第4話 はじめてのデート
ロイドの鋭い問いかけに、分身は何も答えることができなかった。自宅のシャルロッテは、自分の秘密が知られてしまったのではないかと、不安で心臓が破裂しそうだった。
だが、ロイドはそれ以上、追求しようとはしなかった。
「……もし君が、本当の君じゃないとしても、僕は構わない」
ロイドの言葉は、まるで魔法のようにシャルロッテの心の壁を溶かしていく。彼は、分身の完璧な外見ではなく、その奥にある「何か」に興味を持っているようだった。
「ねえ、明日、街に行かないか? 授業が終わってからで構わない」
それは、まるで恋愛ゲームの選択肢のような、唐突な誘いだった。自宅でその言葉を聞いたシャルロッテは、嬉しさ半分、戸惑い半分で心臓が大きく跳ね上がった。
(えっ、デート!? ロイド様と!? でも、相手は私じゃなくて、分身なのに……)
しかし、彼女の心は、この誘いを拒むことを許さなかった。彼女は、ロイドの優しさと、彼が自分を特別に見てくれているという事実に、心が揺れていた。
翌日の放課後、分身はロイドと共に、学園都市の中心部へと向かった。自宅にいるシャルロッテは、分身の五感を通して、初めてのデートを体験していた。
ロイドは、分身を連れて魔法道具店を巡り、歴史書について熱く語った。分身は、完璧な知識でそれに答え、二人の会話は途切れることがなかった。
(ロイド様、意外とオタク気質なのね……でも、熱心に語る姿、素敵かも……)
シャルロッテは、分身を通して見るロイドの新たな一面に、胸が高鳴るのを感じた。それは、彼女がゲームとして始めたはずの「恋愛」が、いつしか本物へと変わりつつある瞬間だった。
デートの帰り道、ロイドは突然立ち止まり、分身の小指にそっと触れた。
「……この糸、本当に君の心と繋がっているんだね」
ロイドの魔眼には、彼の指が触れた瞬間、赤い糸が強く輝くのが見えていた。彼は、分身の完璧な外見だけではなく、その奥にいる本物のシャルロッテの心を、たしかに感じ取っていた。
ロイドは、そっと分身の手を握りしめ、優しく微笑んだ。
「君が誰であろうと、僕は君を好きだよ」
その言葉に、シャルロッテは、自宅のベッドで思わず泣き出してしまった。彼女の小指に結ばれた赤い糸は、彼女の心臓の鼓動を伝えるように、強く、熱く輝いていた。