第7話 魔法の糸、断ち切られる時
テスラをも退け、完璧な勝利を収めたシャルロッテ(分身)に、会場は大きな歓声に包まれた。だが、フレッド・フリメールは、その歓声を聞きながら、リングのそばで静かに苛立ちを募らせていた。
(おかしい……。この子には、何か秘密がある。俺のライバルは、あんな完璧じゃないはずだ……!)
初日に見た、コンプレックスを抱えたシャルロッテの姿と、目の前の完璧な美貌を持つ少女との間に、決定的な違和感を覚えていた。
「第三試合は、フレッド・フリメール対シャルロッテ・バイセルハーズ!」
フレッドは、ついにリングに上がる。彼は、剣と剣で激しく打ち合う実力者同士の試合を望んでいた。分身のシャルロッテも、その望みに応じるように、剣を構える。
試合は、激しい剣と魔法の応酬となった。分身の完璧な剣さばきと、フレッドの鋭い剣がぶつかり合うたびに、火花が散る。その中で、フレッドは確信した。
(この子には、感情がない……! 魔法の動きが、あまりにも人間離れしている!)
フレッドは、剣を一度大きく振り下ろすと、決意を固めた表情で、自身の得意魔法である「魔法キャンセル」を発動させる。
「シャルロッテ・バイセルハーズ! お前の魔法の嘘、俺が暴いてやる!」
フレッドの魔法が、シャルロッテ(分身)に命中した瞬間、分身はまるで糸が切れた人形のように、ピタリと動きを止め、その場に倒れ込んだ。
会場は、一瞬静まり返り、その後、ざわめきが広がった。
「シャルロッテが、倒れた!?」
駆けつけたバロンが心臓マッサージをしたり、テスラが魔法薬で蘇生を試みるが、効果はない。分身は、もはやただの人形に戻ってしまったのだ。
そんな中、ロイドは冷静に、そして悲痛な表情で事態を見つめていた。彼の魔眼には、倒れたシャルロッテの小指に結ばれていたはずの赤い魔法の糸が、まるで断ち切られたかのように虚空に消えていく光景がはっきりと映っていた。
ロイドは、分身の体が冷たくなっていくのを感じながら、フレッドの魔法が、ただの魔法を打ち消したのではなく、シャルロッテの「生命線」そのものを断ち切ってしまったことを理解した。