振り返る教皇ちゃん。
その視線の先にはホブゴブリンの大群を指揮するチーフゴブリン達がいる。
多分一個大隊を千匹で組める。
今は本校の立て直し中なのだ。
ゴブリンキングのラグナは魔王になってから忙しい。
あちこち飛び回っているがなにをしているのか、よくわからん。
まあみんな好きにやってて楽しそうだからいいよね。
教皇ちゃんもそうしたらいいんだ。
ナメクジは髭を撫でる。
教導してあげよう。
「問題の解き方が間違ってるね」
「……なにがです?」
「人や魔物のことをどうこう言う前に、まずは自分の幸せを計算に入れなさい」
「うるさい! 自分一人だけで幸せになんてなれるか!」
教皇ちゃんの唇は青く震え、目元はクマで真っ黒だ。
毎日解けない問題を計算しているんだろうな。
「なんだ。君はまだ子どもだね。歓迎するよ」
ナメクジはヌメヌメと切り株の上に上がった。
「授業を始めます」
君も幸せになれる。
こんなナメクジでも、人生楽しくやれているんだからね。
完
ブクマ、リアクションをくださった方、心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。




