第24話 封印都市の守護者
アーク・ミレニア。
封じられた都市は、時間が止まったかのように静かだった。
だが、空気には“何か”がいる気配が漂っていた。
「この感じ……“思念体”か、もしくは……記録された意志?」
リュカが周囲を警戒しながら言う。
レオンの書庫が反応を示す。
《記録確認:契約記憶体・階層守護者》
《属性:混合型/人間および異種の思念融合体》
《任務:侵入者の適性評価と排除》
「つまり、“守り人”ってわけか」
レオンが呟いた瞬間、空間が軋んだ。
廃墟の中央に、白いローブを纏った人物が現れる。
だが顔は朧げで、眼だけが光を灯していた。
『継承者、識別完了』
『記録照合中──“レオン=ノア”』
『第七階梯、適性確認──試験開始』
地面に巨大な陣が描かれ、魔力がうねり出す。
「敵意アリってことで……いいんだよな」
レオンが双極刃を展開すると、リュミエルがすぐ横に並ぶ。
「私も行く。……あなたが誰と向き合っても、私は絶対、隣にいる」
レオンはふと横目で見た。
彼女のその“想い”が、強すぎて息苦しく感じたことに気づく。
──けれど、それを否定することもできなかった。
*
「来るよ……!」
守護者の魔力が炸裂した。
フィールドが複層構造に変化し、重力と時間の歪みが襲いかかる。
《バトル構成:階層型/試練区画展開》
「レオンくん、私が時間を止める! その間に!」
「わかった!」
リュミエルが《魔時結晶》を起動し、一瞬、時の流れを鈍化させる。
その瞬間、レオンが閃光のごとく突撃する。
「──破ッ!!」
一閃。守護者の表層を削ぐ。
が、その下にはさらなる魔導機構が存在した。
『防衛層解除──第二階層、展開』
都市全体が“魔導生体”のように変貌していく。
「っ……これ、まるで都市そのものが敵だ……!」
リュカがすぐ後ろに転移し、補助陣を展開する。
「座標固定成功! 今なら攻撃が通る!」
「リュカ、よくやった!」
その言葉に、リュカの頬が僅かに紅くなる。
が──
「ねえ、レオンくん。どうして、そうやってすぐ褒めるの?」
リュミエルが、笑顔のまま小さく囁く。
「私がいるのに。そっちばかり見てたら……“傷つく”よ?」
レオンの背中に、ぞくりと冷気が走った。
(リュミエル……今のは……!)
彼女は微笑んだまま、再び戦闘陣へ向かって走る。
*
第二階層の構造核に到達したレオンたち。
守護者が最後の攻撃を放つ。
「──最大魔力出力、受けきれない……!」
リュカが叫ぶ。
そのとき、リュミエルが前に出る。
「……なら、私が“壊す”!」
魔力を極限まで圧縮し、彼女は自らの周囲を灼熱の魔導結界で包んだ。
「レオンくん。あなたに触れるものは、全部、焼いてあげる」
──ヤンデレ。それは、愛の形をした狂気。
「識術──“終焉領域・断滅”」
全方位に展開された魔力が、守護者の核心を焼き払った。
爆音と共に、試練が終了する。
《戦闘終了》
《継承者記録:アーク・ミレニア通過認証》
《階梯上昇可能判定:保留中/次試練に移行》
*
廃墟の奥で、一つの扉が開いた。
その先に立っていたのは――
白い髪に獣耳を持ち、深紅の瞳を持つ“異種の少女”だった。
「……おまえたちが、“来た”のか」
次なる出会いと、次なる戦いが、静かに始まろうとしていた。




