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第20話 識翼、来たる

「……南境の第七塔が沈んだ?」


王都に響いた速報に、レオンの背筋が冷えた。


「正確には、“塔が空間ごと消えた”んだって。王都防衛術士団も混乱してるみたい」


リュカの言葉に、レオンとリュミエルはすぐに装備を整える。


「これは……ただの災害じゃない。人間の魔力じゃ、空間ごと塔を消せない。

魔力波形の記録は?」


「さっき解析が終わったわ。これ――」


リュミエルが水晶端末を差し出す。

そこに表示された波形は、幾何学的で複層構造を持っていた。


「……こんな構造、今まで見たことがない」


《識別不能魔力波:人類体系外》

《分類:識翼種と仮定/自律演算機構型魔導存在》


「来たな……“人間ではないもの”が」


レオンは静かに言った。



南境の防衛線跡地。

そこには、まるで世界が歪んだような“霧の空間”が広がっていた。


霧の中心――それは、そこに“立って”いた。


身長180センチ前後。だがその肉体は金属のように光沢を放ち、背からは浮遊する羽のような構造体が伸びていた。


「……それが、“識翼種”?」


レオンの書庫が自動反応する。


《識別開始──言語構文読取:失敗》

《波形翻訳へ移行──魔力精神干渉レベルCで受信中》


そして、その存在は口を開かずに“語った”。


――名前、カヲリ。


脳に直接響く、“音ではない”名乗りだった。


「直接……思考に触れてきた……!」


「やばい。これ、“翻訳”じゃなくて、“理解”しようとしてる」


リュミエルが距離を詰めてくる。


「……完全に未知数。反応ひとつで、何が起きてもおかしくない」


そのとき、“カヲリ”の瞳が、赤く染まった。


《警戒度上昇:自衛演算モードへ移行》

《対象:情報接触過多による排除対象認定》


「くる!」


空間が軋んだ。


次の瞬間、カヲリの背から展開された光の刃が、大地を裂いた。


「っぐ!」


リュミエルが結界を張り、リュカが魔力干渉防壁を補助。

それでも、その一撃は地形を変えるほどの威力だった。


「……まさか、第一撃からここまでとは……!」


《推奨:構成魔術では対処不能。認識干渉式、展開許可》


「ならば、出し惜しみはなしだ」


レオンは《双極陣》を展開する。

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