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第9話 決戦、裏切りの城内戦

夜の王城は、重い沈黙に包まれていた。


だが、その屋根の上でひとり、微笑んでいる少女がいた。


「また王女様のお部屋? ほんと、まっすぐすぎるよね……レオンくんって」


風に揺れる銀髪、眠たげな瞳。

けれど、その瞳の奥には冷たい光が宿っている。


「でも、私の方が先だったんだよ。覚えてないのかな? ふふ……忘れたなら、また教えてあげなきゃね」


彼女は指先で小さなナイフをくるりと回すと、まるで踊るように姿を消した。


月明かりの下、王都は静かに――そして確実に、狂い始めていた。



「やはり……ゼルガ侯か」


魔術学院保管庫で見つかった改ざん記録、そして王女暗殺未遂の魔道具の出所。

全てが、王国軍の実力者、ゼルガ・ヴェルディアを指していた。


表では王政を支える忠臣。だが裏では、魔術兵器の密輸と情報操作を行う貴族派の黒幕。


「……王女様が危ない」


俺は封鎖された地下通路を走っていた。


西棟の王女私室へと繋がる隠し通路――

王族しか知らないはずのルートを、ゼルガは利用している。


《封印構文、展開開始。起動ルーン書き換え、反転》


脳内に流れる“理解”を元に、構造を読み、魔力の封印を無力化していく。


あと数分遅れていたら、王女は――



「……来たか」


王女の私室には、黒衣の刺客たちが集っていた。


そして、その中心にいたのはゼルガ侯本人だった。


「姫殿下。おとなしく“静かに”消えていただきたかったが、やはり剣を抜かれるか」


「貴様ら如きに、王族の血を穢されてなるものか!」


エリシア王女は剣を構えていた。

王女としての誇りと覚悟が、彼女の背を支えている。


だが――人数差は圧倒的。

戦いは避けられない。


「……そこまでです」


部屋の壁を破り、俺は駆け込んだ。


「貴様、クロード……!」


ゼルガが歯ぎしりする。


「王女を狙うなら、俺が相手だ」


「貴様は黙って従っていればいいものを……“使える駒”として置いてやったというのに」


「悪いけど、俺は“命令される側”じゃない」


俺は空間転移術式を即時展開し、刺客たちの位置を封鎖。

動きを読み、剣を振るう前に“止める”。


魔法も、剣も、彼らの“行動そのもの”が読める。


「……なぜだ。なぜ、貴様のような村育ちが、そこまで……!」


「“理解”できるからです。あんたたちの、構造も、歪みも」


ゼルガの放った魔術が展開する前に、逆構文で魔力を封じる。

次の瞬間、俺の一撃がゼルガの剣を弾き飛ばす。


「終わりだ、ゼルガ」


「……っ、くそっ……!」


ゼルガ侯は拘束され、反逆罪として連行された。



事件の夜。

俺は一人、王城の塔に立っていた。


月が静かに照らしている。


そのとき、背後から気配が――


「……レオンくん」


振り向くと、そこにいたのは、銀髪の少女。


制服姿。眠たげな目。手には小さなナイフ。


「また、会えたね。今度はちゃんと……話せるよね?」


「……君は、誰だ?」


「えー、忘れちゃったの? レオンくんは昔、私に“助けられた”のに」


「……昔?」


「うん。でも、忘れててもいいよ。だってこれから、たくさん思い出作るから」


少女は、ナイフをぽんと胸の前で跳ねさせながら、無邪気に微笑む。


「……王女様と、あんまり仲良くしすぎないでね? ああいう人って、レオンくんを“縛る”から」


その言葉には、冷たい棘があった。


「じゃあまたね。今度はもっと、長く一緒にいられるといいなぁ」


そう言い残して、少女は闇に溶けていった。


彼女が、味方か敵か――

それすら、まだわからない。


だが、間違いなく“俺の過去”と繋がっている。


──世界は、俺の知らない場所で、まだまだ続いている。

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