第6話 魔薬学者の奇策
バロンを圧倒的な力で打ち破ったシャルロッテ(分身)は、次の試合に向けてリングの中央に立っていた。観客の期待が高まる中、対戦相手のテスラ・モンドがゆっくりと姿を現した。
「第二試合は、テスラ・モンド対シャルロッテ・バイセルハーズ!」
テスラは、無表情でシャルロッテ(分身)を見つめ、懐から小さなフラスコを取り出した。中には、不気味に揺れる紫色の液体が入っている。
テスラは、シャルロッテ(分身)が持つ特異な魔力成分を分析し、人形の動きを停止させるための魔法薬を調合していた。彼は、この薬を魔法に混ぜて攻撃することで、分身の制御を不能にしようと試みたのだ。
「フフッ、何を企んでいるのか知らないけど、そんなもので私を止められるとでも思っているのかしら?」
自宅でその様子を見ていたシャルロッテは、テスラを嘲笑っていた。魔法薬学の知識は、彼女の天才的な魔力の前では些細なものだと考えていた。
試合開始の合図と共に、テスラはフラスコの中身を掌で叩き、魔法の光と共に紫色の薬をシャルロッテ(分身)に向けて放った。それは、まるで霧のようにリング全体を包み込む。
しかし、シャルロッテ(分身)はびくともしなかった。テスラの魔法薬が体に触れても、何の反応も示さない。
(な、なぜ効かないの!?)
自宅のシャルロッテは、焦りを隠せない。テスラが放った魔法薬は、確かに神経系統に作用するはずのものだった。だが、分身は人間ではない。痛みや神経を持たない人形には、その薬が全く効かなかったのだ。
(そうか、この子は人形だった……!)
テスラは自身の戦術の誤りに気づき、表情を曇らせる。その隙を、シャルロッテ(分身)は見逃さなかった。彼女は、テスラの戦術を解析し、完璧なタイミングで強力な魔法を放つ。
「ぐっ!」
テスラは一撃でリング外へと吹き飛ばされ、試合は終了した。観客の歓声が響く中、シャルロッテ(分身)は、無表情のままリングの中央に立ち尽くしていた。
彼女は、テスラとの試合にも圧勝した。しかし、彼女の勝利は、もはや「天才」であることの証明ではなく、「人形」であることの冷酷な強さを示すものだった。